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第23話 下心

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 まさかの再会にこれまでのことを話すあたしと翔……ではなくエルメ。

「ふーん、ルーナの死亡エンドを回避するために行動してたらルティリオさんに出会ったと……」

「そうそう! ルーナってキャラは生け贄に捧げられて死ぬんでしょ? あたしそんなの絶対に嫌! 」

「まあ推しキャラが死なずに済むなら俺としても嬉しいが……。まさか中身が姉ちゃんだとは……」

「おしきゃら? ん? どういう意味? 」

「何でもない」

 エルメの使う言葉は時々分からない。ヲタクの人が使う特別な言葉なのだろーか?

「でも翔……じゃなくてエルメもルティリオって神様のことは知らないの? 」

「知らないな。少なくともゲームのストーリーには関わってこなかった」

 待てよ、とエルメが呟いた。

「でも、闇の神 レイズが恐れる神の存在は仄めかされていたな。神をも超える神とでも言おうか」

「なるほど、一応設定はされてたみたいね」

「何より今のストーリーはゲームとはまったく違ってるんだ。ルーナが聖女じゃなくなってるし、そもそもギルと一緒にいないし、シャルロッテのことをギルが救うイベントもなくなってる」

「シャルロッテって確かキールのお姉さんよね? 」

「そう、彼女もヒロインの一人だよ。本編では闇死病にかかった彼女をギルが助けることで仲間になるんだ」

 あー……つまり勇者に助けられる前にあたしが助けてしまったと……。ごめんねギル!! だって知らなかったんだもん、仕方ない仕方ない。

「あーあ本当は勇者に転生したかったのに、なんでヒロインになっちまったんだ……」

 頭を抱えるエルメに、あたしは何と言えば良いのか分からない。

「ま、まあ良いじゃん。今の翔、とっても可愛いよ! 」

「フォローになってないわ……」

 デスヨネー。そんなとき、今まで一言も口を開かなかったルティが声をあげた。

「つまり貴様もルーナと同じように別の世界から来た人間なのだな? 」

「そう。前世ではルーナの弟だったんだ」

 エルメは淡々と答える。

「ならば我らを捕まえようと躍起になっていたのはなぜだ? 」

「確かに! どうしてあたしたちを偽物として追っかけたの?! 危うく殺されそうになったんだから! 」

 そ、それはとエルメが言葉を詰まらせた。
 いくら弟と言えども、死刑にされかけた恨みは忘れない!

「あ、えー、えーと……」

「答えよ」

 ルティのこわーい脅しに屈したのか、エルメはぽつぽつと話し始めた。

「そもそもルーナが姉ちゃんだったなんて知らなかったし、何と言うか……物語の整合性を取らなければいけないと思ったんだ」

「整合性? 」

 こくりとエルメが頷く。

「俺の知っているストーリーとは大幅に変わってるだろ? だから辻褄を合わせてルーナをギルと行動させなければと思ったんだ」

「なるほど、つまり貴様は未来を知る者というわけか」

 ルティは特に怒るでもなく、むしろ納得したような顔で頷く。

「んー、最初に言った通り、俺の知ってるストーリーとは変わってるけどね」

 困ったように笑うエルメ。

「どーせルーナに良いとこ見せたいとでも思ったんでしょ」

 ぽつりと呟くとあたし。ギクリとでも言いたげに体を一瞬震わせる。

「どういうことだ? 」

 分かってないルティはあたしに尋ねる。
 こちとら数年翔の姉をやっていたのだ。彼が考えそうなことぐらい分かる。

「ヒロインに良い顔して、あわよくばハーレムでも築こうとでも思ってたんじゃないの」

「……」

 答えないエルメ。
 しかし目は泳ぎまくっている。

「翔」

「……仰る通りです」

 こうしてエルメは下心を露にすると、深々と頭を下げたのだった。


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