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初戦闘
隠れた才能
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ミックがちょうど背後からガラに襲われた時、ガラに充分近付いたラズは、ミックに自分たちに矢が当たらないようこれ以上うつなと合図を送ろうとした。別のガラに応戦しているミックは、こちらを見ていなかった。ラズはほんの数秒、その様子を観察した。近衛兵なら狙撃手でも接近戦では短刀を使うよう訓練されているはずだ。こちらのガラと同程度の奴のようだから対応できるだろう。あちらにはあと二人いるし(一人は戦力外だが)問題ないと結論づけた。
ラズは矢が一本ずつ刺さっているガラに向き直った。それにしても、驚くべき狙撃精度だ。あの距離ですべてのガラに命中させ、一人を消滅させている。ガラを消滅させるには心臓を貫くしかない。手足がもげようと首が飛ぼうとガラは存在し続ける。なくなった体のパーツは心臓を中心に再生する。ゾルと肉体を結びつけている器官が心臓であるからだと言われている。
ミックのことを侮っていた。ただの脳天気な女だと思っていた。格下とはいえ先手を取ってきた敵に、的確に対処している。しかも仲間を庇いながらだ。旅の仲間に選ばれたのはこの実力故か、と一人納得した。
「奥のやつを俺がやる。貴様は手前のやつだ。」
「わかったわ。」
ラズはほとんど声を出さず身振りでベルに指示を出した。自分一人でもどうにかできたが、それなりのスピードで走ったにも関わらず付いてきたこの女の実力も見ておかなくてはならないと思った。見たところ武器は持っていない。馬車での準備でも、グローブをはめただけだった。占い師の力を継いでいるということだから、魔法を戦闘に用いるのかもしれない。
「行くぞ。」
そう口だけ動かし、人差し指と中指を揃えてピッと目標のガラに向けた。
ベルが頷き切る前にラズは飛び出し奥のガラを切りつけた。やはり鈍い。ガードさえされなかった。サラサラとガラの体が崩れていく。一体どんな魔法を使うのか、とベルの方を振り返ってラズは驚愕した。ベルは…強烈な飛び蹴りを食らわしていた。そして、バランスを崩し倒れたガラに馬乗りになり心臓がある胸のあたりを、殴りまくった。
ガラが全く動かなくなり指先から消滅していくと、ベルは殴るのをやめた。
「ふう、強い相手じゃなくてよかったわ。あなたとっても速いのね。」
手をプラプラと振り整理運動のような動きをしているベルに、返す言葉が見つからなかった。素手で(グローブはしているが)ガラを倒す人間を初めて見た。
「速い…!」
ラズたちの戦いを見たミックは目を丸くした。素晴らしい剣さばきだった。一瞬でガラを切り消滅させたラズのフォームは、懐かしい父の姿に似ていた。加えて驚いたのが
「ベル…格闘家か何かなの?」
あのようにダイナミックに動いて武器無しでガラを倒すなんて常人ではない。
「姉さんは踊り子なんだけど、その動きとたまたま教えてもらった格闘術がマッチしたみたいなんだよね。加えて持って生まれた運動能力と強気な性格…よく喧嘩してるけど、負けてるのは見たことないな。俺は姉さんとは色んな意味で戦いたくない。」
「道理で、ディルは喧嘩の仲裁が上手いわけだ。」
シュートがミックに手を貸してもらいよろよろと立ち上がった。
よく見ると、先程の霜はシュートを中心に円形状に降りていた。半径約二メートル程の範囲だ。ラズとベルが馬を連れて戻ってきた。近くの木に手綱を括り付けられていたそうだ。どうやらガラ達は、馬の抵抗が激しかったため、馬をここに置いて自分たちだけいったん洞穴に行こうとしていたようだった。霜を見たベルがなにか言いたげだったが、とりあえず一行は町へ戻ることにした。
ミック達は町で、英雄扱いされた。名馬を短時間で無事取り戻した実力者だと称賛された。そんなすごいことしてないんだけどな、とミックはばつが悪くなった。町長がしつこく誘うし、特に他のあてもなかったので、家で昼ご飯をご馳走になった。
「おい貴様、次は声を出すな。」
