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第7話 たった三人だけの修学旅行(前編)
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いよいよ明日は修学旅行。
小学校の頃は五年生と六年生の合同修学旅行で、あまり自由な時間はなかった。
今回は三人だけのフリーダムな旅だから、楽しみ感が半端ない。
事前学習で、修学旅行で行く場所をしっかりと調べていく。。
全部自分たちで決めていくのが、姫乃森中のスタイルだ。
ガイドさんがつくのは、国会議事堂くらい。
人数が少ないから予算も余るので、宿泊はテーマパーク内の高級ホテルだ。
「まぁー、こんなもんかな」
荷物の準備を終え、私は布団に入って明日に備えた。
眠れないかと思っていたけど、気がついたら朝になっていた。
両親に送ってもらい、新幹線の駅へと向かう。
「おはよー!」
「おはよー」
一番早く着いていたのは、千秋だった。
パリッとしたおしゃれ着を着て、大きなカートの隣で手を振っている。
「あれー? ふーは?」
「まだみたい」
しばらく待っていると、ボサボサ頭のふーが、どでかいカートを懸命に引っ張って走ってきた。
「やっほー!」
あんなに張り切っていた人が、まさかのビリ。
「おはよー。なんか眠そうだね。髪もボッサボサじゃん」
千秋が、ふーの顔を見てすぐにツッコんだ。
「分かったー? もう、楽しみ過ぎてさー。二時間ぐらいしか眠れなかったよー」
遠足を楽しみにする小学生かよ。
私と千秋は思った。
絶対こいつ、新幹線の中で寝るだろう。
ふーの髪を櫛でといてあげていると、先生方も駅に到着した。
引率の先生は川村先生と校長先生だ。
「みんな揃ったね。早速、ホームに行こうか。」
見送る親に手を振り、私達はホームに向かい、新幹線に乗った。
予想通り、寝不足のふーは新幹線に乗って数分後に寝てしまっていた。
「やっぱ、寝ちゃうよねー」
「そりゃー、二時間しか寝てなかったって言ってたし、しょうがないよ。あ、なっつ、アメ舐める?」
「あ、ありがとう。んじゃー、物々交換」
「それ、うちが好きなお菓子だー。ありがとう!」
「……寝てるねぇ」
「……寝てるね。あ、そうだ」
そういい、千秋はカメラをカバンから取り出した。
「マジ? バレたら怒られるよ?」
「言わなきゃ良いのだ!」
千秋は、ふーの寝顔をカメラに納めた。
シャッター音が鳴っても起きない。
見事な爆睡だ。
「えーっと、着いたらどうするんだっけ?」
私は千秋に聞いた。
しおりを広げて確認する。
「ホテルにチェックインして、国会議事堂の見学して、次に美術館、そして夜は劇団鑑賞とナイター観戦に分かれるんだよね」
「そういや、そうだった」
世間話をしていると、東京駅に着いた。
しかし、まだふーは寝たままだ。
千秋と一緒に、慌てて起こした。
「ちょっと、ふー! 起きなよ! 着いたよ!」
「はにゃ? ……えっ!? もう!?」
急いで荷物を持ち、新幹線から降りた。
外に出ると、立ち並ぶ高層ビルと人の多さに、一瞬目眩を覚えた。
今までいた山の中とは全く違う。
先生の先導でホテルに向かって荷物を預け、国会議事堂と国立美術館の見学をした。
初めての環境、初めて見る景色に早くも疲れが出てきた。
でも、一番楽しみにしていたナイターが今夜見れる!
私の楽しみは、初めて生で見るナイターであった。
劇団鑑賞とナイター観戦は任意で決めることができた。
たった三人だし、女子だから、三人とも劇団鑑賞を選ぶだろう。
なんて楽な修学旅行の引率なんだ!
