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第7話 〇〇〇を作ろう!(溶岩ゴーレムとの戦い)

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 冒険者にはランクがある。

 3級冒険者から始まり、2級冒険者、1級冒険者……そして、特級冒険者となる。

 もっとも特級冒険者は、世界で10人もいない。

 俺がいた王都『シュタット』で3人。 今、住んでいる地方都市『ゲルベルク』では0人だ。

 もちろん、新人冒険者の俺は3級冒険者だ。

 ギルドから直接、依頼を受容するような特殊な冒険《クエスト》なんてない。

 冒険者ギルドにある掲示板に貼り付けている依頼を受ける毎日……そのはずだった。

「悪い、ユウキ。 ここ行って」とギルド長の部屋に呼ばれた俺は、彼女から地図を手渡された。

「あの、リリティ。 俺は3級冒険者なんだが……」

 なんでこの人は、照れ顔で「バカ、ユウキ。ここじゃ名前じゃなくギルド長って呼びなさい」ってクネクネしてるんだ? 

 まだ10代前半に見える彼女の正体はエルフであり、冒険者ギルドのギルド長だ。

 名前は確か、西の森で春に生まれた三番目の……なんだったけ? 

 まぁ良い。 俺は彼女をリリティと呼んでいる。 とある出来事で対立して、戦うこと で仲良くなった。

 河原で殴り合った不良同士に友情が芽生えるようなもんだ。

 やだ、この異世界……もしかして野蛮過ぎる!?

 おかげで変な依頼を優先して斡旋してくれるようになった。 最初は嫌がらせではないかと疑っていたが……どうやら、好意でやってくれてるようだ。

 ならば、頼みを無下にはできないだろう。

 それはさておき――――

「ここはカガ火山? 火山地帯か。ここで何か起きたのか」

「そうなのよね。何でもゴーレムが暴れ回っているらしいのよ」

「依頼は、カガ火山でゴーレム討伐って事か。 でも、わざわざ俺を指名してくるって事は、何か厄介ごとがあるのか?」

「まだ、ギルドでは情報が正しいか精査されていなののだけど……依頼人の話しでは討伐対象のゴーレム。どうやら体が溶岩でできているらしいのよ」

「溶岩で作られたゴーレム? あり得るのか、そんなモンスター?」

 確か溶岩ってのは、地球内部から噴き出したマグマが地表に出て固まったもん……だったはず。

 地球内部の高熱高圧で岩石が溶けた物がマグマ。 どう考えて人間が溶岩でゴーレムを作れるはずはない。

「まさか」と俺は無意識に口に出した。 心当たりがあるからだ。

「うん、私たちギルドの予想だと、普通のゴーレムが何らかの異常で変化したモンスターって事になってる。もしかしたら『スキル』によって変身したモンスターかもしれない」

 あの依頼者……モンスターに『スキル』を発現させていた研究者。 

 名前はなんだったか? 忘れた……いや、そもそも知らなった気もする。

 とにかく、あの研究者は行方不明になっているらしい。

『スキル』を持つモンスターを生み出すノウハウ。 それを冒険者ギルドに知られた事を後からマズいと思って逃走したのかもしれない。

「だから、俺が調べないとダメなのか」

 『スキル』を持ったモンスター。

 それはトップシークレットだ。 可能な限り外部に漏れぬよう、関連の依頼は信用できる冒険者に直接依頼をしているのが、このギルドの現状。

「ごめんだけど、そういう事なのよね」

 それから、彼女は何かを思いついたかのように、こう続けた。

 「もしも不安があるなら、信頼できる者の同行を1人までなら許されるわ」

「うむ」と俺は地図でカガ火山の位置を確認する。 そう遠くない距離だが、依頼内容をざっくり言えば

 特定のモンスターを探し出して討伐すること

「そうだな。長期戦も視野に入れないとダメかもしれない依頼だ。協力できる仲間がいた方がいい」

 『野伏』や『斥候』として能力の高い狩人……

 あるいは魔力探知でモンスターの位置を確認できる魔法使いか。
 
「でもなぁ……そんな心当たりはいない」

 俺は新人冒険者だ。冒険者としての経験は浅い

「一緒にパーティを組んで冒険に出た人間なんて……ん?  どうしたリリティ? 自分と指差して」

「強力な後衛はどう? それに、この件を知ってる者……1人思い当たるでしょ?」
 
 彼女はキラキラとした目で、何かアピールをしてきた。

「なるほど、そう言う事か。わかったぞ」

「うんうん!」と満足に頷くリリティ。

「俺の知り合いで、優秀な魔法使いと言えば――――アリッサを誘おう」

「何でよ! ここは私を誘うところでしょが!」

「いや、流石に冒険者ギルドのギルド長を誘って冒険に行くのはハードルが高い」

「ぬぐぐぐ……」

「それにあの子、アリッサには光るものを感じた。まだまだ成長するぞ」

 いや、リリティさん。どうして悔しそうな顔をして、自分のお胸をパタパタ叩いているのでしょうか?