町長が町の人に呼ばれ席を外し、旅の仲間だけになったタイミングで、食事の席では一言も話さなかったラズが言った。
「貴様って、俺のこと?」
シュートが自分を指さしながら首を傾げた。
「他に誰がいる。貴様の声でこちらに気付かれた。戦えないのならせめて足を引っ張るな。」
「まあたお前は!人に対してもう少し…。」
「戦えるんじゃないかしら?」
ラズに掴みかかろうとしていたシュートが手を止めた。全員がベルを見つめた。
「シュート、これ握ってみて?」
ベルが差し出したのは魔力計だ。水銀の温度計と同じような形をしている。端っこを握ると、握ったものの魔力を忰(すい)という単位の数値で出し、色で系統を教えてくれる。
シュートは初めて見るらしく、ベルに教えられながら魔力計を握った。すると、温度計でいうところの水銀の役割をしている透水(とうすい)がぐんぐん上がり、上限のちょうど半分の50で止まった。魔法を使うには充分どころか高レベルな数値だ。透水の色は白に近い水色だ。
「やっぱり!あなた魔法の才能あるわよ。氷系統だわ。馬車の中でも少し感じてたんだけど…さっきあなたの周りだけ霜が降りてたでしょ?それで確信したわ。命の危険にさらされて、自分でも気付かないうちに魔法使ってたのよ。」
シュートはポカンとしている。王都で医師として暮らしていたから、おそらく魔法のことなんて考えもしなかったのだろう。突然変異ということもあるが、魔力はほとんどの場合血筋で決まる。親や祖父母に魔力がなければ、その子供が持つことはめったにない。シュートはかなりレアなパターンだ。
「そう…なのか?」
シュートは戸惑ってはいるが口元がにやけており、喜びが漏れ出している。
「魔法を使うにはそれなりの訓練が必要だ。今すぐ戦えるわけではない。精進しろ。」
「だ、か、ら!お前は何でそうも上から目線なんだ!そんなこと俺だってわかるわ!何か?お前魔法使えんのか?」
「……使えるわけないだろう。使えるなら第四部隊に所属している。」
一瞬、答えに窮してからラズが言った。言葉に詰まることもあるんだな、とミックは少し意外に思った。
「入隊するときに検査するもんね。二十五忰以上だったら第四部隊だっけ?私は〇粋だったなぁ。」
ミックは入隊時の適性検査を思い出した。身長、体重、体力、魔力などを測定し、どの部隊に配属するか決める検査だ。
ラズ、ベル、ディルが、少し驚いた顔をもぐもぐとローストチキンを頬張るミックに向けた。
「〇粋も珍しいね。大抵みんな生まれながらにして少しは持っているけど…。」
「それ検査のときにも言われた。まあでも、魔力ないからって困ることはないし、全然気にしてないんだ。」
チキンを飲み込んで、ディルに笑顔を向けた。実際その通りで、魔力が多少あったところで普段の生活で何に活用できるわけでもない。だから第四部隊入隊には、二十五忰以上という規定があるのだ。
「本当に初歩の基礎的な訓練なら、私が教えてあげられるわ。でも、私はそんなに魔力を持っているわけじゃないの。なんとなく知りたいことがわかったり、ぼんやりと未来の様子が浮かんだりする程度。系統別の本格的な訓練となると誰かに師事するか、最低でも本で学ぶかしないと。」
ベルの言う通りだ。弓矢や剣と同じように、魔法も訓練が必要なのだ。
「おう、わかった。次に行くところで探してみるぜ!」
シュートの顔は今までで一番輝いていた。心配していた戦闘面の弱点が克服できそうなのだから、嬉しいに違いない。
「次に行く街はマルビナ。学問で有名だから、本は見つけられるんじゃないかな。」
ディルが石の入った巾着袋を紐で吊るして振り子のようにして持ち、方角を確認しながら地図を見てにっこりと笑った。石の入った袋は、よく見ると南西へと引っ張られている。紐の部分は垂直に床に向かっておらず、わずかに斜めになっている。
町長が戻ってきたので、ディルはさっと巾着と地図をしまった。昼食をあらかた食べ終わったので、旅の一行は町を出発することにした。町の人々がどうしても見送ると言うので、カモフラージュのため、ある程度王都の方向へ馬車で移動したところでミック達は徒歩へと切り替え進む方角を変えた。