そう担任は思っていただろう。
しかし、そんなに甘くはない。
何度も確認された。
本当に劇団鑑賞じゃなくて良いのかと。
でも私は、一歩も引かず、ナイター観戦を選択したのであった。
ただ、校長先生と二人きりでナイターを見ることになるとは思わなかったが……。
取れたチケットは屋外の球場での試合であった。
つまり、雨天になれば中止になるリスクがある。
今日は晴れているから大丈夫だろう。
そう思っていたが、突然の雷雨。
最悪な修学旅行の初日だ。
一番楽しみにしていたナイターが見れないなんて……。
川村先生が携帯を見ながら私に話しかけてきた。
「残念だけど、夏希。試合中止だって」
「さすが、雨女」
「うるせー、千秋!」
「感心するわー。なっつ、何か持ってるね!」
「悪運しか持ってねーわ! ふーまでオレのことをイジるなー!」
「さて、どうします? 川村先生」
心配そうに校長先生が川村先生に話しかけた。
「夏希、俺のチケット使って劇団見てきなよ」
「えっ!? それはさすがに……」
「ありがとうございます!」
「冬美にあげるわけじゃねーから」
川村先生が、両手を突き出してきたふーにツッコんだ。
「三人で行ってきな。先生は大丈夫だから。てか、こちらこそありがとう!」
何か企んでいるらしい。
この担任は……。
口が滑っているし、裏の顔が見え見えだ。
三時間の時間を自由に使える修学旅行なんぞ、大きい学校ではありえない。
「本当にすみません! この御恩は必ず!」
そう言い、川村先生からチケットを受け取った。
「よし、んじゃー会場に行こうか!」
「それじゃー、ホテルのロビーで待ってるからね。気をつけて行ってらっしゃい!」
「はーい!」
私達は、劇団鑑賞へ出掛けて行った。
とても有名な劇団だけあって、迫力があり、素晴らしいものであった。
その独特な雰囲気に引き込まれていき、時間もあっという間に過ぎてしまった。
「楽しかったー。ホテルに戻ろうか」
「そうだねー」
最寄りの駅から電車に乗った。
「やっぱ時間が遅いから、人混んでないねー。余裕で座れるよ」
私は昼間と違った車内の差に驚いた。
「昼間の車内は地獄だったね。人多すぎて」
千秋も人の多さに参っていたらしい。
ホテルに着き、ロビーに向かった。
「おかえりなさい。時間内に着けたね。楽しかったかい?」
笑顔で校長先生が出迎えてくれた。
「楽しかったです! 生の劇団、初めて見ました!」
ふーが興奮気味で感想を校長先生に話していた。
「先生、ありかとうございました。お陰様でした!」
改めて川村先生にお礼を言いに近づいた。
あれ?
何かおかしい。
三時間前のあのイキイキした様子とは裏腹にかなり疲れ切っている。
「あー……。楽しめたようで何より……」
「どうしたんですか?」
千秋も異変に気づいたらしい。
心配そうに話しかけてきた。
「いや……。有名な夜景を見れる施設があってさー。そこに行こうとしたら、電車の帰宅ラッシュに巻き込まれて……。もう地獄だった。でもさー、その施設閉まってたんだよねー。うちの奥さんに夜景の写メ送りたかったのにぃ~。」
そりゃー、災難でした。
「ご、ご愁傷さまです……」
千秋は笑いを堪えながら話していた。
「みんな、無事に帰ってきたし、夕飯食べて明日に備えて休みましょう」
「はーい」
明日は、三人だけで行動する自主研修の日だ。
夕食を食べ終え、部屋に行き、ベッドに腰掛けた。
「あー! 歩いた、歩いた! 疲れたー!」
「そうだねー。でも、あたしは元気!」
「そりゃそうだ。新幹線の中で爆睡してたからなー」
テンション高いふーに、小声で突っ込んだ。
「明日は自主研修だよねー」
「そうそう! 楽しみ! 東大に、科学館にアニメ美術館! 最高だよー!」
「そうだねー。明日も早いし寝よー」
