48 / 118
第48話 ミカエルとの大食い対決
しおりを挟む
「意外だったな。この量をミカエルも食べれるなんてな」
ユウトは喋りながら、巨大カレーの揚げ物を狙っていく。
カレーのルーに絡めて味を楽しむ。
「貴族に取って、食事は戦場を想定している。より早く、効率的に――――競技として技術系統すら生まれている」
「へぇ、食べる事が競技化しているのか……あれ? でも、そんなに食べてる所は見たことないが?」
「ふん、冒険者としては別だ。体を作り込み、怪我や疲労のケアをするならば計算された食事をしなければならない」
「お、おう……そんな事は考えた事もなかったぜ。もしかして、それか?」
「何が……だ?」
「俺が自由に食べてるのが気にいらなかったのか?」
「馬鹿な。そんな事で――――」とミカエル。
図星を指摘された……というわけではないのだろうが、気に入らなかった部分ってのあったのかもしれない。
だが、本人のユウトは気にした様子はない。
「それじゃ、勝負しないか? どっちが多く、早く食べるか……ミカエルと最後に本気の勝負をしたい」
「――――そうだな。互いに傷つけずにぶつかり合う理想的だな。平和な勝負方法だ」
「いいか? それじゃ――――勝負だ」
王者 ユウト・フィッシャーが本気を出してギアを上げる。
全ての調理を終え、戦いの見届け人になった店主は――――
(今まではユウトが先行して食べる事で、食事速度が安定したペース配分で行われていたが―――― やはり、貴族さまが食らい付いてくる。本気を出したユウトに匹敵する速度か!)
2人の戦いに注目した。
(まずは揚げ物の連続。油を含んだそれは胃袋の消化を遅らせて、ダメージを与える。それでもペースは落ちないのか)
黄金の揚げ物たち。 確かに大食いというジャンルでは強敵に部類されるだろう。
しかし、ユウトとミカエル――――
両者の顔には食欲と興奮が宿っていた。
揚げ物のカリッとした音と、舌を刺激する香ばしい香りが漂う。
それを楽しむように大きなスプーンでカレーと揚げ物たちを大胆に頬張っていく。
積み上げられたゴロゴロとした揚げ物たちが消えていく。
それを消し去っていく2人――――ユウトとミカエルは飢えた獣のように見える。
壮絶な戦い。 最初でありながら、最大の強敵である揚げ物は時間と共に消えていった。
しかし、不思議と2人の食事速度は落ちるどころか、加速していた。
『カレーは飲み物』などという言葉があるが――――
見よ! これが飲み物か!
揚げ物を終わらせた2人だったが、油断はしない。
海の底に沈む宝物の如く、カレーのルーに沈んでいるのは色彩豊かな野菜たち。
それだけではない。
「この弾力――――プリプリ感はエビだ。他にも海鮮は――――これはあさりだ!」
絶賛するユウト。隣のミカエルも同意する。
「あぁ、この食感と味わいは、間違いなく極上。さらにあさりの存在は、自然な甘みと海の香りが広がっていく」
その2人を見守っている店主は「――――」と絶句する。
(ば、馬鹿な……加速していた両者の食事速度が、もう一段階上がった……だと? この2人は、一体どこまで行きやがる!)
店主は両者が出す熱気、闘気に嵐のようにぶつかり合う幻覚を見る。
幻覚は、それで終わらない。
食堂で2人が食べているだけ――――そのはずだ。
しかし、店主の目には、見える。 闘技場で戦う両者の姿。そして、彼等の背後に何百人の観客が声援を上げている。
「――――そんな馬鹿な」と幻影……されど現実に気圧されていく店主。
だが、そんな楽しい時間にもお別れが訪れる。
トッピングの揚げ物たちは既になし……
大海のようだったカレーのルーにも文字通り、底というものが見えてきた。
雄々しい山脈だった白飯は、緩やかな曲線を描き――――今では終焉を望む。
理解なき者どもは、こう嘆くかもしれない。
「もういいではないか?」
「そこまですることではない」
「何の意味があるのか?」
だが、それらの言葉に目撃者は激高することになるだろう。
「見よ、2人の勇者を!」
ただ、食べるだけ。そこには、多大な満足感と五感を振るわせる美味がある。
しかし、やがてそれらは敵となり猛威を振るう。
それらは御して、乗り越えた先には、きっと――――
「「ごちそうさま」」
ユウトとミカエルは同時に口にした。
その言葉で精神が現世ではない、どこかに飛んでいた店主を呼び戻したのだった。
ユウトは喋りながら、巨大カレーの揚げ物を狙っていく。
カレーのルーに絡めて味を楽しむ。
「貴族に取って、食事は戦場を想定している。より早く、効率的に――――競技として技術系統すら生まれている」
「へぇ、食べる事が競技化しているのか……あれ? でも、そんなに食べてる所は見たことないが?」
「ふん、冒険者としては別だ。体を作り込み、怪我や疲労のケアをするならば計算された食事をしなければならない」
「お、おう……そんな事は考えた事もなかったぜ。もしかして、それか?」
「何が……だ?」
「俺が自由に食べてるのが気にいらなかったのか?」
「馬鹿な。そんな事で――――」とミカエル。
図星を指摘された……というわけではないのだろうが、気に入らなかった部分ってのあったのかもしれない。
だが、本人のユウトは気にした様子はない。
「それじゃ、勝負しないか? どっちが多く、早く食べるか……ミカエルと最後に本気の勝負をしたい」
「――――そうだな。互いに傷つけずにぶつかり合う理想的だな。平和な勝負方法だ」
「いいか? それじゃ――――勝負だ」
王者 ユウト・フィッシャーが本気を出してギアを上げる。
全ての調理を終え、戦いの見届け人になった店主は――――
(今まではユウトが先行して食べる事で、食事速度が安定したペース配分で行われていたが―――― やはり、貴族さまが食らい付いてくる。本気を出したユウトに匹敵する速度か!)