 俺は才能の話しをしているんだが……

「これはギルド長としての忠告なのだけど、アリッサって子は訳ありよ」

「やっぱり、貴族の娘なのか?」

 彼女の新品の装備、丁寧な言葉使い、体幹がブレない立ち姿……
 
 平民ではない生活感が出ていた。

「なんだ、知ってたの? 思ったより、良い関係性を構築しているのね、嫉妬するわ」

「いや、直接聞いたわけじゃないさ」

「あら、そう」とリリティは拍子抜けしたような顔を見せた。

「まだ貴族なら、良かったけど……彼女は王族よ」

「なに!?」と流石に驚いた。 

 俺だって元勇者だ。それなり王族とも交流はある。

 勇者として酷使され、たまに王都へ戻れば、王族から社交界に招待される。

 社交界では、踊りを披露させられ、

『どうかな、勇者さま。我が娘を嫁にでも! ガハハハハハハ……』 

 これが挨拶のようなものである、げんなり。

「それにしては王都でアリッサを見かけた記憶はないけどな」

「あら、ユウキ。ゲルベルクに来る前は王都に住んでいたの? まるで王族と交流があったかのような言い方だったけど?」 

「さて、どうかな?」と俺は元勇者とバレないように誤魔化した。

 まぁ王都から勇者が引退したって話は伝わってきているんだろうけど。

 やっぱり、名前は本名のままだったのは失敗だったか?

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・

 数日後

「さすがに熱いな」と俺はカガ火山を歩いている。

 装備は火山地帯探索に特化耐火性のものだ。

 それ以外の物だと、靴なんて底から燃え始めるか、あるいは溶けて無くなる。 

 だが、最大の欠点は着ているだけで普通に暑い。 汗が止まらなくなるレベルだ。

「大丈夫か?」と振り向けば、アリッサが辛そうな顔をしていた。

「心配はいりません。元々、私の装備には熱さや寒さを遮断する素材が使われていますので」

 いや、どんな高級素材の服なんだよ。 俺でも欲しいぞ、それ。

 「いや、ここ火山なのは差し引いても、山歩きは想像以上に体力が消費する。今回の依頼は、長期戦だ。休憩するぞ」

 火山地帯の探索では休憩場所を探すだけでも苦労する。

 俺たちは近くで洞窟を見つけた。 休憩時間……だからと言っても、耐火用の装備を脱ぎ捨てれば、咄嗟の出来事で対処できない。 外す装備の最小限だ。

「大丈夫ですか? 魔法で結界を張れば、熱さも遮断できますが?」

「いや、まだ大丈夫だ。魔法は温存しておいた方が良い。使うなら『魔力探知』で周囲の警戒に集中してくれ」 
   
 俺は、荷物から水を取り出して彼女に手渡した。

「あの……」とアリッサは、何か言いずらそうだった。

「どうして私とパーティを組んだのですか?」

「どうして? そんなに不思議に思うことなのか?」

 だとしたら、自己肯定感が低いと言わざる得ない。 前回の依頼で優秀だったから指名しただけなんだけどな。

「前回、私は感情を押さえきれず、あなたを殴ってしまったので……」

「あぁ」と俺は納得した。 由緒正しい家柄の彼女に取って見れば、殿方を殴る事なんてあり得ない話だったのだろう。

「あれは俺が悪かった。 すまないな、君を試すような真似をして」

 ちょっと反省。

 俺も感情が怒りで乱れていた。 許してほしい。

「それに、君を指名した理由は優秀な魔法使いだと思ったからだ。加えて、俺は新人冒険者だからね。他にパーティを組めそうな人脈はないのさ」

「そうなのですか?」と彼女は意外そうだった。

「それにしては、まるでベテラン冒険者のような動きをしています。以前は何をされていたのですか?」

「以前……」と俺は少し考えた。 まさか「勇者業を少々」なんて言うわけにはいかないからな。

「は、配達員をしていた」

「配達員ですか?」

「あぁ、手紙や小包を運ぶためなら、モンスターのいる森にも行った。 こんな火山にも、何度か足を運んだ事がある」

 自分で言いながら無理がある。 咄嗟の嘘にしては滅茶苦茶な言い訳であるが……

「配達員って、そんな危険な仕事だったのですか!」と彼女は信じてくれたようだ。

 むしろ、悪い男に騙されないか不安になってくるぜ。 ――――なんて事を考えていたタイミングでそれは起きた。

「なんだ、この気配は? アリッサ、『魔力探知』は?」

「え? 急に反応が現れました。場所は――――洞窟の外!? なんで反応がなく、こんな近くまで!」

「慌てる必要はない。相手は『スキル』を持ったモンスターの可能性が高い。常に、こちらの想定を覆してくる存在だと思った方がいい」

 俺は気配を消して、洞窟の入り口に近づく。外に近づけば、近づくほど異常な熱気が浴びせられていった。

「これは確実にいるな。溶岩でできたゴーレムとやらが!」

 熱気が酷い場所に、モンスターがいる。 

 これが、姿を隠して素早く動く獣系のモンスターなら酷いデメリットなんだろうけど……

 その必要のない巨大モンスターであるゴーレムなら、酷いメリットになる。

 俺は剣を構えて、奇襲に出る。 気配を殺し、ターゲットが見えた瞬間に――――

「素早く刺突を叩き込む!」

 低い体勢から、ゴーレムの脚部に剣が突き刺さった。 そう思ったのだが……

「いぃ!」と熱で溶けて消滅した愛剣だった物を見た。

 この奇襲失敗でゴーレムは、俺を認識したようだ。 高熱の拳を振り落として来た。

「なんて熱量だ。攻撃が当たらなくても、長時間の攻防は死を招くぞ」

 だから、俺は待機していた彼女に合図を送る。

「アリッサ、支援魔法を頼む」

「はい!」と彼女は温存していた魔法を唱えた。

 氷妖精の隔絶アイスイグノア

 彼女の支援魔法が俺を包み込み、熱から守ってくれる。

 耐火性の装備を素早く脱ぎ去るパージ。 普段の軽装になり機動力があがる。

 破壊された武器も取り替え、予備のショートソードを構えた。  

 
 
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