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6話 俺と私のオトモダチってナンデスカ②
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結局、それでも心配そうにする兄様を王都警備兵達が最終的に引っ張って連れて行った。
さて。一人だ。
いつも「危険だから」と一人では来させて貰えない城下町だ。
誰かと一緒だと何かと気を使ったりであまり好きに見れないから嫌いなんだよな。
街中は今日もいつもと同じように人通りが多く、賑やかな声が響いている。
どこか懐かしい気がするのは、前世で暮らしていた街の商店街に似ているせいかもしれない。
特に、八百屋とかの呼び込みのおっちゃんやおばちゃん達の声が…まぁ、ゲームの中だから仕方ないのかな。作った人も、街のモデルを日本の商店街にしたのかもしれないし。
ここ城下町の大通りに面した表通りには色々な店が立ち並ぶ。
食べ物屋や、宿屋、装飾屋と種類は様々だが、一貫しているのは中央噴水に近くなればなる程高級な商品を扱う店になってくるという事。
例えば、中央噴水に一番近い北東の角の店は今流行りのドレスデザイナーの店舗だったりする。
俺のお母様は何着か持ってるブランドだけど、俺はまだ持ってない。
高いから強請れない。17の小娘が着ていいブランドじゃない。主に金額的に!
そして、忘れちゃいけないのが『裏通り』だ。
裏通りは、表に店を出せない商店の集まりだったりする。
例えば、立ち飲み酒場、安くて粗悪な生鮮品や衣料品店、そして…えっちなお姉さんがいるお店なんかが立ち並んでいるらしい。
お嬢様なアンリエッタは行った事はないが、ユーリンやセイラが教えてくれた。
えっちなお店は…まぁ、うちの男連中が話していたのを聞いたことがある程度だけど。
さて。それはいいとして、髪飾りを探そうか。
とりあえず俺としては、可愛くてアンリに似合えば安くてもいいと思っているので、適当に気になった店に入ろうかな。
今日はおにーたまという財布係もいる事だし、金額は気にしない事にする!
◆◆◆◆◆
さて。何箇所か良い所は回ってみたものの、兄様が全然帰ってこないぞっと…
太陽はすでに真上…ってことは、多分2時間は経過してるかな?
さすがにヒールで2時間ウインドウショッピングはキツイ。
足痛いし、どこかに入りたいけど……よし。いつものお菓子屋に行こう。
貴族の令嬢方に大人気でいつも人が多いけど、伯爵以上の爵位持ちで、その店の会員になっている貴族だけが2階の喫茶スペースに入れる。
会員と言っても会員証なんていうものはなく、名前と生年月日と、会員登録の際に決めた暗号さえ言えばその喫茶スペースが使える。
そしてそこなら個室だし俺が好きなのを知っている兄様なら来てくれるだろうと踏んでいる。
疲れた時は甘いものに限るしな!
俺は疲れた脚を引きずりながら、中央噴水から少し離れた茶色と白の壁のお菓子屋を目指した。
然程距離も無かったのですぐに到着したんだけど…
以前来た時は路地だったはずの、お菓子屋の右隣にあった路地が無くなっている。
そして路地の代わりに真っ黒に塗った木で出来た扉が付いた、小さな小屋のような店がある。
この王都は人が多く立ち入るもんだから、店を構えたい人がいても店を作る場所がなくて、時々こうして元あった路地を潰してその隙間に店を構える人も多くいたりする。
裏通りに大きな店を構えるよりも、表通りの横幅2mくらいの店の方が来店数も収入も大きいらしい。
ただこの店、他の店より大分おかしい。
確かに表通りに面しているから人は入るだろう。けれど、中央噴水よりは少し離れた場所に建っている。
それなのにも拘らず看板がない。
普通は中央噴水から離れているなら、中が判るようにドアがガラス張りであったり、外に看板が出ていて何の店かわかるようにしている。
じゃないと何の店かわからなくて人が入ってこないし。
けれどこの店は立看板もないし、扉も真っ黒に塗りつぶされた木だし。壁も真っ黒に塗られた木で組み上げている。
そして何より、こんなに異質な店なのに誰も気にもしていない。
普通なら、何の店か興味が湧いて通りながらもチラチラ見る人がいたりするものだけど、それすらいない。
まるで俺にしか見えていないみたいに…
さて、どうしたもんか。
気になるっちゃ気になるんだけど…なぁんか嫌な予感がするんだよな…
でも気になる…
時間にして数分考え、結果、その店の扉を開く俺がいた。
◆◆◆◆◆
「どなたかいらっしゃいますか?」
黒い扉をギギィッと重い軋んだ音を響かせながら扉を開く。
中は暗く良く見えないが、奥の方は少し明るい。そして人の気配がする。
「いらっしゃいませ…まじない屋へようこそ」
「!!」
扉のすぐ横から年配の…老婆の声が響く。
ビクっとした!!ビクッとした!!!
