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優への想い
優への想い②
しおりを挟む「何ですか?俺忙しいんで手短にしてほしいんですけど」
非常階段の重たい扉を閉めては踊り場の塀に寄りかかる水澤に問いかける。
「そうカッカしないでよ。今日で代理担任最後なんだからさ」
急かしている俺を宥めるようにして言うと背広の胸ポケットから煙草を出すと何の躊躇いもなく吸う。
水澤がきて二ヶ月くらい経ったのだろうか、担任は明日帰ってくる。
最後の最後まで気を抜くことはできない。
「君さ、優作が僕と付き合ったの単に俺が脅したからと思ってる?」
「はい、あんたが脅して優を無理やりしたんでしょ」
「優作から言ってきたんだよ。まぁ意図的に脅しを掛けたのもあるけど」
千晃は水澤のところまで階段を駆け下りていくと「ふざけんな」と胸ぐらを強く掴んだ。
顔を見るだけでも虫唾が走るのに、優が水澤に脅されてたと知って余計に腹が立った。
水澤は「最後まで聞けって」と千晃の掴んだ手を乱暴に剥がす。
「でも優作は僕と付き合ったら吉岡くんに一切関わらないならって承諾したんだよ。そのときよっぽど君のこと大事なんだなーって思ったよ.......。その証拠に君に手を出したとき血相変えて怒ってたしね」
「何がいいたいんですか?」
「君、優作のこと好きな割には優作のことに鈍感だよねって話。それともわざと?こないだ君たちが話してたの立ち聞きしちゃったんだよね。優作の告白」
告白といったら、優が「付き合ってほしいって言ったら?」なんて投げかけた時。自分は優の冗談だと交わした。
「別に鈍感でもわざとでもないです。優は俺なんかタイプじゃないから、一時的な気の迷いで情に流されてなんて好きになってほしくなかったんで」
「優作が情に流されて好きになったと思う証拠でもあるの?」
「それは·····」
優作が自分を情で好きになった。
そうとでも思っていないと大きな勘違いをして傷ついてしまうのは自分だ。
近づけば触りたいとか撫でたいとか思うくせに……。
「まぁ、まだ優作のことは好きだから、僕が君らを応援するようなことはしたくないから言いたくないけど。もっと優作の心を素直に受け取ってやったらどうかな?」
素直に受け取った先には光はあるのだろうか。
優作も本当に自分のことを好きで告白してきたのだろうか…。
鉄の扉が背後でギギギと開いた音がした。
「よっしーここにいたの。早く打ち合わせ始まるから」
振り返ると辻本とその後ろに飯田が早く来いと言わんばかりに手招きをしていた。
腕時計を確認すると文化祭が始まる30分前。
今すぐにでも優作の元へ行くべきだろうが、打ち合わせに出ない訳にはいかない。
そんな迷っている俺に水澤は肩を軽く叩いてくると微笑んでは階段を下りて行った。
「おい、早く。みんなお前を待ってんだぞ」
どこか釈然としないまま、二人に急かされるように階段を駆けのぼると非常階段を後にした。
水澤の言ったことは間違っちゃいない。
自分がステージで回れないと知った時の優作の残念そうな表情と心做しか嬉しそうに「
頼む·····」と言ってきた優作を思い出す。
そんな浮かれた考えを持ってもいいのだろうか…。
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