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1年生・春
第17話 いきなりピンチに陥ってますよ
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イキリ散らしたコスモに連れられて結界の外に出てみた私たち!
しかーし早速魔物の群れに囲まれて絶体絶命な状況に追い込まれていた。
全方位を魔物に囲まれ、逃げ道はない。
「はああああ!!! 」
何とか道を開こうと剣を振り回すコスモだったが、呆気なく魔物に攻撃をかわされ、反撃を食らう。
んー、何というか動きに無駄が多いな。格好つけることばかりに集中しちゃって肝心の魔物に攻撃が当たっていない。
「クソが!! おい女、とっとと回復しろ!! 」
「え? 」
不意に声をかけられ間抜けな返事をすら私。
「は? お前聖女見習いだろ!? 回復魔法の一つや二つ……」
「てへ☆」
自慢じゃないがこの私、肝心の魔法は一切使えないのである。どうもこの世界の魔法を扱うには深く物事を知る必要があるらしい。
どういうことかと言うと、例えば水の魔法が使いたかったら、水について詳しく知っていなければ最高の効果は得られない。
つまり、かしこさが2しかない私には無理だと言うことだ。
……全部ゼノから教わったことだけどね。
「役に立たねえ女だな!! じゃあお前!! さっさとしろ! 」
コスモが次に目をつけたのはゼノ。しかしゼノは冷めた目付きでボロボロのコスモを見下ろしている。
「回復してやっても良いけど……頼み方ってものがあるんじゃない? 」
「は? 良いからさっさとしろ! 」
「お願いします、回復してください、でしょ? 」
おー、煽る煽る。
しかもゼノは気持ち悪いぐらいのにっこり笑顔だ。
「何で俺様がそんなこと……」
「ん? よく聞こえないな」
流石は元魔王! 性格の悪さは天下一品だぜ!
「こんなところで喧嘩しないで下さい! 回復魔法なら多少は私も使えますから」
このピリピリした空気に耐えられなくなったのかハルが二人の間に割り込んだ。
「さっすがハルちゃん。頼りになるね」
私たちのときとはうって代わり、猫なで声のコスモ。うーん、分かりやすい。
「でもまずはここから逃げなければ……。私が魔法を使って敵の注意を引きます。その隙に皆で逃げましょう! 」
ハルは目をつぶると、ぶつぶつと詠唱を始めた。みるみる内に彼女の小さな手のひらに炎の球が出来上がっていく。
へー、魔法ってこんな風に出来ていくんだ。間近で見た私は少々感動する。
「火炎球! 」
ハルが投げた炎のボールは、魔物の群れの中で炸裂すると、辺りを燃え付くした。
驚いた魔物どもがそちらの方に視線を向ける。
「今です! 」
ハルの声を合図に、私たちは一目散に逃げだす……訳がない。
私の辞書に逃走という二文字はない!
「きゃ! いったーい! 」
わざとらしく転ぶ私。
「何やってんだグズ! 」
「ユノちゃん! 」
先頭を行くコスモとハルが声をあげる。
「ごめんなさーい、皆先行っててー」
言われなくても、とでも言いたげなコスモの姿は木々に隠れてさっさと見えなくなった。
そしてハルもしばし心配そうにこちらを振り返っていたが、その小さな体はすぐに見えなくなった。
しめしめ、邪魔者は消えた。
と、思いきや。
「……わざと転んだだろ」
私の演技を見抜いていたゼノが腕を組み、目を細めてそこにいた。
むむむ、一緒に逃げてると思ったのに。
「あったり前じゃない。そもそも私はゼノに騙されたせいでストレス貯まってんのよ」
「まぁ……それは悪かった」
「だ・か・ら! ここにいる魔物どもでもぶちのめしてすっきりすんの」
「助太刀は? 」
「要るわけがない」
私は学園から支給された両手杖を掴み直すと、一度大きく振ってみる。
うん、木製のシンプルな作りではあるけど打撃武器として使えなくもない。
「……絶対使い方が違うと思うんだが」
細かいことは良いのよ、ぶん殴れればもうそれは立派な武器!
「ゼノは黙って見てなさいよ! 」
私は息を吸うと、魔物どもの群れに飛び込んだ。
こちとらストレス貯まってんだよ!!
手加減は期待しないで欲しい。
ーー後に目撃者ゼノは語る。
それは一方的なリンチであったと。
高笑いをしながら両手杖で敵を殴打するその女は、まさしく悪魔であったとーー
全ての敵を殲滅するのにそう長い時間は必要なかった。
うん、まあそこそこすっきりはしたかな。
ただもうちょっと歯応えがあったらなーなんて贅沢言ってみる。
「あーあ、地獄絵図だな」
遠くで見てたゼノが惨状を目の当たりにして言う。その顔は少々ひきつってるように見える。
……ってまさか!
魔物って魔王の仲間なのでは? そしたら私はゼノの部下をボコボコにしたってことになる……。
ま、いっか。
先に襲ってきたのは向こうだし、ゼノの教育不届きということで。
そのとき、キャーーー!!!
