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 幽霊屋敷を調査しよう④

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「さて……さっき、吹っ飛ばした幽霊少女がボスみたいな感じだったけど……どうする、ジェル?」

「ん~ 少しわからない事があるんだよね」

「へぇ? それは、なんだ?」

「人の気配がない」

「それは当たり前だろ? 幽霊屋敷なんだから」

「いや、そもそも依頼は、行方不明になっている借金取りの捜索。それも7人だ。でも……」

「人間がいる痕跡がない?」

「そうだ」とジェルは頷く。

 屋敷の床には埃が積み重ねられている。

 しかし、足跡はもちろん、何かを引きづった跡もない。

 それに、通路の多くには蜘蛛の巣がある。 屋敷内に何かの生物――――人間を含めて、実態を有する生物がいるならば、蜘蛛の巣を破壊せずに移動する事は困難だろう。

「もしかして、ギルドの受付嬢に騙されたんじゃねぇのか?」

 少し悪態を込められたシズクの呟き。ジェルは「……」と無言で返した。

 確かに、冒険者の有益な情報だからといって、勤務の範囲外で依頼を持ってくるだろうか?

 それに不思議な事があった。

 あの時の事を詳細に思い出そうとすると――――受付嬢の顔が思い出せないのだ。

(アレは本当に俺たちの知っている受付嬢だったのだろうか? どうして顔が思い出せない――――いや、そもそもあの時の受付嬢は、首の上に頭が――――)

「おい、ジェル!」

「え? なに?」

「いや、お前……顔が真っ青だぜ? 悪い物に憑かれたじゃないか?」

「そんな事は……わからない」

「うん、それじゃ選択肢は2つだ」

「2つ?」

「あぁ、このまま安全を優先して帰宅するか――――この幽霊屋敷を破壊するか」

「破壊って……」

「臭いがするんだ。これは湿気を含んだ臭い……水がある。それも大量に―――」

 シズクは、先行して歩いて行く。彼女の目の前には壁。

 何も特別な仕掛けがあるようにも見えない普通の壁だ。

 それをシズクは手にした武器――――大剣を叩きつけるように振るった。

 破壊音。

 崩れていく壁。その奥には――――

「隠し階段。ここから1階に? いや、もっと下に?」

「さぁね? そこまではわかんねぇよ。――――さぁ? どうする?」

「進むか? 戻るか? もちろん、例え罠でも行くさ」

「よし、よく言った」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

 回る。 回る。 回る螺旋階段。

 徐々に壁から聞こえる異音が大きくなっていく。

 それは水の音。 しかし、不可解。

 なんのために? 屋敷の下る階段を隠して、横には大量の水を流している。

 考えれるのは――――

「シズク、少し止まってくれ。地図を見る」

 ジェルが取り出した地図は、屋敷の見取り図ではない。

 この周辺の土地が記載された普通の地図だ。

「近くに川か池が……あるな。ここから水を引いている」

「へぇ、そいつはつまり?」

「水の力を動力に――――おそらく水車で、何かを作ってる」

「なるほど」とシズクが地図を取り出す。ジェルとは違い、今度は屋敷の見取り図。

 それに、なにやら書きこんでいく。

「コイツは良くないぜ。水は霊を呼び寄せる。それを螺旋状に回していく――――コイツは儀式的だ」

 シズクは、地図を完成させると、こう続けた。

「もっとも、住んでた貴族さまは悪霊を呼び寄せたり、生み出したりする目的じゃなかったかもしれねぇが……後ろめたい感情。隠しておきたい物事にアイツ等はつけ入ってくる」

「それじゃ、この先には?」

「何を作ってたは知らないが……とんでもない魔物が居座っているって事だ」  
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