2人の戦いに注目した。
(まずは揚げ物の連続。油を含んだそれは胃袋の消化を遅らせて、ダメージを与える。それでもペースは落ちないのか)
黄金の揚げ物たち。 確かに大食いというジャンルでは強敵に部類されるだろう。
しかし、ユウトとミカエル――――
両者の顔には食欲と興奮が宿っていた。
揚げ物のカリッとした音と、舌を刺激する香ばしい香りが漂う。
それを楽しむように大きなスプーンでカレーと揚げ物たちを大胆に頬張っていく。
積み上げられたゴロゴロとした揚げ物たちが消えていく。
それを消し去っていく2人――――ユウトとミカエルは飢えた獣のように見える。
壮絶な戦い。 最初でありながら、最大の強敵である揚げ物は時間と共に消えていった。
しかし、不思議と2人の食事速度は落ちるどころか、加速していた。
『カレーは飲み物』などという言葉があるが――――
見よ! これが飲み物か!
揚げ物を終わらせた2人だったが、油断はしない。
海の底に沈む宝物の如く、カレーのルーに沈んでいるのは色彩豊かな野菜たち。
それだけではない。
「この弾力――――プリプリ感はエビだ。他にも海鮮は――――これはあさりだ!」
絶賛するユウト。隣のミカエルも同意する。
「あぁ、この食感と味わいは、間違いなく極上。さらにあさりの存在は、自然な甘みと海の香りが広がっていく」
その2人を見守っている店主は「――――」と絶句する。
(ば、馬鹿な……加速していた両者の食事速度が、もう一段階上がった……だと? この2人は、一体どこまで行きやがる!)
店主は両者が出す熱気、闘気に嵐のようにぶつかり合う幻覚を見る。
幻覚は、それで終わらない。
食堂で2人が食べているだけ――――そのはずだ。
しかし、店主の目には、見える。 闘技場で戦う両者の姿。そして、彼等の背後に何百人の観客が声援を上げている。
「――――そんな馬鹿な」と幻影……されど現実に気圧されていく店主。
だが、そんな楽しい時間にもお別れが訪れる。
トッピングの揚げ物たちは既になし……
大海のようだったカレーのルーにも文字通り、底というものが見えてきた。
雄々しい山脈だった白飯は、緩やかな曲線を描き――――今では終焉を望む。
理解なき者どもは、こう嘆くかもしれない。
「もういいではないか?」
「そこまですることではない」
「何の意味があるのか?」
だが、それらの言葉に目撃者は激高することになるだろう。
「見よ、2人の勇者を!」
ただ、食べるだけ。そこには、多大な満足感と五感を振るわせる美味がある。
しかし、やがてそれらは敵となり猛威を振るう。
それらは御して、乗り越えた先には、きっと――――
「「ごちそうさま」」
ユウトとミカエルは同時に口にした。
その言葉で精神が現世ではない、どこかに飛んでいた店主を呼び戻したのだった。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く
川原源明
ファンタジー
伊東誠明(いとうまさあき)35歳
都内の大学病院で救命救急センターで医師として働いていた。仕事は順風満帆だが、プライベートを満たすために始めた婚活も運命の女性を見つけることが出来ないまま5年の月日が流れた。
そんな時、久しぶりに命の恩人であり、医師としての師匠でもある秋津先生を見かけ「良い人を紹介してください」と伝えたが、良い答えは貰えなかった。
自分が居る救命救急センターの看護主任をしている萩原さんに相談してみてはと言われ、職場に戻った誠明はすぐに萩原さんに相談すると、仕事後によく当たるという占いに行くことになった。
終業後、萩原さんと共に占いの館を目指していると、萩原さんから不思議な事を聞いた。「何か深い悩みを抱えてない限りたどり着けないとい」という、不安な気持ちになりつつも、占いの館にたどり着いた。
占い師の老婆から、運命の相手は日本に居ないと告げられ、国際結婚!?とワクワクするような答えが返ってきた。色々旅支度をしたうえで、3日後再度占いの館に来るように指示された。
誠明は、どんな辺境の地に行っても困らないように、キャンプ道具などの道具から、食材、手術道具、薬等買える物をすべてそろえてた。
3日後占いの館を訪れると。占い師の老婆から思わぬことを言われた。国際結婚ではなく、異世界結婚だと判明し、行かなければ生涯独身が約束されると聞いて、迷わず行くという選択肢を取った。
異世界転移から始まる運命の嫁ちゃん探し、誠明は無事理想の嫁ちゃんを迎えることが出来るのか!?
異世界で、医師として活動しながら婚活する物語!
全90話+幕間予定 90話まで作成済み。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる