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11、辻褄のこと

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疑われるのは可能な限り避けたい回です。
短くてすみません
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 さて……予想外に頼もしいことが起きているのだが、午後からは魔術の授業がある。シシリー卿はお若いが優秀な魔術師だ。私みたいな、入門書を修了するのがやっとの奴にも丁寧に教えてくれる。魔術に興味を持つこと自体が嬉しいのか、叱られたことはほとんど無い。優しい人だ。

「それでは若様方、ようございますか」

「はい」

「はい。ありがとうございます、ヘンウッド卿」

 一通り私たちへ貴族のなんたるかを説き、我が国の法や罰則についても軽く触れ、私たちが具体的にどう備えるべきかをいくつか提示したくださったヘンウッド卿は、この後も残ってシシリー卿へ口添えをしてくださるらしい。直接実行するのはみな私たちだが……いたれりつくせりである。

「それでは、そろそろ馬車が着くころですので、お迎えに行ってまいりますね」

「行ってらっしゃい」

 昼食を食べ、お茶を淹れて、ぽつぽつと話をしながら一息ついたころ。そろそろ午後の授業のためにシシリー卿がやって来る時間だ。

「お願いしますね、クロード。ああそうだ、ついでにこれを私の御者に」

 ヘンウッド卿はさらさらと何かを書き付け、私に差し出す。折り畳まれはしなかったから、見ても良かろうかと目をやった。
 先に屋敷へ戻るよう指示が書かれている。はて、シシリー卿と一緒に戻るのだろうか? いつもはもう帰路についているころだし、不自然ではあるが……。

「用心するに越したことはないのですよ。シシリー卿とは知り合いですし、はじめからそういう予定であったことにしてしまいましょう」

「な、なるほど……」

「若様、このくらいは用心せねばなりません。聞けば使用人はほとんど信用ならぬのでしょう。どこから話が漏れるか、分かったものではありませんよ」

「は、はい」

 またぞろ講義の始まりそうな気配がしたので、私は一礼して部屋を出た。弟妹様方は昼食の後も良い子で遊んでいてくれる。聞き分けが良すぎるのも心配だけれど。いや、ありがたいことだと思おう。明日暇があったらたくさん遊んで差し上げなければ。

 紙を手に、御者のいる馬屋へ向かう。レンドル家の馬屋番と話をしていた男はすぐに見つかり、ヘンウッド卿のメモを手渡せばすぐに目を通して頷いた。優秀なようで……とても羨ましい。

「ブルーム様に楽しんで来てくださいとお伝え願えますか。儂はこれでお暇しますのでね」

「はい。承りました。ありがとうございます」

「仕事ですからなぁ」

 優しげな老人はからからと笑い、さっさと馬車の用意をして去って行った。私はそのまま残ってシシリー卿の馬車を待つ。

 時間的にも少しばかり遅かったので、午後の授業に間に合うように、馬車はすぐやって来た。重たげなローブを羽織った若い男性は、窓から私を見つけてくるりと目を開く。

「クロード君。こんにちは」

「こんにちは、シシリー子爵。今日はお迎えにあがりました」

「おや、それはありがとうございます」

 へにゃりと笑うさまはなかなかに頼りない。が、ローブに着られた細身のこの人は、とても優秀な魔術師だ。こんな現状とはいえ公爵家に雇われるほどだもの、その実力は折り紙付き。かつりとブーツを鳴らして馬車から下りた彼は、いつもの丸い眼鏡をそっと触りながら、私に向かって一礼した。

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