12 / 23
悪の王妃12
しおりを挟む
「えっと…本気ですか?…」
真顔で聞かれてしまったけれど、本気よ。
持っているドレスはどれも華美で動けないからと、侍女のお仕着せを貸して貰って一階へ向かう。
「残り少ない命だもの。やってみたかったことをしたいの」
それにしてもお仕着せって本当に楽ね。
長ったらしいドレスの裾を踏まないように歩く事もなければ、重くもない。
地獄のようなコルセットだってしなくていいのは本当に楽で、ずっとこの恰好でいたいくらい。
わたくしに自らのお仕着せのスペアを渡した彼女は、心底『渡すんじゃなかった』と言いたげな表情でわたくしを見てくる。
手には昨日汚したわたくしのドレス。
背中やお尻の部分に草の汁がついて汚れてしまっているから、自分で洗おうと洗濯場へ向かった。
背中では「だめです。王妃様にさせられません」という声が聞こえるけれど、自分で汚した物だもの。自分で綺麗にしたいわ。
と、小一時間程頑張って洗ったドレスのシミは結局は落ちなかった。
「あとで特殊な洗剤で落としますので置いておいてください」
そう侍女に言われて、濡れて重くなったドレスはその場に置いて今度はキッチンへ移動する。
まだ時間はあるし、そろそろお昼になる。
日が真上に来るのはお昼を過ぎて暫くしたらだから、まだ時間の余裕はあるでしょう。
「…料理って難しいのね…」
野菜の皮を剥こうとして指を切り。
鍋を触って火傷をし。
結局まともにできたのは盛り付けだけだったけれど、凄く大変で楽しかった。
手に巻かれた包帯に思わず笑ってしまう。
けれど初めて自分で作った料理は、調味料も足りなくて味が薄いし、茹で足りなくて固かったけれど、凄く美味しく感じた。
「……そろそろ時間ね。準備をお願いしても良いかしら?」
食事が終わって、何回も繰り返してやっと自分で美味しく淹れられるようになった紅茶を飲み干して、ドレッサーの前に向かうと、「かしこまりました」と優しい手つきで髪を整えてくれる。
けれど、わたくしの気持ちを察してか整えるだけで何も飾らない。
ドレスは謁見の間に向かうという事で通常ならばきちんとした物を着なければいけないけれど、なるべく質素な物を選んだ。
「さぁ、参りましょうか」
「お供致します」
最後の瞬間に、供がいるのは初めてね。
いつもリリアンヌは最後の日は泣き崩れて着いてきてはくれなかったから。
最後まで見届けてくれようとする侍女に微笑んで「ありがとう」と伝えて部屋を出た。
真顔で聞かれてしまったけれど、本気よ。
持っているドレスはどれも華美で動けないからと、侍女のお仕着せを貸して貰って一階へ向かう。
「残り少ない命だもの。やってみたかったことをしたいの」
それにしてもお仕着せって本当に楽ね。
長ったらしいドレスの裾を踏まないように歩く事もなければ、重くもない。
地獄のようなコルセットだってしなくていいのは本当に楽で、ずっとこの恰好でいたいくらい。
わたくしに自らのお仕着せのスペアを渡した彼女は、心底『渡すんじゃなかった』と言いたげな表情でわたくしを見てくる。
手には昨日汚したわたくしのドレス。
背中やお尻の部分に草の汁がついて汚れてしまっているから、自分で洗おうと洗濯場へ向かった。
背中では「だめです。王妃様にさせられません」という声が聞こえるけれど、自分で汚した物だもの。自分で綺麗にしたいわ。
と、小一時間程頑張って洗ったドレスのシミは結局は落ちなかった。
「あとで特殊な洗剤で落としますので置いておいてください」
そう侍女に言われて、濡れて重くなったドレスはその場に置いて今度はキッチンへ移動する。
まだ時間はあるし、そろそろお昼になる。
日が真上に来るのはお昼を過ぎて暫くしたらだから、まだ時間の余裕はあるでしょう。
「…料理って難しいのね…」
野菜の皮を剥こうとして指を切り。
鍋を触って火傷をし。
結局まともにできたのは盛り付けだけだったけれど、凄く大変で楽しかった。
手に巻かれた包帯に思わず笑ってしまう。
けれど初めて自分で作った料理は、調味料も足りなくて味が薄いし、茹で足りなくて固かったけれど、凄く美味しく感じた。
「……そろそろ時間ね。準備をお願いしても良いかしら?」
食事が終わって、何回も繰り返してやっと自分で美味しく淹れられるようになった紅茶を飲み干して、ドレッサーの前に向かうと、「かしこまりました」と優しい手つきで髪を整えてくれる。
けれど、わたくしの気持ちを察してか整えるだけで何も飾らない。
ドレスは謁見の間に向かうという事で通常ならばきちんとした物を着なければいけないけれど、なるべく質素な物を選んだ。
「さぁ、参りましょうか」
「お供致します」
最後の瞬間に、供がいるのは初めてね。
いつもリリアンヌは最後の日は泣き崩れて着いてきてはくれなかったから。
最後まで見届けてくれようとする侍女に微笑んで「ありがとう」と伝えて部屋を出た。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
裏切りのその後 〜現実を目の当たりにした令嬢の行動〜
AliceJoker
恋愛
卒業パーティの夜
私はちょっと外の空気を吸おうとベランダに出た。
だがベランダに出た途端、私は見てはいけない物を見てしまった。
そう、私の婚約者と親友が愛を囁いて抱き合ってるとこを…
____________________________________________________
ゆるふわ(?)設定です。
浮気ものの話を自分なりにアレンジしたものです!
2つのエンドがあります。
本格的なざまぁは他視点からです。
*別視点読まなくても大丈夫です!本編とエンドは繋がってます!
*別視点はざまぁ専用です!
小説家になろうにも掲載しています。
HOT14位 (2020.09.16)
HOT1位 (2020.09.17-18)
恋愛1位(2020.09.17 - 20)
私は記憶を2度失った?
しゃーりん
恋愛
街で娘と買い物をしていると、知らない男にいきなり頬を叩かれた。
どうやら私の婚約者だったらしいけど、私は2年間記憶を失っているためわからない。
勝手に罵って去って行った男に聞きたかったのに。「私は誰ですか?」って。
少しして、私が誰かを知る人たちが迎えに来た。伯爵令嬢だった。
伯爵家を訪れた直後に妊娠していることが判明した。え?身に覚えはないのに?
失った記憶に何度も悩まされる令嬢のお話です。
【完結】何も知らなかった馬鹿な私でしたが、私を溺愛するお父様とお兄様が激怒し制裁してくれました!
山葵
恋愛
お茶会に出れば、噂の的になっていた。
居心地が悪い雰囲気の中、噂話が本当なのか聞いてきたコスナ伯爵夫人。
その噂話とは!?
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
公爵令嬢の苦難
桜木弥生
恋愛
公然の場で王太子ジオルドに婚約破棄をされた公爵令嬢ロベリア。
「わたくしと婚約破棄をしたら、後ろ楯が無くなる事はご承知?わたくしに言うことがあるのではございませんこと?」
(王太子の座から下ろされちゃうから、私に言ってくれれば国王陛下に私から頼んだことにするわ。そうすれば、王太子のままでいられるかも…!)
「だから!お嬢様はちゃんと言わないと周りはわからないんですって!」
緊張すると悪役っぽくなってしまう令嬢と、その令嬢を叱る侍女のお話。
そして、国王である父から叱られる王子様のお話。
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる