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44、夜遊びのこと
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よいこの寝る準備と、わるいこが夜ふかししてわるい遊びをする話です。
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はやる気持ちを抑えて、弟妹様たちへ事の経緯を説明し、ともあれ夕食を作って食べる。気を付けてはいたのだがやはりここでの生活はストレスだったらしく、3人はいつになくはしゃいで楽しそうだった。食事中の作法を注意するコンラッド様も、今日はどこか優しい。
トルクたちと数回手紙をやり取りし、脱出決行は明日の夜。どうやら具合良く月の肥えた日であるようだ。明るいのは諸刃の剣だけど、真っ暗の中灯りも無しに知らない道を歩くよりはましだろう。
「さ、皆さま! ごちそうさまをしたら早く眠らなければなりませんよ。明日は夜ふかしをするんですから、眠たくても寝られませんからね!」
「はーい!」
「はぁい!」
「分かったわ! 楽しみね」
素直なお返事。大変よろしい。
皆して食器をシンクへ片付け、風呂を沸かすほど水に余裕は無いので温かい濡れタオルで体を拭いた。髪も湿らせてきちんと梳かし、清潔を保つ。余裕は無いけれど、人が見ないからって貴族らしい生活を忘れるのは困る。
なお、そもそも衛生という概念を知らなかったディーンおじさんは服を剥いて石鹸責めの刑に処した。しっかり垢が落ちるまで丸洗いしたので、今ではつやつやのぴかぴかである。
「にいさま、クロード、おやすみー」
「おやすみなさいー」
「お兄様、クロード、おやすみなさい」
「はいおやすみー」
「おやすみなさいませ」
体を清めて寝間着に着替えて、それから歯磨きやら片付けやらを済ませる。そうしたら、この世界ではもうやることなんてあんまりなくて、もったいないからと灯りを落とせば、早々に寝る準備は出来てしまう。
早く寝て明日準備するのだ、と布団に潜り込む弟妹様たちを微笑ましく思いながら、寝かし付けのために横へ座って絵本を取り出すコンラッド様を見る。そろそろ読み聞かせ卒業してもいい頃だと思うんだけど……コンラッド様は弟妹様たちに甘い。
「……なぁ、洗い物終わったんだが、俺今日どこで寝りゃ良いんだ」
ひょこり、と寝室の扉からディーンおじさんが顔を出す。手際が良くってなによりだ。さすがにおじさんを寝室に寝かせるわけにはいかないので出来ればリビングか書庫かで寝てもらいたいのだが……。
「毛布渡しますんで、どっか良い寝床探してもらってもいいです? さすがに寝室に一緒はちょっと」
「おう……警戒心投げ捨ててなくて何よりだ。まあ被るもんくれんならその辺で寝るわ」
予備の毛布を差し出すと、ありがたく受け取られた。おじさん……なかなかに過酷な生活をしていたらしいので、この機会に良い毛布の快適さを知ってほしい。
それじゃあ、とそのまま部屋を出た彼を見送って、洗い物の確認は明日にすることにした。扉を閉め、内側から魔術を掛けて開かないようにする。ディーンさんにも開けられなくなるが、これくらいは仕方がないと思ってもらおう。
「……クロード」
「コンラッド様。皆さん寝られました?」
「うん。僕らもベッド行こ」
するり。後ろからコンラッド様の腕が首を抱くように伸びてきた。私が魔術を掛けている間に、絵本は終わってしまったらしい。
「……なあ、クロード」
「今日は駄目ですよ。ここだと皆さまに声聞こえますし」
ねだるような目で私を見て、ぴったり甘えてくるコンラッド様を引き剥がしてベッドへ座らせる。そこまで寝室は広くないのだ。しかも今日は扉1枚挟んで大人がいる。バレたら私の精神が保たない。
「声我慢すれば大丈夫だろ。僕できる」
「……ほんとですか?」
隣に座って、つんと尖るつやつやの唇を眺める。嫌なわけではない。ここまできたらキスくらいしてもよかろうかな、程度は思ってしまったわけだし。
「ほんと。……じゃあちゅーしよ、クロードも頑張って我慢して」
「…………我慢して、くださいね?」
ぐい、と顔が近付く。大変眼福ではあるのだが、最近コンラッド様はこれについて少々強引過ぎるきらいがある。私が押されて折れるのも良くないのだけれど……癖がつくのは困る。
「っん、ん!?」
こちらから顔を近付け、唇を舐める。肩に手を添えてそっと押し倒し、下唇を食む。甘かった。驚いて上げた声を口移しで飲み込み、開いた歯列から中へ舌を差し込む。
「っは、クロード、」
「しー……我慢、出来るでしょ?」
「…………う、ん」
「よろしい」
仰向けにベッドへ倒れたコンラッド様の上へ被さる。両脇に腕を付いて一旦口を離せば、もう蕩けた声私の名前を呼んだ。耳に口を近付けて囁く。どこか惚けたように私を見上げたコンラッド様は、ややあってこくんと頷いた。
私にだって、歳上の意地がある。今世だって癪なことにそこそこ鍛えられている。やられっぱなしというのは、私だって嫌なのだ。キスくらいなら良かろう? 大人の悪い遊びを教えて差し上げようじゃないか。
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はやる気持ちを抑えて、弟妹様たちへ事の経緯を説明し、ともあれ夕食を作って食べる。気を付けてはいたのだがやはりここでの生活はストレスだったらしく、3人はいつになくはしゃいで楽しそうだった。食事中の作法を注意するコンラッド様も、今日はどこか優しい。
トルクたちと数回手紙をやり取りし、脱出決行は明日の夜。どうやら具合良く月の肥えた日であるようだ。明るいのは諸刃の剣だけど、真っ暗の中灯りも無しに知らない道を歩くよりはましだろう。
「さ、皆さま! ごちそうさまをしたら早く眠らなければなりませんよ。明日は夜ふかしをするんですから、眠たくても寝られませんからね!」
「はーい!」
「はぁい!」
「分かったわ! 楽しみね」
素直なお返事。大変よろしい。
皆して食器をシンクへ片付け、風呂を沸かすほど水に余裕は無いので温かい濡れタオルで体を拭いた。髪も湿らせてきちんと梳かし、清潔を保つ。余裕は無いけれど、人が見ないからって貴族らしい生活を忘れるのは困る。
なお、そもそも衛生という概念を知らなかったディーンおじさんは服を剥いて石鹸責めの刑に処した。しっかり垢が落ちるまで丸洗いしたので、今ではつやつやのぴかぴかである。
「にいさま、クロード、おやすみー」
「おやすみなさいー」
「お兄様、クロード、おやすみなさい」
「はいおやすみー」
「おやすみなさいませ」
体を清めて寝間着に着替えて、それから歯磨きやら片付けやらを済ませる。そうしたら、この世界ではもうやることなんてあんまりなくて、もったいないからと灯りを落とせば、早々に寝る準備は出来てしまう。
早く寝て明日準備するのだ、と布団に潜り込む弟妹様たちを微笑ましく思いながら、寝かし付けのために横へ座って絵本を取り出すコンラッド様を見る。そろそろ読み聞かせ卒業してもいい頃だと思うんだけど……コンラッド様は弟妹様たちに甘い。
「……なぁ、洗い物終わったんだが、俺今日どこで寝りゃ良いんだ」
ひょこり、と寝室の扉からディーンおじさんが顔を出す。手際が良くってなによりだ。さすがにおじさんを寝室に寝かせるわけにはいかないので出来ればリビングか書庫かで寝てもらいたいのだが……。
「毛布渡しますんで、どっか良い寝床探してもらってもいいです? さすがに寝室に一緒はちょっと」
「おう……警戒心投げ捨ててなくて何よりだ。まあ被るもんくれんならその辺で寝るわ」
予備の毛布を差し出すと、ありがたく受け取られた。おじさん……なかなかに過酷な生活をしていたらしいので、この機会に良い毛布の快適さを知ってほしい。
それじゃあ、とそのまま部屋を出た彼を見送って、洗い物の確認は明日にすることにした。扉を閉め、内側から魔術を掛けて開かないようにする。ディーンさんにも開けられなくなるが、これくらいは仕方がないと思ってもらおう。
「……クロード」
「コンラッド様。皆さん寝られました?」
「うん。僕らもベッド行こ」
するり。後ろからコンラッド様の腕が首を抱くように伸びてきた。私が魔術を掛けている間に、絵本は終わってしまったらしい。
「……なあ、クロード」
「今日は駄目ですよ。ここだと皆さまに声聞こえますし」
ねだるような目で私を見て、ぴったり甘えてくるコンラッド様を引き剥がしてベッドへ座らせる。そこまで寝室は広くないのだ。しかも今日は扉1枚挟んで大人がいる。バレたら私の精神が保たない。
「声我慢すれば大丈夫だろ。僕できる」
「……ほんとですか?」
隣に座って、つんと尖るつやつやの唇を眺める。嫌なわけではない。ここまできたらキスくらいしてもよかろうかな、程度は思ってしまったわけだし。
「ほんと。……じゃあちゅーしよ、クロードも頑張って我慢して」
「…………我慢して、くださいね?」
ぐい、と顔が近付く。大変眼福ではあるのだが、最近コンラッド様はこれについて少々強引過ぎるきらいがある。私が押されて折れるのも良くないのだけれど……癖がつくのは困る。
「っん、ん!?」
こちらから顔を近付け、唇を舐める。肩に手を添えてそっと押し倒し、下唇を食む。甘かった。驚いて上げた声を口移しで飲み込み、開いた歯列から中へ舌を差し込む。
「っは、クロード、」
「しー……我慢、出来るでしょ?」
「…………う、ん」
「よろしい」
仰向けにベッドへ倒れたコンラッド様の上へ被さる。両脇に腕を付いて一旦口を離せば、もう蕩けた声私の名前を呼んだ。耳に口を近付けて囁く。どこか惚けたように私を見上げたコンラッド様は、ややあってこくんと頷いた。
私にだって、歳上の意地がある。今世だって癪なことにそこそこ鍛えられている。やられっぱなしというのは、私だって嫌なのだ。キスくらいなら良かろう? 大人の悪い遊びを教えて差し上げようじゃないか。
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