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第21話 彼女の謎
しおりを挟む「もう!!! なんでキールにあんなこと言ったの! 」
「別に」
あたしの言葉なんて届いていないような顔のルティ。ほんとにもうこの男は……。
ああ……せっかく好きになりそうなイケメンに出会えたというのに、この男がいては恋も出来ない。
「はぁ……でももうここには用ないでしょ? さっさと神様のとこに行きましょうよ」
あたしに残された道はひとつ、さっさとルティの目的を達成して、眷属としての役割を終えるしかない。
ルティはきっと目的さえ達成すればあたしから離れるはず。そうすれば自由の身だ!
「まあそうだな。もうここには我の興味を引くものはなさそうだ」
「そうっすか……」
本当に自分勝手なやつだよ……。
そのときだった。
「ルーナ……!? ルーナか? 」
「げ」
声のする方を見たとき、あたしは思わず声をあげた。そこにいたのはなんとあの勇者ギルではないか! 横にはエルメの姿もある。
ギルはともかく、エルメはめんどくさい。
なぜならあたしはこの娘に嵌められて捕まったことがあるからだ。
向こうも同じ気持ちなのか、エルメは苦々しそうにあたしのことを見ている。
「ルーナ、久しぶり! 元気だったか? 」
「うん、久しぶり~」
何にも知らないギルはちらりとあたしの横にいるルティに視線をやる。
「この男はなんだ? 」
ルティが不機嫌そうにあたしに尋ねる。
「えーっと、幼なじみのギルくんだよ」
とは言ってもあたしにはあんまり馴染みがないので幼なじみって表現も変だけどね。
「そうか……また男か」
「またってどういうことよ」
しみじみ呟くルティにツッコミを入れるあたし。おまけに当のギルはルティの迫力にビビってるのか、まともに喋れないようだ。
「あー……お友達? 」
「そんなんじゃないわ」
「そ、そっか。それにしてもルーナはなぜここに? 俺たちはエルフの人たちに病気が流行ってるって聞いて、それを治しに来たんだけど」
「それならもう我らが解決したぞ」
さらりと答えるルティ。
「へ? 」
目をぱちくりさせるギル。
そうか、これって本当は勇者パーティが何とかするはずのイベントだったのか?!
それを知らないあたしたちはうっかりイベントを乗っ取ってしまったらしい。
「……おかしい」
それを聞いていたエルメが声をあげた。
「こんなのおかしい!!! 物語と違う!! 」
彼女はもう一度、そう叫んだ。
物語と、違う……?
その言葉があたしの胸にやけに残った。
物語……物語ってまさか……。
「……クロノス=レジェンディア」
あたしがそう呟くと、途端にエルメの顔色が変わった。
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