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優への想い
優への想い①
しおりを挟むピロン。
スマホの通知が鳴った。
「吉岡今どこ?」というメッセージは優からだ。きっと、着付けが終わったんだろう。
「誰から?もしかして優作かな?」
非常階段の踊り場で煙草を吸っている水澤。
何故こんなことになったのは数分前、
自分が家庭科室の前で入るのを躊躇っていた時に水澤と鉢合わせしたからだ。
そろそろ終わったのを見計らって優がいる家庭科準備室まで行っては小窓から優の様子を見ていた。
遠くからだけど髪が短くなったせいか白い首筋が妙に妖艶で吉岡は目を塞ぎたくなる。
楓さんがいるとはいえ、あのまま近づいたら優に肌に触れたくなりそうだった。
煩悩を振り払いながら扉から少し離れて悶々としていると、扉と千晃の前を割るように入ってきた水澤が視界に入る。
そのまま扉を引いて中に入ろうとしていた所を手を掴んで阻止してやると小窓を覗いただけで潔くスっと体が引かれた。
「そんなとこで優作なんか覗いてまたストーカー?」
「そっちこそまだ懲りてないんですか?」
「人聞き悪いなー。でもあの優作は反則だよねー今すぐ襲いたくなる」
なんの躊躇いもなく下品なことを言う水澤を思い切り睨む。
「忘れた訳じゃないですよね?」
千晃のスマホにばっちり残っている水澤が優作の髪を切り、無理やりしようとした映像。
いざとなればそれが水澤を脅す上で強い武器になる。
千晃はいつでもスマホを出せるように右手をポケットに忍ばせて威嚇していると、水澤は観念したように頭を掻いては深く息をつくと「やれやれ」と呟いた。
「そう怖い顔しないでよ。別にとって食ったりしないから」
とって食おうとしていた水澤の言葉なんか信じられるわけがない。
「ただ、ちょっといいかな吉岡くん」
水澤は非常階段の方向に親指を指しては、来るように促してきた。
別にこいつに用はないし、何か変なことでも企んでいるんじゃないかと疑心する。
千晃はそのまま断っても良かったが水澤から優作を遠ざけたかっただけに、彼の誘いに乗っては非常階段へと向かった。
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