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23、監禁のこと

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塔の内装紹介と過ごし方の回です。
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「おはよー!」

 3人分の元気な声にそう呼び掛けられて目が覚めたとき、日はもう高く昇っているらしかった。コンラッド様と2人で、なんとなく気まずい気分を隠しながら挨拶をして起き出す。朝食を作らなければならない。

「……クロード」

「……はい」

「あの……ありがと」

 いいえ、と応えはしたが、気まずい。すごく。いや疲れて眠かったとはいえ私はなんであんなこと……普通にやり方お教えしてそっとしといて差し上げたら良かったじゃないか……。

「ねえクロード、お腹空いた」

「あ……ええ、はい。すみません。すぐに朝食をお作りしますね」

 少しばかり申し訳なさそうな声を受けて、慌てて気分を切り替える。ベッドの置いてあった部屋を出て、階段を下りると昨日のまま、外への扉が閉ざされて見えているリビング&台所があった。

 昨日急いで広げたまま放置されている食材たちを見つつ、さて何を作ろうかと考える。

 なお、この塔はそこまで広くはなく、この入ってすぐの広間と寝室の他、風呂トイレが一緒になった水場、物置に使われていたらしき部屋、それから何の資料なのか古い紙束や本でいっぱいの部屋があった。昨日はざっと軽く探検した程度だったので、これから改めて調べてみたいと思う。

「……ねぇ、今日もここでいるの?」

 ぽつり、と問われて、私は固まってしまった。いくら対策をこうじたと言っても、そうすぐに効果があるわけではない。先生たちはなかなか手を出せないだろうし、他の人ならなおさらだ。トルクたちがどれだけ早くここを見つけたとしても、手紙を飛ばして確認を取って貰えるのは数日後に私が来ないと分かってから。それですぐさま家に帰れるのでもないし、まだまだここで耐えねばならない可能性もある。

「そうだぞぉ、今日からしばらくは勉強も宿題もこわーい執事も無し! 兄ちゃんたちと好きなだけ遊べるぞ!」

 机を拭いていたコンラッド様が、ひまわりのように笑って、ことさら明るく答える。そういう言い方もあるのか……と手を止めた私が感心している間に、じゃああれで遊ぼうこれをしようと甘えられたコンラッド様は、昨日のことなんてなかったみたいにいつも通りだ。

「遊ぶのも大切ですけれど、しばらくここが私たちのお城になるのです。きれいに整えてあげなければなりませんよ」

「え、僕たちも掃除すんの」

「当然でございます! きれいにお掃除をした者だけが、この私たちだけのお城を飾り付ける権利を得られるのです」

 まずはキッチンとリビング。それから水場と寝室。コンラッド様たちが生活するのだ、しっかり清潔にしなければならない。私はトルクたちのアジトで多少慣れているし、どうせ証拠集めと探索くらいしかすることもない。お掃除の大変さと楽しさを知ってもらおうと思う。
 ……本来公爵子息には絶対に必要の無い知識だが。

「わかったよ……がんばる」

 さっと作ったサラダと焼いたパンにジャムを塗ってお出ししながら、ちょっとつまらなさそうに唇を尖らせたコンラッド様に、こういう所はまだ子供なんだなと微笑ましく思う。

 リビングの机は少し小さくて、4人で座ると手狭だ。元のお屋敷と比べて全てがコンパクトに完結していて、12年で慣れてしまった感覚だと、ひどく物寂しいようだった。クロードも一緒に、とコンラッド様に促されながら、私は、どこまでも詰めの甘い小市民だということに、まだ気付いていなかった。
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