交わらない心

なめめ

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交わる心

交わる心⑨

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「おや、まさかの男っ!これはもしや今流行りのボーイズラブ!」

両方の司会者はこの現状に、固まっていたものの本来の職務を思い出したのか再び青い方が喋りだす。

「今日ならいいでしょーう、禁断の愛!」


「まじかよ·····」って引いてる声だとか見世物のように騒いでる奴らとか正直、最初から分かっていたことではあるが外野が邪魔くさく感じる。しかし、それを上回るくらいにそんなことなんてどうでもよかった。
今の自分にとって今の状況は冗談やおふざけじゃない。

「では桜田くん今ここで愛の告白を·····お願いしまーすっ!」


司会者二人は舞台袖へと向かうと、優作は渡されたマイクを持ち舞台中央で吉岡と向かい合う。
吉岡はただ自分を見つめているだけだが、心做しか険しい表情をしているように見えてマイクを持つ手が震える。
しかし、引き返すという選択肢はなかった。

「あのさ·····俺、吉岡のこと·····本気で好きだから·····お前と、友達じゃなくて.......恋人として付き合いたい.......」


俯きたくなったが吉岡の目を見て、言葉を絞り出しながら告げた。
告げた途端に顔が火がついたように熱くなる。振られる以前に もしかしたらこの状況での告白自体を良くは思っていないかもしれない。

優作は両手を力を込めて握る。返事を聴くのが怖いが逸らしたら逃げているような気がして吉岡の表情を伺いながらじっと待つ。


「いいよ·····。俺も優のこと好きだから」
「えっ·····?」

あっさりと返事を返されて拍子抜けする。
それと同時に先程の険しいような顔は何処へ行ったかのように吉岡の表情は陽だまりのような笑顔で微笑みかけてきた。

優作はその笑顔に安堵したがどこか違和感を覚える。

決してふざけてい言っている訳では無い。
しかし、何処か魂がなく言葉だけが羅列されてるように感じた。

表面上では大成功なのに何処か心の底から嬉しいと思えない。

告白が終わり、吉岡が返事をした途端に会場が湧く。まるで芸人同士のキスで笑いをとる芸みたいに客席からコールが始まり、優作は戸惑っていた。

司会者に助けを求めようとアイコンタクトを送るが司会者もノリノリでコールに参加をしてくる。


すると、吉岡が自分に近づいてきては目の前で立ち止まった。
ここまで見世物にするつもりはなかった。
こんな状況になって吉岡は怒っているんじゃないだろうか。

怒られるんではないかと優作が俯くと額に向かって吉岡の顔が近づいては触れ、離れていった。顔をあげると吉岡が頭に手を置いては微笑んでくる。


どうやら吉岡は自分の額にキスをしてきたらしく客席は更に黄色い歓声があがる。

秒刻みで起きた出来ごとだけに優作の頭は追いつけずにいると司会者に「ありがとうございましたー!」と言われ、気がついたときには舞台から降りていた。


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