ああ、いよいよ本格的な旅の始まりだ、とミックは実感が湧いてきた。早ければ次の街マルビナで蹴りがつく。しかし、めったに予感めいたことは感じないミックだったが、残念ながらこの旅がそう簡単に終わる気はしなかったし、なぜかその感覚に自信があった。
ラズは矢が一本ずつ刺さっているガラに向き直った。それにしても、驚くべき狙撃精度だ。あの距離ですべてのガラに命中させ、一人を消滅させている。ガラを消滅させるには心臓を貫くしかない。手足がもげようと首が飛ぼうとガラは存在し続ける。なくなった体のパーツは心臓を中心に再生する。ゾルと肉体を結びつけている器官が心臓であるからだと言われている。
ミックのことを侮っていた。ただの脳天気な女だと思っていた。格下とはいえ先手を取ってきた敵に、的確に対処している。しかも仲間を庇いながらだ。旅の仲間に選ばれたのはこの実力故か、と一人納得した。
「奥のやつを俺がやる。貴様は手前のやつだ。」
「わかったわ。」
ラズはほとんど声を出さず身振りでベルに指示を出した。自分一人でもどうにかできたが、それなりのスピードで走ったにも関わらず付いてきたこの女の実力も見ておかなくてはならないと思った。見たところ武器は持っていない。馬車での準備でも、グローブをはめただけだった。占い師の力を継いでいるということだから、魔法を戦闘に用いるのかもしれない。
「行くぞ。」
そう口だけ動かし、人差し指と中指を揃えてピッと目標のガラに向けた。
ベルが頷き切る前にラズは飛び出し奥のガラを切りつけた。やはり鈍い。ガードさえされなかった。サラサラとガラの体が崩れていく。一体どんな魔法を使うのか、とベルの方を振り返ってラズは驚愕した。ベルは…強烈な飛び蹴りを食らわしていた。そして、バランスを崩し倒れたガラに馬乗りになり心臓がある胸のあたりを、殴りまくった。
ガラが全く動かなくなり指先から消滅していくと、ベルは殴るのをやめた。
「ふう、強い相手じゃなくてよかったわ。あなたとっても速いのね。」
手をプラプラと振り整理運動のような動きをしているベルに、返す言葉が見つからなかった。素手で(グローブはしているが)ガラを倒す人間を初めて見た。
「速い…!」
ラズたちの戦いを見たミックは目を丸くした。素晴らしい剣さばきだった。一瞬でガラを切り消滅させたラズのフォームは、懐かしい父の姿に似ていた。加えて驚いたのが
「ベル…格闘家か何かなの?」
あのようにダイナミックに動いて武器無しでガラを倒すなんて常人ではない。
「姉さんは踊り子なんだけど、その動きとたまたま教えてもらった格闘術がマッチしたみたいなんだよね。加えて持って生まれた運動能力と強気な性格…よく喧嘩してるけど、負けてるのは見たことないな。俺は姉さんとは色んな意味で戦いたくない。」
「道理で、ディルは喧嘩の仲裁が上手いわけだ。」
シュートがミックに手を貸してもらいよろよろと立ち上がった。
よく見ると、先程の霜はシュートを中心に円形状に降りていた。半径約二メートル程の範囲だ。ラズとベルが馬を連れて戻ってきた。近くの木に手綱を括り付けられていたそうだ。どうやらガラ達は、馬の抵抗が激しかったため、馬をここに置いて自分たちだけいったん洞穴に行こうとしていたようだった。霜を見たベルがなにか言いたげだったが、とりあえず一行は町へ戻ることにした。
ミック達は町で、英雄扱いされた。名馬を短時間で無事取り戻した実力者だと称賛された。そんなすごいことしてないんだけどな、とミックはばつが悪くなった。町長がしつこく誘うし、特に他のあてもなかったので、家で昼ご飯をご馳走になった。
「おい貴様、次は声を出すな。」
町長が町の人に呼ばれ席を外し、旅の仲間だけになったタイミングで、食事の席では一言も話さなかったラズが言った。
「貴様って、俺のこと?」
シュートが自分を指さしながら首を傾げた。
「他に誰がいる。貴様の声でこちらに気付かれた。戦えないのならせめて足を引っ張るな。」
「まあたお前は!人に対してもう少し…。」
「戦えるんじゃないかしら?」
