悪の王妃

桜木弥生

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悪の王妃17

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もしかして…

「わたくしが何度も生を繰り返したのは…貴女のせいなの?…」
「それは違います。魔法使いと言えど、できる事とできない事はあるんです。一つは、人の生死。死んだ者は生き返せない。二つ目は時間。時間を逆行させることは、歪を生んでしまうんでできないんです」

では何故わたくしは何度も繰り返しているの?…

「血の魔法、です。ある種の呪いと言ってもいいかな」
「呪い…」

そう。と肯定する彼女は、わたくしの耳元に手を伸ばしてピアスを撫でた。

「ご先祖様の魔法です。理不尽な死から逃れられるように。また、子孫で魔法使いの血が覚醒遺伝で現れたら、その子を守るようにという、優しい呪い」
「優しくないわね。何度も死ぬのは辛かったわ…」

苦笑しながらピアスを外す。

「待って。ということは、わたくしの先祖に魔法使いがいたという事?」

にっこりと笑みを濃くして彼女は笑った。

「ええ。だから、一緒に生きませんか?と」

お婆様の童話には確かこうあった。
『魔法使いは不老不死だ…』と

「え。嫌よ」
「え?」

まさか拒否されるとは思っていなかったらしく、彼女の顔から笑みが消えた。

「だって、不老不死になるのでしょう?わたくし、もう生きたくないもの」

何度も繰り返された死は、わたくしの心を疲弊させた。
これをまた繰り返すのは嫌だわ。死ねないなんて、死にたいわたくしには地獄でしかない。

「えぇー……本気です?…」
「本気よ」

そう言うと彼女は「あぁもう!」と自らの頭をガシガシと掻いた。

「魔法使いになれば、なんでも好きな事できるんですよ?裸足で海岸を歩く事もできるし、空を飛ぶこともできる。市場で面白い物買ったりもできるし」
「それは魅力的ね」
「でしょう!?」

でも…

「それでもわたくしは生まれた時から王女だったから…王女以外の何かになる事はできないわ。確かに新しい事や、した事がない事は魅力的だし、きっと楽しいのでしょう。それでも、わたくしは『王族』としての誇りもあるのよ」

そう言うと彼女は心底ショックだというように項垂れた。
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