66 / 144
幽霊屋敷を調査しよう④
しおりを挟む
「さて……さっき、吹っ飛ばした幽霊少女がボスみたいな感じだったけど……どうする、ジェル?」
「ん~ 少しわからない事があるんだよね」
「へぇ? それは、なんだ?」
「人の気配がない」
「それは当たり前だろ? 幽霊屋敷なんだから」
「いや、そもそも依頼は、行方不明になっている借金取りの捜索。それも7人だ。でも……」
「人間がいる痕跡がない?」
「そうだ」とジェルは頷く。
屋敷の床には埃が積み重ねられている。
しかし、足跡はもちろん、何かを引きづった跡もない。
それに、通路の多くには蜘蛛の巣がある。 屋敷内に何かの生物――――人間を含めて、実態を有する生物がいるならば、蜘蛛の巣を破壊せずに移動する事は困難だろう。
「もしかして、ギルドの受付嬢に騙されたんじゃねぇのか?」
少し悪態を込められたシズクの呟き。ジェルは「……」と無言で返した。
確かに、冒険者の有益な情報だからといって、勤務の範囲外で依頼を持ってくるだろうか?
それに不思議な事があった。
あの時の事を詳細に思い出そうとすると――――受付嬢の顔が思い出せないのだ。
(アレは本当に俺たちの知っている受付嬢だったのだろうか? どうして顔が思い出せない――――いや、そもそもあの時の受付嬢は、首の上に頭が――――)
「おい、ジェル!」
「え? なに?」
「いや、お前……顔が真っ青だぜ? 悪い物に憑かれたじゃないか?」
「そんな事は……わからない」
「うん、それじゃ選択肢は2つだ」
「2つ?」
「あぁ、このまま安全を優先して帰宅するか――――この幽霊屋敷を破壊するか」
「破壊って……」
「臭いがするんだ。これは湿気を含んだ臭い……水がある。それも大量に―――」
シズクは、先行して歩いて行く。彼女の目の前には壁。
何も特別な仕掛けがあるようにも見えない普通の壁だ。
それをシズクは手にした武器――――大剣を叩きつけるように振るった。
破壊音。
崩れていく壁。その奥には――――
「隠し階段。ここから1階に? いや、もっと下に?」
「さぁね? そこまではわかんねぇよ。――――さぁ? どうする?」
「進むか? 戻るか? もちろん、例え罠でも行くさ」
「よし、よく言った」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
回る。 回る。 回る螺旋階段。
徐々に壁から聞こえる異音が大きくなっていく。
それは水の音。 しかし、不可解。
なんのために? 屋敷の下る階段を隠して、横には大量の水を流している。
考えれるのは――――
「シズク、少し止まってくれ。地図を見る」
ジェルが取り出した地図は、屋敷の見取り図ではない。
この周辺の土地が記載された普通の地図だ。
「近くに川か池が……あるな。ここから水を引いている」
「へぇ、そいつはつまり?」
「水の力を動力に――――おそらく水車で、何かを作ってる」
「なるほど」とシズクが地図を取り出す。ジェルとは違い、今度は屋敷の見取り図。
それに、なにやら書きこんでいく。
「コイツは良くないぜ。水は霊を呼び寄せる。それを螺旋状に回していく――――コイツは儀式的だ」
シズクは、地図を完成させると、こう続けた。
「もっとも、住んでた貴族さまは悪霊を呼び寄せたり、生み出したりする目的じゃなかったかもしれねぇが……後ろめたい感情。隠しておきたい物事にアイツ等はつけ入ってくる」
「それじゃ、この先には?」
「何を作ってたは知らないが……とんでもない魔物が居座っているって事だ」
「ん~ 少しわからない事があるんだよね」
「へぇ? それは、なんだ?」
「人の気配がない」
「それは当たり前だろ? 幽霊屋敷なんだから」
「いや、そもそも依頼は、行方不明になっている借金取りの捜索。それも7人だ。でも……」
「人間がいる痕跡がない?」
「そうだ」とジェルは頷く。
屋敷の床には埃が積み重ねられている。
しかし、足跡はもちろん、何かを引きづった跡もない。
それに、通路の多くには蜘蛛の巣がある。 屋敷内に何かの生物――――人間を含めて、実態を有する生物がいるならば、蜘蛛の巣を破壊せずに移動する事は困難だろう。
「もしかして、ギルドの受付嬢に騙されたんじゃねぇのか?」
少し悪態を込められたシズクの呟き。ジェルは「……」と無言で返した。
確かに、冒険者の有益な情報だからといって、勤務の範囲外で依頼を持ってくるだろうか?
それに不思議な事があった。
あの時の事を詳細に思い出そうとすると――――受付嬢の顔が思い出せないのだ。
(アレは本当に俺たちの知っている受付嬢だったのだろうか? どうして顔が思い出せない――――いや、そもそもあの時の受付嬢は、首の上に頭が――――)
「おい、ジェル!」
「え? なに?」
「いや、お前……顔が真っ青だぜ? 悪い物に憑かれたじゃないか?」
「そんな事は……わからない」
「うん、それじゃ選択肢は2つだ」
「2つ?」
「あぁ、このまま安全を優先して帰宅するか――――この幽霊屋敷を破壊するか」
「破壊って……」
「臭いがするんだ。これは湿気を含んだ臭い……水がある。それも大量に―――」
シズクは、先行して歩いて行く。彼女の目の前には壁。
何も特別な仕掛けがあるようにも見えない普通の壁だ。
それをシズクは手にした武器――――大剣を叩きつけるように振るった。
破壊音。
崩れていく壁。その奥には――――
「隠し階段。ここから1階に? いや、もっと下に?」
「さぁね? そこまではわかんねぇよ。――――さぁ? どうする?」
「進むか? 戻るか? もちろん、例え罠でも行くさ」
「よし、よく言った」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
回る。 回る。 回る螺旋階段。
徐々に壁から聞こえる異音が大きくなっていく。
それは水の音。 しかし、不可解。
なんのために? 屋敷の下る階段を隠して、横には大量の水を流している。
考えれるのは――――
「シズク、少し止まってくれ。地図を見る」
ジェルが取り出した地図は、屋敷の見取り図ではない。
この周辺の土地が記載された普通の地図だ。
「近くに川か池が……あるな。ここから水を引いている」
「へぇ、そいつはつまり?」
「水の力を動力に――――おそらく水車で、何かを作ってる」
「なるほど」とシズクが地図を取り出す。ジェルとは違い、今度は屋敷の見取り図。
それに、なにやら書きこんでいく。
「コイツは良くないぜ。水は霊を呼び寄せる。それを螺旋状に回していく――――コイツは儀式的だ」
シズクは、地図を完成させると、こう続けた。
「もっとも、住んでた貴族さまは悪霊を呼び寄せたり、生み出したりする目的じゃなかったかもしれねぇが……後ろめたい感情。隠しておきたい物事にアイツ等はつけ入ってくる」
「それじゃ、この先には?」
「何を作ってたは知らないが……とんでもない魔物が居座っているって事だ」
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる