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悪の王妃16
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後ろから飛び降りたから、目の前には青空が映っている。
背中から吸い込まれるように落ちて行く感覚。
内臓がせり上がり、叫びたくなるけれどそれは我慢して。
落ちた時に痛みって感じるのかしら?
なんて、考える事すらできるほど長く感じる。
と、霧の中に入ったのか一気に視界が真っ白になった。
それと同時に、谷底から引かれる重力がぷつんと何かに切られたように身体が浮かんでいる感覚に陥る。
「王妃様。生きたいですか?」
隣から聞こえるのは、ここ数日、ずっと傍にいてくれた侍女の声。
「王妃様。生きたいですか?」
空耳かと思ったけれどもう一度聞こえたソレに、思わず顔を向けると、隣で肘を付いたような状態で寝そべる形の侍女が宙に浮かんでいた。
「ねぇ、王妃様。一緒に生きませんか?国も、しがらみも全部捨てて。私と一緒に」
そっとわたくしへ手を差し伸べてくる。
まるで夢のような現実離れした空間で差し出されたその指先をじっと見つめてしまう。
「ねぇ。王妃様。今なら、死んだと見せかけて自由に生きられますよ」
ふと、子供の頃にお婆様がしてくれた童話を思い出した。
全ての内容を覚えているわけではないけれど。
魔法使いの国のお話。
そこにいる紅の魔女は何でも願いを叶えてくれるのだと。
魔法なんてないこの世界で、そんな夢物語があると信じてはいないけれど。
「貴女は…魔女なの?…」
わたくしの意思とは裏腹に彼女に聞いていた。
「違います。私は、魔法使い。魔女と呼べるのはたった一人だけだから」
「くれないの…?」
「そう」と頷くと、彼女は宙で回転して、寝そべった形から座った形へ移動した。
『おとぎ話の事』と笑えないのは、いつの間にかわたくしも彼女と同じように宙に浮いていたから。
「で、どうします?王妃様。生きたい?ここで終わりたい?」
背中から吸い込まれるように落ちて行く感覚。
内臓がせり上がり、叫びたくなるけれどそれは我慢して。
落ちた時に痛みって感じるのかしら?
なんて、考える事すらできるほど長く感じる。
と、霧の中に入ったのか一気に視界が真っ白になった。
それと同時に、谷底から引かれる重力がぷつんと何かに切られたように身体が浮かんでいる感覚に陥る。
「王妃様。生きたいですか?」
隣から聞こえるのは、ここ数日、ずっと傍にいてくれた侍女の声。
「王妃様。生きたいですか?」
空耳かと思ったけれどもう一度聞こえたソレに、思わず顔を向けると、隣で肘を付いたような状態で寝そべる形の侍女が宙に浮かんでいた。
「ねぇ、王妃様。一緒に生きませんか?国も、しがらみも全部捨てて。私と一緒に」
そっとわたくしへ手を差し伸べてくる。
まるで夢のような現実離れした空間で差し出されたその指先をじっと見つめてしまう。
「ねぇ。王妃様。今なら、死んだと見せかけて自由に生きられますよ」
ふと、子供の頃にお婆様がしてくれた童話を思い出した。
全ての内容を覚えているわけではないけれど。
魔法使いの国のお話。
そこにいる紅の魔女は何でも願いを叶えてくれるのだと。
魔法なんてないこの世界で、そんな夢物語があると信じてはいないけれど。
「貴女は…魔女なの?…」
わたくしの意思とは裏腹に彼女に聞いていた。
「違います。私は、魔法使い。魔女と呼べるのはたった一人だけだから」
「くれないの…?」
「そう」と頷くと、彼女は宙で回転して、寝そべった形から座った形へ移動した。
『おとぎ話の事』と笑えないのは、いつの間にかわたくしも彼女と同じように宙に浮いていたから。
「で、どうします?王妃様。生きたい?ここで終わりたい?」
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