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51話 俺と私のライバル宣言⑦
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「アンリエッタお嬢様。お茶のお代わりはご用意致しますか?」
「いえ…もういいわ…」
紅茶のポットを持ったユーリンが控えめに聞いてくる。
サラとアラン兄様が話し始めてからすでに一時間は経過しているんじゃないだろうか。
そんな二人をぼーっと見続けているのもアレだからと、お茶を飲む事数杯…いや、すでに十数杯は飲んだかもしれない。正直腹がタポタポしている。
始めのうちは聞かずにお代わりを淹れていたユーリンだけど、流石に飲みすぎているせいかお代わりするか聞き始めてきた。
まぁ、聞かれ始めてすでに五杯は飲んでるんだけど。
そして会話は脱線してきて、何故か二人は『アンリは可愛い』という事を切々と語っている。ってか、この語りですでに三十分は過ぎているだろう…
とりあえずオマエラ。本人いるんだからいい加減にしとけよ、と。
そう言いたいけど、さっき口を挟もうとしたら「アンリは黙っていてくれ!」「アンリ様は黙っていらして!」と、何故か怒られた。
そしてずっと苦笑しながらも聞いているランディス王子は本当に懐が深いというか我慢強い…
ってか、元は俺の剣の話だったはずなんだけど…
途中でサラが「何故剣をさせたくないのですか」と聞いたら「可愛い手にたこができる」だの、「可愛い顔に傷でも付いたらどうするんだ」だのと、可愛いを連呼して俺が剣を扱う事に反対し、それに対してサラも「確かにアンリ様は可愛いですが~」と始まり、今では何故かどっちが俺の事を可愛いと思っているかに発展している。
ぶっちゃけもういい加減にしてほしい…トイレ行きたい…
そろそろこっそりトイレ行って来るかなと席から腰を浮かせた瞬間だった。
鍵を掛けた扉からコンコンと控えめなノックの音がした。
「誰かな?ユーリン、対応を」
兄様がユーリンに命令すると「畏まりました」と扉まで移動して鍵を開けると、扉の外から勢い良く男が入って来た。
「ランディス兄上失礼します!ユーマ・キリター!棄権とはどういう事だ!?」
会場から走って来たのか汗で前髪を額に張り付かせ、ぜぇぜぇと息を切らせながら大声で怒鳴りつけるヒース王子に、ランディス王子は眉を潜めた。
「ヒース。失礼だぞ」
「え?…あ、失礼致しました!!」
兄様を視界に入れたらしく背筋を伸ばすとアラン兄様に対して折り目正しい礼をすると、再度俺に対して向き直り、汗で張り付いた前髪をかき上げながら荒々しい足音で俺の所まで来ると、俺の肩をグッと力を入れて掴む。
「ユーマ、何故棄権なんてしたんだ」
「いっ…」
かなり力を入れられ思わず痛みに声を出すとランディス王子がソファから立ち上がり、俺の肩を掴むヒース王子の手首を掴んだ。
「ヒース…アンリ嬢から手を離せ…」
「は?何を仰っているんですか、兄上。アンリ嬢なんてどこにも「離せ」
かなり怒っているようなランディス王子の剣幕に、俺の肩から手を離すヒース王子の表情は、わけがわからないと言ったように俺とヒース王子を交互に見る。
あぁ。そりゃ、男だと思っていた相手を『嬢』を付けて呼んでるんだからおかしいと思うわな。しかも名前違うし。
手をカツラと地毛の間に差し込み、地毛に付けているカツラのピンを外してカツラを外すと、髪を簡単に手櫛で整えてからソファから立ち上がり淑女の礼を取った。
「大会では名前を変えさせて頂いておりました。ユーマ・キリターこと、グレイス公爵が娘、アンリエッタ・グレイスと申します」
本来は下位の貴族からの挨拶はマナー違反だけど、先に挨拶する方がいいだろうと挨拶をし、顔を上げると口をぽかんと開いているヒース王子がいた。
「あの…ヒース殿下?…」
「…………え…公爵令嬢…え?……女?…」
あまりに愕然としているから、思わず顔の前で手を振ってみるけど反応がない。さっきまで怒っていたランディス王子はその表情を見てか腹抱えてプルプルしてるし…笑いたければ思いっきり笑えばいいと思うんだ。
「申し訳ございません。ヒース殿下。うちの妹がご迷惑をお掛け致しました」
いつの間にかソファから立ち上がって近付いて来ていたアラン兄様がヒース殿下に謝罪をすると、その声が聞こえているのかいないのか、ふらふらとした足取りでヒース王子は部屋から出て行った。
「流石にあのまま放置はできないから俺も失礼するね。ごめんね、アンリ嬢。不躾な弟で。次に会った時にはちゃんと挨拶させるから」
「いえ。私の方が失礼な事をしてしまいましたし…お気になさらず」
いつもの優しそうな表情で俺を覗き込んだランディス王子はヒース王子を追いかけるように部屋から出て行った。
そしてしんと静まり返る部屋の中でアラン兄様が小さく溜息を吐き出す。
「とりあえず帰るか…サラ嬢、もし宜しければまだ話足りない事もありますし、お時間が許すようでしたら当家でいらっしゃいませんか?」
