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ワイバーンの死と再生

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 音。

 ワイバーンが地面に衝突する音。

 そして、ジェルが放ったファイアボールが叩き込まれた音。

 直撃。 火炎の赤は、周囲を赤く染めていく。

「やったか?」とシズク。

 ワイバーンと共に落下していた彼女は、直前に離脱していた。

「……」とジェルは答えなかった。

(何か魔法に抵抗する手段がなければ、耐えれる魔物はいない。けど、むしろ――――)

 彼は、今も燃え続ける自身の魔法を睨み、武器を構え続ける。

 その様子にシズクも、

(倒しきったはず、殺しきったはず、生きてるはずがない。それでもお前が警戒を止めないというなら――――無論、私だった付き合うぜ)

 常識を捨て去り、彼女も大剣を構え直すと警戒を強めていく。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

 どのくらいの時間が経過しただろうか? 長い気もすれば、短かった気もする。

 燃え盛っていたはずの魔法はすでに鎮火。

 その跡は黒く塗りつぶされ、生命も残る様子は――――

「シズク……」

「わかっている。まだ何か残っていやがる!」

 シズクは牽制のため、魔法攻撃を放つ。

雷光の槍ライトニングジェベリン』」 

 それと同時に、接近戦へ飛び込んでいった。
 
 しかし――――

「魔法が弾かれた!? 魔法だけじゃない。私の剣も――――なんだ、この手ごたえは!?」

 残っていたのは黒い山。 何かが燃えた跡――――そこに振り下ろしたはずの大剣からは、ないはずの手ごたえ。奇妙な感触をシズクは感じた。

 そして、接近した彼女は見た。 

 僅かに残る火種。それが――――

「――――ッ! 火を吸収してやがる。いやコイツはしてやがった。

「何を―――― 一度、離れろシズク。圧力が増している」

 ジェルの言葉通り、シズクは後ろに飛んだ。

 その直後だった。彼女が立っていた場所は、突如として業火に包まれた。

「やっぱり、生きていたのか」とジェル。シズクは――――

「気をつけろ。こいつはワイバーンじゃない。――――いや、正確にはワイバーンじゃなくなったってところか」

「ワイバーンじゃなくなった? 戦闘や成長の過程で変化や進化する魔物の存在は聞いた事はあるが……」

「変化とか、進化とか、そんな温いもんじゃないぜ。コイツは、この正体は――――」

 シズクの声よりも早く、ソイツは――――かつてワイバーンの王として君臨していた個体は姿を見せる。

 もはや、ワイバーンではなくなった姿。

 全身に受けた炎。焼け落ちた肉体。

 それらは儀式と同等だった。

 伝説の魔物を生み出すために儀式だ。

 今も燃え続ける炎を両翼に纏い――――翼だけではなく、全身が火で纏っている。

 炎の鳥。

 彼の個体は、ワイバーンではなく炎の鳥――――

 すなわち、不死鳥《フェニックス》に生まれ変わったのだ。
 

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