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35、夜食のこと
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罪悪感割り増しお夜食の回です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
竹串を刺し、じゃがいもに火が通ったのを確認して火を止める。熱いので清潔な布巾を使って取り出し、少し割り開いて皮を剥く。小皿へ乗せたそれへ塩を少々振り掛けて大ぶりに切ったバターを乗せれば、簡単お夜食の完成。……なお、カロリーは考えないものとする。
「できましたよー」
「わぁい!」
「熱いので気を付けてくださいね」
「はーい」
フォークと一緒に、まずはコンラッド様へ手渡す。ほかほかのじゃがいもと溶けたバターに塩味。罪な食べ物だ。私はクセになると怖いので我慢。おじさん用のを一口味見して、問題ない事を確認した。うん、皮のエグみもないし上手く出来たようだ。
「はい。これおじさんの分です」
「おう…………ッあっつ!」
「おや失礼」
適当に切り分け、おじさんの口元へ差し出す。まあ怪我しなければ良いだろうの精神で給餌しているので多少食べ辛いのは許してほしい。
「ところで、お給料の話なんですけど」
「……僕が酷使されるやつだ」
「よくご存知で」
ちらっとコンラッド様の方を見ながら言えば、もう慣れてきたのか彼はぽつりとこぼした。
食事とかは私がなんとか出来ると思うが……現金は難しい。今ある物を換金してもらうのも限界があるし、怪しまれでもしたら大変だ。コンラッド様が込め直してくれる魔石が、正直1番単価が高くてお手軽な金策である。
「3個くらいか?」
「5個以上は要りますかね」
うえ、と嫌そうな顔をしたコンラッド様に、頑張って、とエールを送る。いまいち状況が掴めていないらしいおじさんへ、2口目を差し出した。
「どのくらい積んだら貴方が寝返ってくれるかなって話をしてるんです」
「あ?」
「そー。チンピラはあんまり役に立たなさそうだけど、おじさんちゃんとした刺客だろ?」
「情報話してくれましたし、帰れないでしょう? ちゃんと事情聞いて、雇われてくれません?」
気に入ったのだろうか。もぐもぐと咀嚼を続ける男は、心底理解出来ないと言いたげに眉を寄せた。その口へじゃがいもを切って運びながら、さあどうやって飴をあげようかと考える。
「……たしかに、失敗した奴は処分されるから……他に帰る場所なんざ……」
黒いネズミの悪い噂は絶えない。トルクたちが得られた眉唾ものだけでも相当物騒だった。実態がどうあれ、これだけ時間が経ってまだ達成出来ていない以上、この男は『失敗』したと見做されるはず。であれば、この拘束された状態から生き残るには、嘘でも方便でも私たちに従った方が得になるはずだ。
口元に差し出すじゃがいもを従順に口へ運びながら、男は思案している。なんだか雛に餌あげてる気分になってきた。
「おじさん、どうする? まだ決めなくても良いよ、話したいことあるなら話していいし、待ってあげる」
「他の皆さまに何も出来ないならしばらく捕まっておいて貰っても良いですしね」
「うん。弟と妹に害がないなら」
にっこり。天使のように笑う。
コンラッド様は笑って、ごちそうさまと手を合わせた。私が差し出す最後の一口をぱくりと口に入れ、男はまた眉を寄せていた。
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竹串を刺し、じゃがいもに火が通ったのを確認して火を止める。熱いので清潔な布巾を使って取り出し、少し割り開いて皮を剥く。小皿へ乗せたそれへ塩を少々振り掛けて大ぶりに切ったバターを乗せれば、簡単お夜食の完成。……なお、カロリーは考えないものとする。
「できましたよー」
「わぁい!」
「熱いので気を付けてくださいね」
「はーい」
フォークと一緒に、まずはコンラッド様へ手渡す。ほかほかのじゃがいもと溶けたバターに塩味。罪な食べ物だ。私はクセになると怖いので我慢。おじさん用のを一口味見して、問題ない事を確認した。うん、皮のエグみもないし上手く出来たようだ。
「はい。これおじさんの分です」
「おう…………ッあっつ!」
「おや失礼」
適当に切り分け、おじさんの口元へ差し出す。まあ怪我しなければ良いだろうの精神で給餌しているので多少食べ辛いのは許してほしい。
「ところで、お給料の話なんですけど」
「……僕が酷使されるやつだ」
「よくご存知で」
ちらっとコンラッド様の方を見ながら言えば、もう慣れてきたのか彼はぽつりとこぼした。
食事とかは私がなんとか出来ると思うが……現金は難しい。今ある物を換金してもらうのも限界があるし、怪しまれでもしたら大変だ。コンラッド様が込め直してくれる魔石が、正直1番単価が高くてお手軽な金策である。
「3個くらいか?」
「5個以上は要りますかね」
うえ、と嫌そうな顔をしたコンラッド様に、頑張って、とエールを送る。いまいち状況が掴めていないらしいおじさんへ、2口目を差し出した。
「どのくらい積んだら貴方が寝返ってくれるかなって話をしてるんです」
「あ?」
「そー。チンピラはあんまり役に立たなさそうだけど、おじさんちゃんとした刺客だろ?」
「情報話してくれましたし、帰れないでしょう? ちゃんと事情聞いて、雇われてくれません?」
気に入ったのだろうか。もぐもぐと咀嚼を続ける男は、心底理解出来ないと言いたげに眉を寄せた。その口へじゃがいもを切って運びながら、さあどうやって飴をあげようかと考える。
「……たしかに、失敗した奴は処分されるから……他に帰る場所なんざ……」
黒いネズミの悪い噂は絶えない。トルクたちが得られた眉唾ものだけでも相当物騒だった。実態がどうあれ、これだけ時間が経ってまだ達成出来ていない以上、この男は『失敗』したと見做されるはず。であれば、この拘束された状態から生き残るには、嘘でも方便でも私たちに従った方が得になるはずだ。
口元に差し出すじゃがいもを従順に口へ運びながら、男は思案している。なんだか雛に餌あげてる気分になってきた。
「おじさん、どうする? まだ決めなくても良いよ、話したいことあるなら話していいし、待ってあげる」
「他の皆さまに何も出来ないならしばらく捕まっておいて貰っても良いですしね」
「うん。弟と妹に害がないなら」
にっこり。天使のように笑う。
コンラッド様は笑って、ごちそうさまと手を合わせた。私が差し出す最後の一口をぱくりと口に入れ、男はまた眉を寄せていた。
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