人の気配はしてたけど、そんな近くにいると思わなかった!!
「えっと…すみません。表に看板がなかったから何のお店かわからず入ってみましたの」
ドキドキする胸を両手で押さえながら中に入ると、全身を覆う黒いローブを纏った、見た目は優しげな顔の婆ちゃんがロッキングチェアに座ってゆらゆらと揺れていた。
そして『まじないや』って何だろう?
「『まじない屋』っていうのは、その名の通り『呪い』を請合う店さね。
まぁ、呪いだけじゃなく意中の相手の心を向かせる『呪い』もやってるけどね」
俺の胸中を見透かすように、気になった事への答えを教えてくれた婆ちゃんはまるで孫でも見ているかのように優しく、けれども少し憂いを秘めた瞳で俺を見上げた。
なんか…昔の駄菓子屋のばーちゃんに似てるかも…
「…おやまぁ…なんて不思議な星を持った娘さんだろう…」
「!!」
俺を見上げるなりまるで俺の運命を見透かされたような、転生者だと見透かされたように言われ、さっきよりも一際大きく胸が跳ねた。
そしてふと思い出したんだけど…そういや、このゲームにも『まじない屋』はあったな…
『呪い』としての利用じゃなく、『呪い』としての利用だけど。
恋愛対象との親密度を上げるのに恋愛対象者がどこにいるか調べたりとか、『呪い』でほんの少しだけ親密度を上げる事ができるという、ある意味チートな店だった。
俺がプレイした時は金が掛かるから使った事はないけど。
ってことで…ここは俺には用がないようだし、帰るか。
「そうでしたの。では私には用はありませんわね。呪いたい相手も、呪いをする相手もいませんから」
私幸せですオーラを出しながら頬に手を添えて令嬢スマイルをすると、そのまま回れ右をして扉のノブに手を掛け…無い…
ドアノブが無い!!???
何この欠陥住宅!?
「すまないねぇ…お嬢さん…ここは一方通行なんだよ…」
野太いおっさんの声が婆ちゃんからしたと思ったら、ゆらゆらとロッキングチェアに揺れている婆ちゃんの後ろ側の黒いカーテンから屈強な男達が現れた。
今言葉を発したのは先頭に立つ男らしい。そしてその後ろに2人の男も仲間だろう。
服の上から見てもかなりマッチョなのが判る先頭の男の手には小さな短剣が握られていた。
さて。一人だ。
いつも「危険だから」と一人では来させて貰えない城下町だ。
誰かと一緒だと何かと気を使ったりであまり好きに見れないから嫌いなんだよな。
街中は今日もいつもと同じように人通りが多く、賑やかな声が響いている。
どこか懐かしい気がするのは、前世で暮らしていた街の商店街に似ているせいかもしれない。
特に、八百屋とかの呼び込みのおっちゃんやおばちゃん達の声が…まぁ、ゲームの中だから仕方ないのかな。作った人も、街のモデルを日本の商店街にしたのかもしれないし。
ここ城下町の大通りに面した表通りには色々な店が立ち並ぶ。
食べ物屋や、宿屋、装飾屋と種類は様々だが、一貫しているのは中央噴水に近くなればなる程高級な商品を扱う店になってくるという事。
例えば、中央噴水に一番近い北東の角の店は今流行りのドレスデザイナーの店舗だったりする。
俺のお母様は何着か持ってるブランドだけど、俺はまだ持ってない。
高いから強請れない。17の小娘が着ていいブランドじゃない。主に金額的に!
そして、忘れちゃいけないのが『裏通り』だ。
裏通りは、表に店を出せない商店の集まりだったりする。
例えば、立ち飲み酒場、安くて粗悪な生鮮品や衣料品店、そして…えっちなお姉さんがいるお店なんかが立ち並んでいるらしい。
お嬢様なアンリエッタは行った事はないが、ユーリンやセイラが教えてくれた。
えっちなお店は…まぁ、うちの男連中が話していたのを聞いたことがある程度だけど。
さて。それはいいとして、髪飾りを探そうか。
とりあえず俺としては、可愛くてアンリに似合えば安くてもいいと思っているので、適当に気になった店に入ろうかな。
今日はおにーたまという財布係もいる事だし、金額は気にしない事にする!
◆◆◆◆◆
さて。何箇所か良い所は回ってみたものの、兄様が全然帰ってこないぞっと…
太陽はすでに真上…ってことは、多分2時間は経過してるかな?
さすがにヒールで2時間ウインドウショッピングはキツイ。
足痛いし、どこかに入りたいけど……よし。いつものお菓子屋に行こう。
貴族の令嬢方に大人気でいつも人が多いけど、伯爵以上の爵位持ちで、その店の会員になっている貴族だけが2階の喫茶スペースに入れる。
会員と言っても会員証なんていうものはなく、名前と生年月日と、会員登録の際に決めた暗号さえ言えばその喫茶スペースが使える。
そしてそこなら個室だし俺が好きなのを知っている兄様なら来てくれるだろうと踏んでいる。
疲れた時は甘いものに限るしな!
俺は疲れた脚を引きずりながら、中央噴水から少し離れた茶色と白の壁のお菓子屋を目指した。
然程距離も無かったのですぐに到着したんだけど…
以前来た時は路地だったはずの、お菓子屋の右隣にあった路地が無くなっている。
そして路地の代わりに真っ黒に塗った木で出来た扉が付いた、小さな小屋のような店がある。
この王都は人が多く立ち入るもんだから、店を構えたい人がいても店を作る場所がなくて、時々こうして元あった路地を潰してその隙間に店を構える人も多くいたりする。
裏通りに大きな店を構えるよりも、表通りの横幅2mくらいの店の方が来店数も収入も大きいらしい。
ただこの店、他の店より大分おかしい。
確かに表通りに面しているから人は入るだろう。けれど、中央噴水よりは少し離れた場所に建っている。
それなのにも拘らず看板がない。
普通は中央噴水から離れているなら、中が判るようにドアがガラス張りであったり、外に看板が出ていて何の店かわかるようにしている。
じゃないと何の店かわからなくて人が入ってこないし。
けれどこの店は立看板もないし、扉も真っ黒に塗りつぶされた木だし。壁も真っ黒に塗られた木で組み上げている。
そして何より、こんなに異質な店なのに誰も気にもしていない。
普通なら、何の店か興味が湧いて通りながらもチラチラ見る人がいたりするものだけど、それすらいない。
まるで俺にしか見えていないみたいに…
さて、どうしたもんか。
気になるっちゃ気になるんだけど…なぁんか嫌な予感がするんだよな…
でも気になる…
時間にして数分考え、結果、その店の扉を開く俺がいた。
◆◆◆◆◆
「どなたかいらっしゃいますか?」
黒い扉をギギィッと重い軋んだ音を響かせながら扉を開く。
中は暗く良く見えないが、奥の方は少し明るい。そして人の気配がする。
「いらっしゃいませ…まじない屋へようこそ」
「!!」
扉のすぐ横から年配の…老婆の声が響く。
ビクっとした!!ビクッとした!!!
人の気配はしてたけど、そんな近くにいると思わなかった!!
「えっと…すみません。表に看板がなかったから何のお店かわからず入ってみましたの」
ドキドキする胸を両手で押さえながら中に入ると、全身を覆う黒いローブを纏った、見た目は優しげな顔の婆ちゃんがロッキングチェアに座ってゆらゆらと揺れていた。
そして『まじないや』って何だろう?
「『まじない屋』っていうのは、その名の通り『呪い』を請合う店さね。
まぁ、呪いだけじゃなく意中の相手の心を向かせる『呪い』もやってるけどね」
俺の胸中を見透かすように、気になった事への答えを教えてくれた婆ちゃんはまるで孫でも見ているかのように優しく、けれども少し憂いを秘めた瞳で俺を見上げた。
なんか…昔の駄菓子屋のばーちゃんに似てるかも…
「…おやまぁ…なんて不思議な星を持った娘さんだろう…」
「!!」
俺を見上げるなりまるで俺の運命を見透かされたような、転生者だと見透かされたように言われ、さっきよりも一際大きく胸が跳ねた。
そしてふと思い出したんだけど…そういや、このゲームにも『まじない屋』はあったな…
『呪い』としての利用じゃなく、『呪い』としての利用だけど。
恋愛対象との親密度を上げるのに恋愛対象者がどこにいるか調べたりとか、『呪い』でほんの少しだけ親密度を上げる事ができるという、ある意味チートな店だった。
俺がプレイした時は金が掛かるから使った事はないけど。
ってことで…ここは俺には用がないようだし、帰るか。
「そうでしたの。では私には用はありませんわね。呪いたい相手も、呪いをする相手もいませんから」
私幸せですオーラを出しながら頬に手を添えて令嬢スマイルをすると、そのまま回れ右をして扉のノブに手を掛け…無い…
ドアノブが無い!!???
何この欠陥住宅!?
「すまないねぇ…お嬢さん…ここは一方通行なんだよ…」
野太いおっさんの声が婆ちゃんからしたと思ったら、ゆらゆらとロッキングチェアに揺れている婆ちゃんの後ろ側の黒いカーテンから屈強な男達が現れた。
今言葉を発したのは先頭に立つ男らしい。そしてその後ろに2人の男も仲間だろう。
服の上から見てもかなりマッチョなのが判る先頭の男の手には小さな短剣が握られていた。
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