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38、仮眠のこと

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ただただ仮眠を取って起きる回です。
実は珍しい描写。
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 ぱぱっと最低限朝ごはんを整えて、それじゃあよろしくとコンラッド様に任せ、寝室へ向かう。あとはやっておいてくれるはずだ。

「ふぁ……」

 さすがに眠い。明り取りから差し込んでくる光が目に眩しかった。ごはんもあるし、手紙も返事を出したし……朝の身支度は、皆さま全部1人で完璧に出来ている。多少私が寝こけていたって問題はない。

 片付けは後で良かろうと服を投げてなんとか寝間着へ着替え、靴を脱ぎ捨ててベッドへ潜り込む。思ったよりも疲れていたらしい、そのまますとんと意識が落ちた。

ーーーーーーーーーー

 夢は見なかった。いや、見たような気もするが、きっとあんまり良い夢ではなかった。皆さまが気を使ってくれたのか起きることはなく眠って、気持ち良く目が覚めた頃時刻はもう正午を過ぎていた。慌ててベッドから下りて着替える。

 元々眠りは浅い方だ。自我を取り戻した頃から睡眠どころではなかった、と言うのが正しいかもしれない。なのでまあ仮眠くらいで起きられると思っていたのだが……日頃からちゃんと寝ろというアナウンスだろうか。

「あ、おはようクロード」

「おはようございます。すみません……良く寝ました」

「良いよ。大丈夫だったから。まだ寝てても良いぞ」

「いえ、起きます」

 物音で気付いたのだろう、コンラッド様が部屋を覗いて、そのままこちらへやって来た。手紙のこととか、色々やろうと思ってたのに……よしよしと寝癖を直されて、少し恥ずかしい気分だ。

「あ、そうだ。手紙の返事来てたぞ」

「ほんとですか。良かった」

「うん。書斎の窓に入るとこは見えたらしい。ただ、出入り口が結構遠いし、建物あるとこまで距離もあるみたいだ」

「あー……森側でしたもんね、窓の向こう」

 旧砦なら魔術の規格は有名なものだろう。もしかしたらこちらから支持して迎えに来て貰えるかもと思ったのだが……そう甘くはないらしい。人が誰もいないということは無かろう。孤児彼らに砦侵入までやらせるのは酷だ。

「うん。指示欲しいみたいだから、クロードが返事書いてやってくれ」

「分かりました」

 靴を履き直して、2人で部屋を出る。やはり窓からロープでも垂らすか、地道に解析してこじ開けるか……そんなことを考えながらリビングへ。ふわ、と腹の減る匂いがして、おや、と首を傾げる。

「オイ火ぃ使ってるっつってンだろ! イイ子でおすわりしとけ!」

「え?」

 乱暴な言葉。一晩聞き慣れた声。は? と思ってコンラッド様の方を見、早足に台所へ向かう。

「待て! 待てだぞクソガキ共!」

 フライ返しでびしりと弟妹様たちを指すのは、物置きに拘束しておいたはずの元刺客だった。コンラッド様がそんなに警戒心が薄いとは思わなくて、説明が欲しいと振り返る。

「や……なんか良い人そうだったし……ジョンたちが懐いて……。昼ごはん作ってくれるって言うから」

「コンラッド様……」

 懐柔して洗脳掛けようとした私が言うのもなんだが、それはどうなんだろう? ちょっと警戒心が薄すぎやしないだろうか。いや、エプロン付けてフライ返しと皿持ちながらウインナー炒めてるディーンおじさんもなかなかだけども。
 私の周り、吹っ切れ方がエグい人しかいなくないか……? なに……?

「お? あんた起きたのか。メシ食うか?」

「順応しすぎでしょうあなた。……いただきます」

 おじさんの目が私の方を見、当然のように言った。大人しくちょっと離れてちょこんとしゃがんでいた弟妹様たちが、一斉に寄ってくる。かわいい。

 ひとまず、様々の突っ込みを一旦置いておいて、私は彼の作った昼ごはんを食べることにした。
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