へいこう日誌

神山小夜

文字の大きさ
上 下
6 / 39

第6話 テスト

しおりを挟む
 テストまであと二週間となった。
 出題範囲も発表されて、テスト勉強は大詰め。
 だけど、全く捗らない……。
 もうなるようにしかならない!
 そう開き直りたくても、受験に響くと思うと、赤点だけはどうしても回避したい。

 そんな時、ふーが土曜日に家でテスト勉強しようと提案してきた。
 ふーの家は保育園の向かいなので、学校からは徒歩5分。
 千秋も賛成で、勉強会を開催することとなった。

「テストだるいねー」
「でも、ふーはお茶の子さいさいでしょ? 頭いいもん」

 頭のいい人、本当にうらやましい。

「でも、テスト前はさすがに勉強するよー」
「そうなのー? あ、英語教えてよー」
「いいよー」
「あ、うちもー。文法分かんなくてさー」

 どうやら千秋も、英語は苦手らしい。
 ふーは、アメリカに短期留学したこともあり、英語はペラペラなのだ。
 そして、勉強会の日。
 メリハリをつけるため、午前中はみっちり勉強し、午後は遊ぶことにした。
 英語を中心に勉強したけど、ふーとのレベル差がすごすぎてびっくり。
 何を聞いても、正確な発音でペラペラペラ~と答えてくれる。
 教え方も丁寧で、なんだかすごくかしこくなった気分になった。
 お昼過ぎに、休憩がてらに三人でグラウンドを歩いた。
 すると、ふーが何かを思いついたように、小走りで桜並木に向かった。

「ねえ! この桜の木の下にタイムカプセル埋めない?」

 そう言えば、タイムカプセルやりたいって言ってたなー。

「そうだねー。この桜の木、目立つから分かりやすいんじゃない?」

 千秋は即座に賛成した。
 中庭にそびえ立つ一本の桜の木。
 樹齢百年以上とも言われる、ずっしりとした迫力ある、それでいて優しさも感じられる魅力的な木だ。
 姫乃森中学校は創立七十周年目だから、それより前からここに立っていたんだなぁ。

「場所は決まったし、あとは中身か。どうする?」

 私が聞くと、ふーが胸を張って答えた。

「五年後の自分への手紙と、写真を入れるのはどう?」
「そうきたか! となると写真なー。これから、いっぱい写真を撮っていこうよ」
「そうだねー」

 会話は弾み、空が赤く染まってくる。
 時間が経つのは早い。
 そして、あっという間にテスト初日がやってくる……。
 テストは三日間。
 三人で頑張って勉強したんだ!
 赤点だけは回避できるでしょ!
 そう思って必死に取り組み、一週間後。
 全教科の結果が返ってきた。

「ふー、すごっ! さすがだわー。うちは平均九十三ってとこかなー」

 ふーの答案用紙を見た千秋が、驚きながら話していた。

「そう? 千秋も凄いじゃん!」

 そういうふーは、最低でも九十六点であった。平均九十八点といってところだ。
 さすが、かの有名な猫型ロボットを本気で作ろうと思っている人だ。

「なっつはー?」

 千秋が私の机まで近寄ってきた。
 素知らぬ顔で答案を隠す。

「ほうほう……うわっ……!」
「こら……見るなー!」

 千秋とふーの連携プレーで、あっさりと答案を見られてしまう。

「うわっ! ギリッギリ!」

 私のテストの結果は最低で四十一点。
 かろうじて、赤点科目は無く、平均五十二点といったところだ。
 二年生の頃までは、三十八点、酷いときは二十五点のときもあった。
 三人で勉強会をしたおかげで、なんとか赤点は回避できたが、褒められる成績ではない。

「まぁー、テストも終わったし、羽根を伸ばそうよ! なんてたって、待ちに待った修学旅行だよ!」

 テンション爆上がりのふー。
 そうだ。
 もうすぐ修学旅行。
 三人だけの旅行。
 楽しみで仕方がないのだろう。

「しっかり準備しないとね。三泊四日だよー。楽しみー」

 千秋も楽しみのようだ。
 私も楽しみだったけど、不安も大きい。
 こんなド田舎から、大都会へ行くのだ。
 迷子になっちゃうんじゃないか心配だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

太郎ちゃん

ドスケベニート
児童書・童話
きれいな石ころを拾った太郎ちゃん。 それをお母さんに届けるために帰路を急ぐ。 しかし、立ちはだかる困難に苦戦を強いられる太郎ちゃん。 太郎ちゃんは無事お家へ帰ることはできるのか!? 何気ない日常に潜む危険に奮闘する、涙と愛のドタバタコメディー。

黒地蔵

紫音@キャラ文芸大賞参加中!
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

【完結】知られてはいけない

ひなこ
児童書・童話
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。 他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。 登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。 勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。 一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか? 心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。 <第2回きずな児童書大賞にて奨励賞を受賞しました>

お仕事はテストエンジニア!?

とらじゃむ
経済・企業
乙女ゲームの個人開発で生計を立てていた早乙女美月。 だが個人開発で食っていくことに限界を感じていた。 意を決して就活、お祈りの荒らしを潜り抜けようやく開発者に……と思ったらテストエンジニア!? 聞いたこともない職種に回されてしまった美月は……! 異色のITシステム開発現場の生々しい奮闘ストーリー!

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

佐藤さんの四重奏

makoto(木城まこと)
児童書・童話
佐藤千里は小学5年生の女の子。昔から好きになるものは大抵男子が好きになるもので、女子らしくないといじめられたことを機に、本当の自分をさらけ出せなくなってしまう。そんな中、男子と偽って出会った佐藤陽がとなりのクラスに転校してきて、千里の本当の性別がバレてしまい――? 弦楽器を通じて自分らしさを見つける、小学生たちの物語。 第2回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます!

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。童話パロディ短編集

処理中です...