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北の国の冒険者ギルド
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異国の地だ。
ジェルたちが生活の基盤とする国から馬車で数日で到着する距離。
寒い。 まるで1年が冬の国だ。
この国にも冒険者ギルドがある。冒険者として活動するためには、一時的な登録をしなければならない。
「――――ダンジョン探索の目的は資材集め。B級冒険者が受ける依頼としては不可解と言わざる得ませんね」
受付嬢は、資料を射抜くような視線で厳しくチェックする。
ジェルたちが利用する受付嬢に似ていた。
冒険者ギルドに就職して、受付嬢の仕事を得るには、服装や髪型だけではなく、もっと……こう…… 外見的な評価基準が存在しているのかもしれない。
「B級冒険者と言っても過去に所属していたパーティのランクだ。今は、新人と2人組の冒険者として活動している。それに、俺は斥候だから、高い戦闘技術もない」
受付嬢からは疑いの眼差し。 ジェルは、ジト目で観察をされている。
「なるほど……そうは見えませんが、何か理由があるのでしょ? 許可いたします」
「え? いいのか?」とジェルは驚いた。
許可が下りずに、弾かれる可能性を考えていたからだ。
もっとも、だからと言って国に帰らず、無許可で活動をするつもりだったのだが……
受付嬢は視線をジェルから外すと
「……あ」と小さな声で呟いた。
「え? 今、なんて?」
すると受付嬢は、少し照れたような表情に変わった。
「……姉がお世話になっているみたいなので」
「姉? 姉ってもしかして――――」
「そちらの国で冒険者ギルドの受付嬢として働いているのは、私の姉です」
「あっ……なるほど、通りで似ているはずだ」
「冒険者ギルドからの推薦文には、姉から一言添えられていました。……どうも、無茶な姉が迷惑をかけている様子なので……」
「いや、そんな事はないよ。いつも助けられているのは、こっちの方さ」
「そうですね。義理の兄になる人にそう言われると救われます」
「……義理の兄?」
「え? 違うのですか? 姉からは、そう……そうですか。また、お姉ちゃんは私をからかって遊んでいるのですね!」
「……」
「……し、失礼しました」と受付嬢は、冷静さを取り戻した。それから、
「こちらの『北国迷宮』の探索を行うと言う事で間違いありませんね? それでは、探索の拠点となる場所への案内人を紹介しましょう」
「拠点? 案内人?」
「ダンジョンは町から離れた場所にあり、寒気が近づけば移動も困難になるために、近くに活動拠点となる小屋を用意しています」
「そうなのか。それは知らなかったなぁ」
「……事前に冒険者ギルド側から申告もしています。こちらの資料では、ジェルさんも了承されている事になっています。大丈夫ですか? 短期とは言え、小屋の家賃も安くはないですよ?」
「ん~ もちろん払うよ。野宿してら死んじゃいそうな季候だからね」
「いえ、そう言う事ではありません。姉に言われるままに資料にサインして、金づるにされているのではないかと――――」
受付嬢は途中で声を止める。
「受付嬢さん、もう良いじゃろうか?」
老人のドワーフが待っていたからだ。
「兄ちゃんが、冒険者か? ワシが案内人のトムじゃ」
「よろしく」と差し出された手を、ジェルは反射的に握り返していた。
ジェルたちが生活の基盤とする国から馬車で数日で到着する距離。
寒い。 まるで1年が冬の国だ。
この国にも冒険者ギルドがある。冒険者として活動するためには、一時的な登録をしなければならない。
「――――ダンジョン探索の目的は資材集め。B級冒険者が受ける依頼としては不可解と言わざる得ませんね」
受付嬢は、資料を射抜くような視線で厳しくチェックする。
ジェルたちが利用する受付嬢に似ていた。
冒険者ギルドに就職して、受付嬢の仕事を得るには、服装や髪型だけではなく、もっと……こう…… 外見的な評価基準が存在しているのかもしれない。
「B級冒険者と言っても過去に所属していたパーティのランクだ。今は、新人と2人組の冒険者として活動している。それに、俺は斥候だから、高い戦闘技術もない」
受付嬢からは疑いの眼差し。 ジェルは、ジト目で観察をされている。
「なるほど……そうは見えませんが、何か理由があるのでしょ? 許可いたします」
「え? いいのか?」とジェルは驚いた。
許可が下りずに、弾かれる可能性を考えていたからだ。
もっとも、だからと言って国に帰らず、無許可で活動をするつもりだったのだが……
受付嬢は視線をジェルから外すと
「……あ」と小さな声で呟いた。
「え? 今、なんて?」
すると受付嬢は、少し照れたような表情に変わった。
「……姉がお世話になっているみたいなので」
「姉? 姉ってもしかして――――」
「そちらの国で冒険者ギルドの受付嬢として働いているのは、私の姉です」
「あっ……なるほど、通りで似ているはずだ」
「冒険者ギルドからの推薦文には、姉から一言添えられていました。……どうも、無茶な姉が迷惑をかけている様子なので……」
「いや、そんな事はないよ。いつも助けられているのは、こっちの方さ」
「そうですね。義理の兄になる人にそう言われると救われます」
「……義理の兄?」
「え? 違うのですか? 姉からは、そう……そうですか。また、お姉ちゃんは私をからかって遊んでいるのですね!」
「……」
「……し、失礼しました」と受付嬢は、冷静さを取り戻した。それから、
「こちらの『北国迷宮』の探索を行うと言う事で間違いありませんね? それでは、探索の拠点となる場所への案内人を紹介しましょう」
「拠点? 案内人?」
「ダンジョンは町から離れた場所にあり、寒気が近づけば移動も困難になるために、近くに活動拠点となる小屋を用意しています」
「そうなのか。それは知らなかったなぁ」
「……事前に冒険者ギルド側から申告もしています。こちらの資料では、ジェルさんも了承されている事になっています。大丈夫ですか? 短期とは言え、小屋の家賃も安くはないですよ?」
「ん~ もちろん払うよ。野宿してら死んじゃいそうな季候だからね」
「いえ、そう言う事ではありません。姉に言われるままに資料にサインして、金づるにされているのではないかと――――」
受付嬢は途中で声を止める。
「受付嬢さん、もう良いじゃろうか?」
老人のドワーフが待っていたからだ。
「兄ちゃんが、冒険者か? ワシが案内人のトムじゃ」
「よろしく」と差し出された手を、ジェルは反射的に握り返していた。
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