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ドロシーと古代魔道具

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教団第十三課《スプリガン》とアスリン・ライヤ

 5年前にジェルは、アスリンと戦った。 古代魔道具の封印と存在隠蔽を目的とした組織からの刺客。

 白い魔導士の彼女は、殺した人間を操ることのできる『生と死のナイフ』という古代魔道具を使い、ジェルを追い詰めた。

「思い出したぞ。あの時――――お前、死んだはずだろ?」

「幸いにも、貴方の仲間に助けられたのよ……あなた、忘れていたの?」

「そうだったけ? じゃ、俺は命の恩人だろ? 立ち位置を間違えてないか」

「――――笑止」とドロシーは杖を振るう。 間合いを無視した斬撃が、彼女の杖に合わせてジェルを襲う。

「ジェルさま!」とトムが助けに入ろうとするも――――

「邪魔させてもらう」

「くっ! レオ・ライオンハートが!」

 その結果、ジェルはドロシーと1対1の対決を余儀なくされた。

「さて……教団第十三課とか、お前がどうしてアスリンの後釜になったのか聞かせてもらうか?」

「あら、よくカッコつけれるわね。そんなに不様に逃げ回っていて」

「……俺が、ただ逃げ回っているだけだと思ったか?」

 ジェル、激しく動き回っていたのは、ある行動を隠すため。

 大げさにドロシーの攻撃を避ける動作に紛れて、小石を蹴り飛ばしていた。

(攻撃を無効化する古代魔道具。しかし――――完全ではない!) 

 ジェルは剣をドロシーに向ける。 再び、刺突を狙う。

「また、同じ攻撃。無駄よ……私の古代魔道具に死角はない!」

「それは、どうかな?」

 ジェルは、動きに緩急をつける。 

 一瞬で間合いを縮める加速力。そして、刺突――――その直前、突きの速度を緩やかに落とした。

「お前の魔道具は、高速で接近してくる攻撃に反応している。 なら、高速でなければ良い」

「あなた、頭が悪くなったの? 遅い攻撃なんで後衛の私だって避けるわ」

「本当にそうかな?」

「え?」とドロシーは驚きを口にした。 確実に避けれたはず、そのジェルの攻撃が胸に触れている。

「なにを――――したの?」

「剣を舐め過ぎだ。 どんなに遅くても、無駄な動作を極限にまで削った技は――――見えていても避けれるものじゃない」

 ドロシーの胸に剣を突き刺した。だが――――

「手ごたえが……いや、心臓がない?」

「いろいろやったのよ」

「なに!?」

「私も強くなるために、いろいろやったわ。今じゃ、すっかり――――怪物よ!」

 ドロシーは杖を振るう。その一撃は老練者の剣士を連想させるほど。

 避けるジェル。 しかし、ドロシーは連撃で追う。

「肉体強化……いや、それで剣の技が使えるはずもない」

「なるほど」とジェルは戦いながらも納得する。 

 古代魔道具を使用した戦闘スタイル。明らかに自分の使い方とは違う。

(教団第十三課《スプリガン》は古代魔道具を封印するために、古代魔道具を使う矛盾した戦闘集団。そこで戦闘を学んだか)

 剣士の技を身に付けたドロシーにどう戦うか? ジェルは少しだけ悩んだ。 

   
 
  
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