という甲高い声が森中に響き渡った。この声の主はおそらくハル。
顔を見合わせた私たちは、声のする方へと走って行くのだった。
しかーし早速魔物の群れに囲まれて絶体絶命な状況に追い込まれていた。
全方位を魔物に囲まれ、逃げ道はない。
「はああああ!!! 」
何とか道を開こうと剣を振り回すコスモだったが、呆気なく魔物に攻撃をかわされ、反撃を食らう。
んー、何というか動きに無駄が多いな。格好つけることばかりに集中しちゃって肝心の魔物に攻撃が当たっていない。
「クソが!! おい女、とっとと回復しろ!! 」
「え? 」
不意に声をかけられ間抜けな返事をすら私。
「は? お前聖女見習いだろ!? 回復魔法の一つや二つ……」
「てへ☆」
自慢じゃないがこの私、肝心の魔法は一切使えないのである。どうもこの世界の魔法を扱うには深く物事を知る必要があるらしい。
どういうことかと言うと、例えば水の魔法が使いたかったら、水について詳しく知っていなければ最高の効果は得られない。
つまり、かしこさが2しかない私には無理だと言うことだ。
……全部ゼノから教わったことだけどね。
「役に立たねえ女だな!! じゃあお前!! さっさとしろ! 」
コスモが次に目をつけたのはゼノ。しかしゼノは冷めた目付きでボロボロのコスモを見下ろしている。
「回復してやっても良いけど……頼み方ってものがあるんじゃない? 」
「は? 良いからさっさとしろ! 」
「お願いします、回復してください、でしょ? 」
おー、煽る煽る。
しかもゼノは気持ち悪いぐらいのにっこり笑顔だ。
「何で俺様がそんなこと……」
「ん? よく聞こえないな」
流石は元魔王! 性格の悪さは天下一品だぜ!
「こんなところで喧嘩しないで下さい! 回復魔法なら多少は私も使えますから」
このピリピリした空気に耐えられなくなったのかハルが二人の間に割り込んだ。
「さっすがハルちゃん。頼りになるね」
私たちのときとはうって代わり、猫なで声のコスモ。うーん、分かりやすい。
「でもまずはここから逃げなければ……。私が魔法を使って敵の注意を引きます。その隙に皆で逃げましょう! 」
ハルは目をつぶると、ぶつぶつと詠唱を始めた。みるみる内に彼女の小さな手のひらに炎の球が出来上がっていく。
へー、魔法ってこんな風に出来ていくんだ。間近で見た私は少々感動する。
「火炎球! 」
ハルが投げた炎のボールは、魔物の群れの中で炸裂すると、辺りを燃え付くした。
驚いた魔物どもがそちらの方に視線を向ける。
「今です! 」
ハルの声を合図に、私たちは一目散に逃げだす……訳がない。
私の辞書に逃走という二文字はない!
「きゃ! いったーい! 」
わざとらしく転ぶ私。
「何やってんだグズ! 」
「ユノちゃん! 」
先頭を行くコスモとハルが声をあげる。
「ごめんなさーい、皆先行っててー」
言われなくても、とでも言いたげなコスモの姿は木々に隠れてさっさと見えなくなった。
そしてハルもしばし心配そうにこちらを振り返っていたが、その小さな体はすぐに見えなくなった。
しめしめ、邪魔者は消えた。
と、思いきや。
「……わざと転んだだろ」
私の演技を見抜いていたゼノが腕を組み、目を細めてそこにいた。
むむむ、一緒に逃げてると思ったのに。
「あったり前じゃない。そもそも私はゼノに騙されたせいでストレス貯まってんのよ」
「まぁ……それは悪かった」
「だ・か・ら! ここにいる魔物どもでもぶちのめしてすっきりすんの」
「助太刀は? 」
「要るわけがない」
私は学園から支給された両手杖を掴み直すと、一度大きく振ってみる。
うん、木製のシンプルな作りではあるけど打撃武器として使えなくもない。
「……絶対使い方が違うと思うんだが」
細かいことは良いのよ、ぶん殴れればもうそれは立派な武器!
「ゼノは黙って見てなさいよ! 」
私は息を吸うと、魔物どもの群れに飛び込んだ。
こちとらストレス貯まってんだよ!!
手加減は期待しないで欲しい。
ーー後に目撃者ゼノは語る。
それは一方的なリンチであったと。
高笑いをしながら両手杖で敵を殴打するその女は、まさしく悪魔であったとーー
全ての敵を殲滅するのにそう長い時間は必要なかった。
うん、まあそこそこすっきりはしたかな。
ただもうちょっと歯応えがあったらなーなんて贅沢言ってみる。
「あーあ、地獄絵図だな」
遠くで見てたゼノが惨状を目の当たりにして言う。その顔は少々ひきつってるように見える。
……ってまさか!
魔物って魔王の仲間なのでは? そしたら私はゼノの部下をボコボコにしたってことになる……。
ま、いっか。
先に襲ってきたのは向こうだし、ゼノの教育不届きということで。
そのとき、キャーーー!!!
という甲高い声が森中に響き渡った。この声の主はおそらくハル。
顔を見合わせた私たちは、声のする方へと走って行くのだった。
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