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5年後の世界
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たった5年の世界の勢力図は大きく塗り替えられた。
突如として出現した『魔族』を名乗る存在たち。
魔物の特徴を持ちながら、人間と同等の知能を持つ強靭な存在――――人類の敵。
本当に、前触れもなく登場した『魔族』たちは、統率が取れた軍隊のように各国の王城を狙った。
草木も眠る時間帯、闇夜に紛れ、彼等は空からやってきた。
数百の魔族が、空から王城の一番高い所を狙って飛び降りる様子は――――
地獄絵図である。
誰も想定してなかった戦術である。
高き上空から、肉体1つを武器に――――王の命だけを狙う戦術。
歴史上例のない大規模で、派手で、目立つ王族暗殺劇だ。
どれほどの王族が命を奪われ、代替わりをしたか?
暗殺を成功すると鮮やかと言える逃走を成功させた魔族の軍隊。
その現場には、犯行声明のように紙が残され、
『我らは魔族であり、次代の支配者である。人は世界を明け渡し、我らが王であらせられる魔王 ジェル・クロウさまの物とせよ』
そんな人類史に恐怖を刻んだ魔族たち。だから、当然の事に誰もが疑問を浮かべた。
一体、『魔族』とは何なのか? そして――――
『魔王』 ジェル・クロウとは何者なのか?
そして、徐々に情報が集まってくる。
『魔族』たちが、ある場所に――――森の奥地に集まっている。
そこに城があり、『魔王』がいる……と。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「また人間どもとお戯れにならせましたか 魔王様」
若い執事《バトラー》が言う。
片メガネをつけ、モーニングを着こなす執事らしい執事。いかにも……な感じだ。
言うならば、ここは魔王城。その内部といったところ。
「魔王って言っても、基本的には暇だからね。部下が優秀すぎると辛いよ」
「――――」と複雑そうな顔を執事が見せる。
その理由、ジェルが本心から、そう言っていることがわかるからだ。
(なんとお優しい魔王さま……本当は、御自身《おんみずから》が戦場の先頭に立ち、国々の領土を奪い、古代魔道具に向かいたいはず――――)
そんな執事の感情を、感極まって泣き出しそうな様子を感じ取ったのかもしれない。
ジェルは、
「そんな事より、性格が変わり過ぎじゃないのか? あった頃は自分こそが世界の王さまって感じだったのな」
そんな、お道化た表情をみせた。しかし、執事本人は、
「そうでしょうか? そのような自覚はありませんが、我々は『魔族』ですので姿や環境に適応して、性格にも影響が出ている可能性もございましょう」
「そう言う事もあるのか……なら、俺の目的にも使えるか?」
「彼女の死は、肉体の破壊と精神の破壊によるもの……肉体は復元できました。しかし、精神の復元は――――死から復活は、難しいかと思います。古代魔道具の力を使えばあるいは――――」
「うむ」とジェルは頷いた。 最初からわかっていた事だ。
彼女の――――シズクを蘇らせれる可能性があるとしたら古代魔道具を使うしかない。
「精神の復元……魂か……それで? 肉体の方はどうしている?」
「はい、魔王さまのご帰還を聞きつけ、すぐにでも――――おやおや、どうやら扉の前に到着したみたいですね」
執事が言う通り、部屋の扉が開いた。
「おかえりなさいませ、魔王さま」
入って来た人物――――まだ女性は笑みを浮かべてジェルに近づく。
ジェルは「……」と、なぜか不快そうな顔を一瞬だけ見せるも――――
「ただいま、いい子にしていたかい、シズク?」
「はい、魔王さま」
そう答えた少女の髪は炎のように赤く――――その顔は、死んだはずのシズクと同じものをしていた。
突如として出現した『魔族』を名乗る存在たち。
魔物の特徴を持ちながら、人間と同等の知能を持つ強靭な存在――――人類の敵。
本当に、前触れもなく登場した『魔族』たちは、統率が取れた軍隊のように各国の王城を狙った。
草木も眠る時間帯、闇夜に紛れ、彼等は空からやってきた。
数百の魔族が、空から王城の一番高い所を狙って飛び降りる様子は――――
地獄絵図である。
誰も想定してなかった戦術である。
高き上空から、肉体1つを武器に――――王の命だけを狙う戦術。
歴史上例のない大規模で、派手で、目立つ王族暗殺劇だ。
どれほどの王族が命を奪われ、代替わりをしたか?
暗殺を成功すると鮮やかと言える逃走を成功させた魔族の軍隊。
その現場には、犯行声明のように紙が残され、
『我らは魔族であり、次代の支配者である。人は世界を明け渡し、我らが王であらせられる魔王 ジェル・クロウさまの物とせよ』
そんな人類史に恐怖を刻んだ魔族たち。だから、当然の事に誰もが疑問を浮かべた。
一体、『魔族』とは何なのか? そして――――
『魔王』 ジェル・クロウとは何者なのか?
そして、徐々に情報が集まってくる。
『魔族』たちが、ある場所に――――森の奥地に集まっている。
そこに城があり、『魔王』がいる……と。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「また人間どもとお戯れにならせましたか 魔王様」
若い執事《バトラー》が言う。
片メガネをつけ、モーニングを着こなす執事らしい執事。いかにも……な感じだ。
言うならば、ここは魔王城。その内部といったところ。
「魔王って言っても、基本的には暇だからね。部下が優秀すぎると辛いよ」
「――――」と複雑そうな顔を執事が見せる。
その理由、ジェルが本心から、そう言っていることがわかるからだ。
(なんとお優しい魔王さま……本当は、御自身《おんみずから》が戦場の先頭に立ち、国々の領土を奪い、古代魔道具に向かいたいはず――――)
そんな執事の感情を、感極まって泣き出しそうな様子を感じ取ったのかもしれない。
ジェルは、
「そんな事より、性格が変わり過ぎじゃないのか? あった頃は自分こそが世界の王さまって感じだったのな」
そんな、お道化た表情をみせた。しかし、執事本人は、
「そうでしょうか? そのような自覚はありませんが、我々は『魔族』ですので姿や環境に適応して、性格にも影響が出ている可能性もございましょう」
「そう言う事もあるのか……なら、俺の目的にも使えるか?」
「彼女の死は、肉体の破壊と精神の破壊によるもの……肉体は復元できました。しかし、精神の復元は――――死から復活は、難しいかと思います。古代魔道具の力を使えばあるいは――――」
「うむ」とジェルは頷いた。 最初からわかっていた事だ。
彼女の――――シズクを蘇らせれる可能性があるとしたら古代魔道具を使うしかない。
「精神の復元……魂か……それで? 肉体の方はどうしている?」
「はい、魔王さまのご帰還を聞きつけ、すぐにでも――――おやおや、どうやら扉の前に到着したみたいですね」
執事が言う通り、部屋の扉が開いた。
「おかえりなさいませ、魔王さま」
入って来た人物――――まだ女性は笑みを浮かべてジェルに近づく。
ジェルは「……」と、なぜか不快そうな顔を一瞬だけ見せるも――――
「ただいま、いい子にしていたかい、シズク?」
「はい、魔王さま」
そう答えた少女の髪は炎のように赤く――――その顔は、死んだはずのシズクと同じものをしていた。
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