「そうだね。おやすみー」
そのままゆっくり眠りにつく。
そう思っていた。
電気を消し、まもなくすると、ふーのクスクス声が聞こえてきた。
何がそんなに面白いのか。
というか、うるさくて眠れない。
テンション上がり過ぎておかしくなっているふーであったが、うるさいと思うもつかの間。
あまりの疲労感に私も千秋もすぐに熟睡してしまった。
また、ふーが寝不足になるのではないか。
私は少し不安であった。
小学校の頃は五年生と六年生の合同修学旅行で、あまり自由な時間はなかった。
今回は三人だけのフリーダムな旅だから、楽しみ感が半端ない。
事前学習で、修学旅行で行く場所をしっかりと調べていく。。
全部自分たちで決めていくのが、姫乃森中のスタイルだ。
ガイドさんがつくのは、国会議事堂くらい。
人数が少ないから予算も余るので、宿泊はテーマパーク内の高級ホテルだ。
「まぁー、こんなもんかな」
荷物の準備を終え、私は布団に入って明日に備えた。
眠れないかと思っていたけど、気がついたら朝になっていた。
両親に送ってもらい、新幹線の駅へと向かう。
「おはよー!」
「おはよー」
一番早く着いていたのは、千秋だった。
パリッとしたおしゃれ着を着て、大きなカートの隣で手を振っている。
「あれー? ふーは?」
「まだみたい」
しばらく待っていると、ボサボサ頭のふーが、どでかいカートを懸命に引っ張って走ってきた。
「やっほー!」
あんなに張り切っていた人が、まさかのビリ。
「おはよー。なんか眠そうだね。髪もボッサボサじゃん」
千秋が、ふーの顔を見てすぐにツッコんだ。
「分かったー? もう、楽しみ過ぎてさー。二時間ぐらいしか眠れなかったよー」
遠足を楽しみにする小学生かよ。
私と千秋は思った。
絶対こいつ、新幹線の中で寝るだろう。
ふーの髪を櫛でといてあげていると、先生方も駅に到着した。
引率の先生は川村先生と校長先生だ。
「みんな揃ったね。早速、ホームに行こうか。」
見送る親に手を振り、私達はホームに向かい、新幹線に乗った。
予想通り、寝不足のふーは新幹線に乗って数分後に寝てしまっていた。
「やっぱ、寝ちゃうよねー」
「そりゃー、二時間しか寝てなかったって言ってたし、しょうがないよ。あ、なっつ、アメ舐める?」
「あ、ありがとう。んじゃー、物々交換」
「それ、うちが好きなお菓子だー。ありがとう!」
「……寝てるねぇ」
「……寝てるね。あ、そうだ」
そういい、千秋はカメラをカバンから取り出した。
「マジ? バレたら怒られるよ?」
「言わなきゃ良いのだ!」
千秋は、ふーの寝顔をカメラに納めた。
シャッター音が鳴っても起きない。
見事な爆睡だ。
「えーっと、着いたらどうするんだっけ?」
私は千秋に聞いた。
しおりを広げて確認する。
「ホテルにチェックインして、国会議事堂の見学して、次に美術館、そして夜は劇団鑑賞とナイター観戦に分かれるんだよね」
「そういや、そうだった」
世間話をしていると、東京駅に着いた。
しかし、まだふーは寝たままだ。
千秋と一緒に、慌てて起こした。
「ちょっと、ふー! 起きなよ! 着いたよ!」
「はにゃ? ……えっ!? もう!?」
急いで荷物を持ち、新幹線から降りた。
外に出ると、立ち並ぶ高層ビルと人の多さに、一瞬目眩を覚えた。
今までいた山の中とは全く違う。
先生の先導でホテルに向かって荷物を預け、国会議事堂と国立美術館の見学をした。
初めての環境、初めて見る景色に早くも疲れが出てきた。
でも、一番楽しみにしていたナイターが今夜見れる!
私の楽しみは、初めて生で見るナイターであった。
劇団鑑賞とナイター観戦は任意で決めることができた。
たった三人だし、女子だから、三人とも劇団鑑賞を選ぶだろう。
なんて楽な修学旅行の引率なんだ!
