交わらない心

首筋のキス跡

首筋のキス跡③

「はぁ!?お前いつの間に楓と仲良くなってんだよ」
「名刺に書いてあったし。楓さんいい人だったから」  

今まで親が楓だと知った途端に離れていった奴らばっかりだったけど、やっぱり吉岡は違う。
唯一の尊敬できる楓のことを褒められるのは素直に嬉しいし、 それが吉岡なら尚更。
楓も吉岡のことをこないだ会ってから余計に気に入ったらしく二人が仲がいいのは喜ばしいことだった。

しかし、自分が聞けなかった吉岡の連絡先を意図も容易く聞き出し連絡先をとっている楓は一枚うわてで、楓のようにすんなりいかない自分に歯がゆくなる。

「楓、叔父って呼んだらキレるから気をつけた方がいいよ」
「呼ばないよ。あんな綺麗な人。優って桜田家の顔なんだね。楓さんにもだけどお母さんに凄い似てる」

「はぁ？」

吉岡は満面の笑みでスマホ画面を見せてくると画面の中の写真を目にした途端一瞬にして顔が熱くなる。

「お母さんの写真、今の優そっくりじゃん。それ以前に優のちっちゃい頃、可愛い」

笑顔の楓の隣で四歳くらいの母親に抱えられながら写ってる自分の写真。
流出源が完全に楓だというのはわかりきっているだけに楓のお喋りは半ば呆れるくらいだ。

楓と繋がることで恥ずかしくなるような過去が全部吉岡に筒抜けになってしまうんだと思うと、仲良くするのが喜ばしいなんて言った自分を前言撤回したくなる。
そんな辱めを受けている優作の傍らで、吉岡はニヤニヤと写真を眺めている姿は決して茶化しているようではなく、慈しんだ表情だったのを見逃さなかった。
先ほどの嬉しそうな反応と言い分かった上での付き合いだが、やはり先入観で表情から読み取ろうとしてしまう。 
 

「あからさますぎ·····」

吉岡に密かに向けられている好意に戸惑いながらも、優作は彼に聴こえないくらいの小声で静かにそう呟いた。