「お誘いありがとうございます。是非お伺いさせて頂きますわ」
まだ話すのか…
まぁ、俺の剣の件はサラに交渉を任せようっと…
「いえ…もういいわ…」
紅茶のポットを持ったユーリンが控えめに聞いてくる。
サラとアラン兄様が話し始めてからすでに一時間は経過しているんじゃないだろうか。
そんな二人をぼーっと見続けているのもアレだからと、お茶を飲む事数杯…いや、すでに十数杯は飲んだかもしれない。正直腹がタポタポしている。
始めのうちは聞かずにお代わりを淹れていたユーリンだけど、流石に飲みすぎているせいかお代わりするか聞き始めてきた。
まぁ、聞かれ始めてすでに五杯は飲んでるんだけど。
そして会話は脱線してきて、何故か二人は『アンリは可愛い』という事を切々と語っている。ってか、この語りですでに三十分は過ぎているだろう…
とりあえずオマエラ。本人いるんだからいい加減にしとけよ、と。
そう言いたいけど、さっき口を挟もうとしたら「アンリは黙っていてくれ!」「アンリ様は黙っていらして!」と、何故か怒られた。
そしてずっと苦笑しながらも聞いているランディス王子は本当に懐が深いというか我慢強い…
ってか、元は俺の剣の話だったはずなんだけど…
途中でサラが「何故剣をさせたくないのですか」と聞いたら「可愛い手にたこができる」だの、「可愛い顔に傷でも付いたらどうするんだ」だのと、可愛いを連呼して俺が剣を扱う事に反対し、それに対してサラも「確かにアンリ様は可愛いですが~」と始まり、今では何故かどっちが俺の事を可愛いと思っているかに発展している。
ぶっちゃけもういい加減にしてほしい…トイレ行きたい…
そろそろこっそりトイレ行って来るかなと席から腰を浮かせた瞬間だった。
鍵を掛けた扉からコンコンと控えめなノックの音がした。
「誰かな?ユーリン、対応を」
兄様がユーリンに命令すると「畏まりました」と扉まで移動して鍵を開けると、扉の外から勢い良く男が入って来た。
「ランディス兄上失礼します!ユーマ・キリター!棄権とはどういう事だ!?」
会場から走って来たのか汗で前髪を額に張り付かせ、ぜぇぜぇと息を切らせながら大声で怒鳴りつけるヒース王子に、ランディス王子は眉を潜めた。
「ヒース。失礼だぞ」
「え?…あ、失礼致しました!!」
兄様を視界に入れたらしく背筋を伸ばすとアラン兄様に対して折り目正しい礼をすると、再度俺に対して向き直り、汗で張り付いた前髪をかき上げながら荒々しい足音で俺の所まで来ると、俺の肩をグッと力を入れて掴む。
「ユーマ、何故棄権なんてしたんだ」
「いっ…」
かなり力を入れられ思わず痛みに声を出すとランディス王子がソファから立ち上がり、俺の肩を掴むヒース王子の手首を掴んだ。
「ヒース…アンリ嬢から手を離せ…」
「は?何を仰っているんですか、兄上。アンリ嬢なんてどこにも「離せ」
かなり怒っているようなランディス王子の剣幕に、俺の肩から手を離すヒース王子の表情は、わけがわからないと言ったように俺とヒース王子を交互に見る。
あぁ。そりゃ、男だと思っていた相手を『嬢』を付けて呼んでるんだからおかしいと思うわな。しかも名前違うし。
手をカツラと地毛の間に差し込み、地毛に付けているカツラのピンを外してカツラを外すと、髪を簡単に手櫛で整えてからソファから立ち上がり淑女の礼を取った。
「大会では名前を変えさせて頂いておりました。ユーマ・キリターこと、グレイス公爵が娘、アンリエッタ・グレイスと申します」
本来は下位の貴族からの挨拶はマナー違反だけど、先に挨拶する方がいいだろうと挨拶をし、顔を上げると口をぽかんと開いているヒース王子がいた。
「あの…ヒース殿下?…」
「…………え…公爵令嬢…え?……女?…」
あまりに愕然としているから、思わず顔の前で手を振ってみるけど反応がない。さっきまで怒っていたランディス王子はその表情を見てか腹抱えてプルプルしてるし…笑いたければ思いっきり笑えばいいと思うんだ。
「申し訳ございません。ヒース殿下。うちの妹がご迷惑をお掛け致しました」
いつの間にかソファから立ち上がって近付いて来ていたアラン兄様がヒース殿下に謝罪をすると、その声が聞こえているのかいないのか、ふらふらとした足取りでヒース王子は部屋から出て行った。
「流石にあのまま放置はできないから俺も失礼するね。ごめんね、アンリ嬢。不躾な弟で。次に会った時にはちゃんと挨拶させるから」
「いえ。私の方が失礼な事をしてしまいましたし…お気になさらず」
いつもの優しそうな表情で俺を覗き込んだランディス王子はヒース王子を追いかけるように部屋から出て行った。
そしてしんと静まり返る部屋の中でアラン兄様が小さく溜息を吐き出す。
「とりあえず帰るか…サラ嬢、もし宜しければまだ話足りない事もありますし、お時間が許すようでしたら当家でいらっしゃいませんか?」
「お誘いありがとうございます。是非お伺いさせて頂きますわ」
まだ話すのか…
まぁ、俺の剣の件はサラに交渉を任せようっと…
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