121 / 140
優への想い
優への想い②
しおりを挟む「何ですか?俺忙しいんで手短にしてほしいんですけど」
非常階段の重たい扉を閉めては踊り場の塀に寄りかかる水澤に問いかける。
「そうカッカしないでよ。今日で代理担任最後なんだからさ」
急かしている俺を宥めるようにして言うと背広の胸ポケットから煙草を出すと何の躊躇いもなく吸う。
水澤がきて二ヶ月くらい経ったのだろうか、担任は明日帰ってくる。
最後の最後まで気を抜くことはできない。
「君さ、優作が僕と付き合ったの単に俺が脅したからと思ってる?」
「はい、あんたが脅して優を無理やりしたんでしょ」
「優作から言ってきたんだよ。まぁ意図的に脅しを掛けたのもあるけど」
千晃は水澤のところまで階段を駆け下りていくと「ふざけんな」と胸ぐらを強く掴んだ。
顔を見るだけでも虫唾が走るのに、優が水澤に脅されてたと知って余計に腹が立った。
水澤は「最後まで聞けって」と千晃の掴んだ手を乱暴に剥がす。
「でも優作は僕と付き合ったら吉岡くんに一切関わらないならって承諾したんだよ。そのときよっぽど君のこと大事なんだなーって思ったよ.......。その証拠に君に手を出したとき血相変えて怒ってたしね」
「何がいいたいんですか?」
「君、優作のこと好きな割には優作のことに鈍感だよねって話。それともわざと?こないだ君たちが話してたの立ち聞きしちゃったんだよね。優作の告白」
告白といったら、優が「付き合ってほしいって言ったら?」なんて投げかけた時。自分は優の冗談だと交わした。
「別に鈍感でもわざとでもないです。優は俺なんかタイプじゃないから、一時的な気の迷いで情に流されてなんて好きになってほしくなかったんで」
「優作が情に流されて好きになったと思う証拠でもあるの?」
「それは·····」
優作が自分を情で好きになった。
そうとでも思っていないと大きな勘違いをして傷ついてしまうのは自分だ。
近づけば触りたいとか撫でたいとか思うくせに……。
「まぁ、まだ優作のことは好きだから、僕が君らを応援するようなことはしたくないから言いたくないけど。もっと優作の心を素直に受け取ってやったらどうかな?」
素直に受け取った先には光はあるのだろうか。
優作も本当に自分のことを好きで告白してきたのだろうか…。
鉄の扉が背後でギギギと開いた音がした。
「よっしーここにいたの。早く打ち合わせ始まるから」
振り返ると辻本とその後ろに飯田が早く来いと言わんばかりに手招きをしていた。
腕時計を確認すると文化祭が始まる30分前。
今すぐにでも優作の元へ行くべきだろうが、打ち合わせに出ない訳にはいかない。
そんな迷っている俺に水澤は肩を軽く叩いてくると微笑んでは階段を下りて行った。
「おい、早く。みんなお前を待ってんだぞ」
どこか釈然としないまま、二人に急かされるように階段を駆けのぼると非常階段を後にした。
水澤の言ったことは間違っちゃいない。
自分がステージで回れないと知った時の優作の残念そうな表情と心做しか嬉しそうに「
頼む·····」と言ってきた優作を思い出す。
そんな浮かれた考えを持ってもいいのだろうか…。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
娘の競泳コーチを相手にメス堕ちしたイクメンパパ
藤咲レン
BL
【毎日朝7:00に更新します】
既婚ゲイの佐藤ダイゴは娘をスイミングスクールに通わせた。そこにいたインストラクターの山田ケンタに心を奪われ、妻との結婚で封印していたゲイとしての感覚を徐々に思い出し・・・。
キャラ設定
・佐藤ダイゴ。28歳。既婚ゲイ。妻と娘の3人暮らしで愛妻家のイクメンパパ。過去はドMのウケだった。
・山田ケンタ。24歳。体育大学出身で水泳教室インストラクター。子供たちの前では可愛さを出しているが、本当は体育会系キャラでドS。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
当たって砕けていたら彼氏ができました
ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。
学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。
教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。
諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。
寺田絋
自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子
×
三倉莉緒
クールイケメン男子と思われているただの陰キャ
そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。
お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。
お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。
年上が敷かれるタイプの短編集
あかさたな!
BL
年下が責める系のお話が多めです。
予告なくr18な内容に入ってしまうので、取扱注意です!
全話独立したお話です!
【開放的なところでされるがままな先輩】【弟の寝込みを襲うが返り討ちにあう兄】【浮気を疑われ恋人にタジタジにされる先輩】【幼い主人に狩られるピュアな執事】【サービスが良すぎるエステティシャン】【部室で思い出づくり】【No.1の女王様を屈服させる】【吸血鬼を拾ったら】【人間とヴァンパイアの逆転主従関係】【幼馴染の力関係って決まっている】【拗ねている弟を甘やかす兄】【ドSな執着系執事】【やはり天才には勝てない秀才】
------------------
新しい短編集を出しました。
詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる