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特別怪物

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「チッ!」と舌打ちを1つ。それから、レオは俺を掴んでいた腕を外す。

「おい、ジェル。あまり、俺を舐めるなよ? 次はないからな」

「……あぁ、ごめん」と頭を下げる。

「クズめ。急いでゴブリンを追跡しろ。その先に目的の特別怪物《エクストラモンスター》がいるに違いないからな」

「――――」と無言で俺はゴブリンを追う。

 だが、内心では

(クソっ! クソっ! クソっ!)

 怒りよりも情けなさが感情を支配する。 そして――――

(もういい。これが、この依頼が終わったら、俺は抜ける。別の仲間を見つけて、別の土地で冒険者を続けるんだ!)

 そんな事を考えながらゴブリンを追う。 前を走るゴブリンは俺の事に気づいてないはず。

 足音のしない走行術。 それでいて悪路は、四足の魔物を追跡できるほどに俺は速い。

 そして――――

「くっ……これは」とゴブリンを追って、とんでもないものを見てしまった。

 それは、武装したゴブリンの軍勢。 

「馬鹿な。コイツ等……どこで、上等そうな剣や鎧を?」

 全員が全員、武装しているわけではないが……

(ヤバそうなのは、鉄の鎧に身を包んだホブゴブリン。魔力上昇の杖を持っているゴブリンメイジ……)

 そして俺は見た。 軍勢の真ん中で座っている1匹のゴブリン。

 赤い目をしている。

「間違いない。あれが特別怪物《エクストラモンスター》だ」 

 そして、その赤い目が動いて、俺を捉える。

「――――っ! 見つかったのか? この距離を光源もないのに」

 言葉では否定しながらも、俺は反射的に駆け出していた。 

 合流した仲間たちは――――

「なに? ゴブリンの軍勢だと?」

 レオは疑いから入った。

「あぁ、それも武装していた。少なくとも100匹はいた」

「馬鹿を言え、ゴブリンだぞ? 統率が取れるはずがない」

「実際に統率が取れるから特別怪物《エクストラモンスター》って事なんだろよ。お前たちが撤退しないなら、俺1人でも帰らせてもらう」

「チッ! わかったよ。一度、戻って態勢を整えよう」

 だが――――

「危ない!」と俺はレオを庇うように前に出て剣を振い、攻撃を切り払った。

 攻撃してきたのはゴブリン。 だが、奇妙な事が1つ。

「なんだ、コイツ等? 武器が異常に長いぞ」  

「言ってる場合か。数は10……荷物持ちはドロシーを守れ」

 レオを実力は確かだ。 

 すぐに敵の数を把握。それと同時に後衛の護衛を指示する。

 それと同時にシオンが口にする。

「あれは……あの陣形は危険だ」

「知っているのか、シオン?」

「あぁ、我が国で有名な将が、雑兵に長い槍を使わせて成果を出していた……気をつけよ。集団で使用される長槍は危険だぞ!」

 長槍と言うよりも原始的な武器だ。

 そこらへんの長棒。それに石を削って切れ味を出した刃を括りつけている。

 冒険者仲間の全員が異常に気付いているが、その事に声を出さずにいた。それは――――

 『ゴブリンが戦術を使っているだと?』

 
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