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第五章 宝刀

第28話

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「たいきは『童子切』を使ってくれないかい?僕は『鬼切丸』を使うから」
「え? 平安時代に酒呑童子を切ったのは、『童子切』の宝刀だろう? そっちをマシューが使った方がいいんじゃないか?」

「いや。たいきの方が適任だよ。君には見えないかもしれないけれど、この刀、君に向かってやわらかい光を放っているんだ。懐いているというか波長が合うってことだよ」

「そっか。じゃあ、俺が『童子切』担当ね。日本人だからマシューよりも合うのかなぁ……」

 大祇にはその波長らしき光は全く見えないので、マシューの言葉を信じて大祇が持つことになった。

「もし、鬼に遭遇したらこれで切りつけるの?」
「うん。でも、文献には載っていなかったけれど血が出たりするんじゃなくて、刀が鬼に触れた瞬間に彼らの力を吸収していたんじゃないかと僕は考えているんだ。宝刀の解明されていない仮説の一つにそういう見解があってね。誰も見たことは無いから、どうやって力を削ぎ落すのか、実際にやってみないと僕もわからないけれど」

「そのほうがいいよ。俺だって人も鬼も傷つけたいわけではないから、血とか出ない仕組みである方を願うよ」

 大祇は、マシューには言わなかったけれど、血を見ると自分も気分が優れなくなるタイプだ。大祇自身、将来、お医者さんや看護師さんの職業に就くことは向いていないと思っている。だからこそ、医療従事者には尊敬する気持ちが大きい。

「さぁ、日が長くなってきたとはいえ、そろそろ出発しよう。僕は、木の上を移動しながら行くから、たいきは地面に何か手がかりがないか、痕跡を探しながら進んでくれるかい?」

「わかった」
「僕たちはお互い相棒だと思って、お互いの距離が離れすぎることがないように気をつけるんだよ」
「そうだね」
 
 そこまで言うと、マシューは地面を強く蹴り上げて、話していた傍にあった木の枝の上にすでにもう立っている。大祇は、その姿を確認してから、まりなのおはじきが落ちていた方向に真っ直ぐ速足で歩いて行った。


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