上 下
93 / 144

ジェルたちの『北国迷宮』攻略④

しおりを挟む
 封印されていた怪物。

 『特別怪物』とは違う。上手く説明する言葉が見つからないが……何か、根本的に違う古代の魔物。

 まだ動かない。 本当に生きているのか?

 だが、それでも感じられるものがある。それは圧力だ。

 ただ立っているだけ――――それだけでも尋常ではない圧力が感じられる。

「これは……完全に封印は解かれてない」

「助かったのか?」と言葉を続けるジェル。 思考は、この封印を解こうとした襲撃者に向かう。

(明らかったに狙いは部屋の奥……隠し部屋の存在をしていて公開しなかった人物? ……レオではないのか。だとしたら、俺やシズクに悪意を向ける人物は――――いるのか?)

 ジェルには、心当たりがなかった。そんなジェルにシズクは――――

「おい、それでどうする? 今は、コイツが動き出す前に再封印するチャンスだろ?」

「あぁ、そうだ。氷魔法で封印を強化させて――――それから、冒険者ギルドに報告だ」

 ジェルとシズクは同時に手を向けて魔法を唱えた。

『ホワイトエッジ』

 放たれた氷系の魔法。 氷柱に封印された怪物に放たれる。

 しかし、その直後だ。 怪物から、勢いよく吹き出された白い煙が2人の視界を覆った。

「なんだこれは! これは――――熱気? 水蒸気だと!」

 つまり、急激に氷が溶かされているという事実。 

「コイツはヤバイぜ! 圧力が増してきてやがる。魔法を放ち続ければいいのか、ジェル!?」

「――――いや、もう手遅れみたいだ」


 彼の言う通りだ。 白で視界が殺された中、黄色い光が見える。

 怪物の目が黄色く光っている。 それに奇妙な音が続く。

 まるで、機械系魔物が鳴らすの起動音。 

(あぁ、カメカメしいと言うよりも、メカメカしい存在だったのか)

 そんな馬鹿馬鹿しい感想を抱くほど、ジェルは正常な判断力を奪われていた。

 そんな怪物―――― フロスト・ジェネラルは動き始めた。

「来るぞ、ジェル! 備えよ!」

 シズクの声に反射的に前に出るジェル。 両手には古代魔道具『妖刀 ムラサメ』と『名刀コテツ』

 ジェルとシズクの2人共、前衛として適正は強い。

 しかし、1人――――あるいは1匹の強者相手に前衛2人が同時に攻め込むのは有効とは言えない。

 だから、事前にジェルが前衛。

シズクは、準前衛から中衛と後衛と全領域《オールレンジ》の戦闘ができるように2人で訓練してきた。

 正常さが失われている事を自覚しているジェルだったが、その厳しい訓練が彼を戦場で動かした。

「――――ッ! この」とジェルは斬りつける。

 自身よりも一回り大きい怪物――――霜の将軍フロスト・ジェネラル

 両手の長い長い爪は黒い剣に見える。 あるいは、本当に爪ではなく戦闘用の金属なのかもしれない。

 ジェルと将軍。 剣と剣がぶつかり合う。

 『名刀コテツ』の武器破壊は発動しない。 接触した瞬間に読み取った金属情報は――――『 errorエラー
  
 その情報は『名刀コテツ』の持ち主であるジェルにも伝わる(どういう理屈で情報が伝達させているのかは不明だが)。

 ジェルは―――――

(つまり将軍の武器は未知の物質か――――本当に厄介な、怪物だな!)

 混乱していた頭が正常に回復した。  戦うしかない……そう覚悟を決めたからだ。

 どうするべきか? ジェルは作戦を組み立て始める。 

 体格の差は、力の差である。 打ち合うのは不利。  

「――――だったら!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛する家族を勇者パーティーに惨殺された少年、【最強の魔剣】と【七大魔人の仲間】を手に入れ、勇者パーティーと世界の全てにざまぁ復讐していく

ハーーナ殿下
ファンタジー
 少年ラインは改心した魔族の元王女と、人族男性の間に生まれた子。人里離れた山奥で、美しい母親と幸せに暮らしていた。  だが合法の《魔族狩り》に来た残虐な六人の勇者によって、幸せな生活は一瞬で崩壊。辛うじて生き残ったラインは、見るも無残な母の亡骸の前で血の涙を流す。魔族公爵の叔父に拾われ、復讐のため魔界の七大試練に挑む。  時は流れ十四歳になったラインは、勇者育成学園に身分を隠し入学。目的は教師となった六人の勇者への完全な復讐。  これは最強の魔の力を会得した少年が、勇者候補を演じながら、勇者と世界を相手に復讐していく物語である。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

勇者、囚われました。

茶葉茸一
ファンタジー
魔王の勘違いにより、姫様と間違わられて攫われた勇者。 囚われの身となった勇者を救出に向かう姫(女騎士)率いるパーティのメンバーたち。 本来なら違う立場で出会うはずだった魔王と勇者の2人は、それぞれの『目的』のために姫を拉致し勇者と入れ替える『姫様拉致計画』を企てる。 一方で魔王、ではなく勇者が放った刺客たちが姫パーティへと襲い掛かる! 果たして勇者たちは姫を攫うことが出来るのか! 姫たちは勇者を取り戻すことが出来るか! 変態女装癖のオトコの娘勇者と小心者で頼りないダメ魔王による、殺伐ファンタジーギャグコメディが始まる!! ※昔書いたものをとくに修正なく掘り起こしただけなので6話で完結します。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...