ラズに掴みかかろうとしていたシュートが手を止めた。全員がベルを見つめた。
「シュート、これ握ってみて?」
ベルが差し出したのは魔力計だ。水銀の温度計と同じような形をしている。端っこを握ると、握ったものの魔力を忰(すい)という単位の数値で出し、色で系統を教えてくれる。
シュートは初めて見るらしく、ベルに教えられながら魔力計を握った。すると、温度計でいうところの水銀の役割をしている透水(とうすい)がぐんぐん上がり、上限のちょうど半分の50で止まった。魔法を使うには充分どころか高レベルな数値だ。透水の色は白に近い水色だ。
「やっぱり!あなた魔法の才能あるわよ。氷系統だわ。馬車の中でも少し感じてたんだけど…さっきあなたの周りだけ霜が降りてたでしょ?それで確信したわ。命の危険にさらされて、自分でも気付かないうちに魔法使ってたのよ。」
シュートはポカンとしている。王都で医師として暮らしていたから、おそらく魔法のことなんて考えもしなかったのだろう。突然変異ということもあるが、魔力はほとんどの場合血筋で決まる。親や祖父母に魔力がなければ、その子供が持つことはめったにない。シュートはかなりレアなパターンだ。
「そう…なのか?」
シュートは戸惑ってはいるが口元がにやけており、喜びが漏れ出している。
「魔法を使うにはそれなりの訓練が必要だ。今すぐ戦えるわけではない。精進しろ。」
「だ、か、ら!お前は何でそうも上から目線なんだ!そんなこと俺だってわかるわ!何か?お前魔法使えんのか?」
「……使えるわけないだろう。使えるなら第四部隊に所属している。」
一瞬、答えに窮してからラズが言った。言葉に詰まることもあるんだな、とミックは少し意外に思った。
「入隊するときに検査するもんね。二十五忰以上だったら第四部隊だっけ?私は〇粋だったなぁ。」
ミックは入隊時の適性検査を思い出した。身長、体重、体力、魔力などを測定し、どの部隊に配属するか決める検査だ。
ラズ、ベル、ディルが、少し驚いた顔をもぐもぐとローストチキンを頬張るミックに向けた。
「〇粋も珍しいね。大抵みんな生まれながらにして少しは持っているけど…。」
「それ検査のときにも言われた。まあでも、魔力ないからって困ることはないし、全然気にしてないんだ。」
チキンを飲み込んで、ディルに笑顔を向けた。実際その通りで、魔力が多少あったところで普段の生活で何に活用できるわけでもない。だから第四部隊入隊には、二十五忰以上という規定があるのだ。
「本当に初歩の基礎的な訓練なら、私が教えてあげられるわ。でも、私はそんなに魔力を持っているわけじゃないの。なんとなく知りたいことがわかったり、ぼんやりと未来の様子が浮かんだりする程度。系統別の本格的な訓練となると誰かに師事するか、最低でも本で学ぶかしないと。」
ベルの言う通りだ。弓矢や剣と同じように、魔法も訓練が必要なのだ。
「おう、わかった。次に行くところで探してみるぜ!」
シュートの顔は今までで一番輝いていた。心配していた戦闘面の弱点が克服できそうなのだから、嬉しいに違いない。
「次に行く街はマルビナ。学問で有名だから、本は見つけられるんじゃないかな。」
ディルが石の入った巾着袋を紐で吊るして振り子のようにして持ち、方角を確認しながら地図を見てにっこりと笑った。石の入った袋は、よく見ると南西へと引っ張られている。紐の部分は垂直に床に向かっておらず、わずかに斜めになっている。
町長が戻ってきたので、ディルはさっと巾着と地図をしまった。昼食をあらかた食べ終わったので、旅の一行は町を出発することにした。町の人々がどうしても見送ると言うので、カモフラージュのため、ある程度王都の方向へ馬車で移動したところでミック達は徒歩へと切り替え進む方角を変えた。
ああ、いよいよ本格的な旅の始まりだ、とミックは実感が湧いてきた。早ければ次の街マルビナで蹴りがつく。しかし、めったに予感めいたことは感じないミックだったが、残念ながらこの旅がそう簡単に終わる気はしなかったし、なぜかその感覚に自信があった。
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