そう担任は思っていただろう。
しかし、そんなに甘くはない。
何度も確認された。
本当に劇団鑑賞じゃなくて良いのかと。
でも私は、一歩も引かず、ナイター観戦を選択したのであった。
ただ、校長先生と二人きりでナイターを見ることになるとは思わなかったが……。
取れたチケットは屋外の球場での試合であった。
つまり、雨天になれば中止になるリスクがある。
今日は晴れているから大丈夫だろう。
そう思っていたが、突然の雷雨。
最悪な修学旅行の初日だ。
一番楽しみにしていたナイターが見れないなんて……。
川村先生が携帯を見ながら私に話しかけてきた。
「残念だけど、夏希。試合中止だって」
「さすが、雨女」
「うるせー、千秋!」
「感心するわー。なっつ、何か持ってるね!」
「悪運しか持ってねーわ! ふーまでオレのことをイジるなー!」
「さて、どうします? 川村先生」
心配そうに校長先生が川村先生に話しかけた。
「夏希、俺のチケット使って劇団見てきなよ」
「えっ!? それはさすがに……」
「ありがとうございます!」
「冬美にあげるわけじゃねーから」
川村先生が、両手を突き出してきたふーにツッコんだ。
「三人で行ってきな。先生は大丈夫だから。てか、こちらこそありがとう!」
何か企んでいるらしい。
この担任は……。
口が滑っているし、裏の顔が見え見えだ。
三時間の時間を自由に使える修学旅行なんぞ、大きい学校ではありえない。
「本当にすみません! この御恩は必ず!」
そう言い、川村先生からチケットを受け取った。
「よし、んじゃー会場に行こうか!」
「それじゃー、ホテルのロビーで待ってるからね。気をつけて行ってらっしゃい!」
「はーい!」
私達は、劇団鑑賞へ出掛けて行った。
とても有名な劇団だけあって、迫力があり、素晴らしいものであった。
その独特な雰囲気に引き込まれていき、時間もあっという間に過ぎてしまった。
「楽しかったー。ホテルに戻ろうか」
「そうだねー」
最寄りの駅から電車に乗った。
「やっぱ時間が遅いから、人混んでないねー。余裕で座れるよ」
私は昼間と違った車内の差に驚いた。
「昼間の車内は地獄だったね。人多すぎて」
千秋も人の多さに参っていたらしい。
ホテルに着き、ロビーに向かった。
「おかえりなさい。時間内に着けたね。楽しかったかい?」
笑顔で校長先生が出迎えてくれた。
「楽しかったです! 生の劇団、初めて見ました!」
ふーが興奮気味で感想を校長先生に話していた。
「先生、ありかとうございました。お陰様でした!」
改めて川村先生にお礼を言いに近づいた。
あれ?
何かおかしい。
三時間前のあのイキイキした様子とは裏腹にかなり疲れ切っている。
「あー……。楽しめたようで何より……」
「どうしたんですか?」
千秋も異変に気づいたらしい。
心配そうに話しかけてきた。
「いや……。有名な夜景を見れる施設があってさー。そこに行こうとしたら、電車の帰宅ラッシュに巻き込まれて……。もう地獄だった。でもさー、その施設閉まってたんだよねー。うちの奥さんに夜景の写メ送りたかったのにぃ~。」
そりゃー、災難でした。
「ご、ご愁傷さまです……」
千秋は笑いを堪えながら話していた。
「みんな、無事に帰ってきたし、夕飯食べて明日に備えて休みましょう」
「はーい」
明日は、三人だけで行動する自主研修の日だ。
夕食を食べ終え、部屋に行き、ベッドに腰掛けた。
「あー! 歩いた、歩いた! 疲れたー!」
「そうだねー。でも、あたしは元気!」
「そりゃそうだ。新幹線の中で爆睡してたからなー」
テンション高いふーに、小声で突っ込んだ。
「明日は自主研修だよねー」
「そうそう! 楽しみ! 東大に、科学館にアニメ美術館! 最高だよー!」
「そうだねー。明日も早いし寝よー」
「そうだね。おやすみー」
そのままゆっくり眠りにつく。
そう思っていた。
電気を消し、まもなくすると、ふーのクスクス声が聞こえてきた。
何がそんなに面白いのか。
というか、うるさくて眠れない。
テンション上がり過ぎておかしくなっているふーであったが、うるさいと思うもつかの間。
あまりの疲労感に私も千秋もすぐに熟睡してしまった。
また、ふーが寝不足になるのではないか。
私は少し不安であった。
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