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フラワー大藪
フラワー大藪 13-1
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「あ、あのっ塩谷くん。この監督好きだって言ってたよね。
凄く温かみのある表現をしてて、人だけじゃなくてその街の風景にもこだわってるから·····って。わ、私もっ好きなんだよね」
ふわりと揺れる灰色のウエディングドレスのような生地をあしらっている淡いベージュのスカートに白いパーカー。特別目立つわけでもない、服装通りの少し大人しめの柔らかい雰囲気を纏った彼女。映画同好会の帰り際、部室出て声を掛けられたかと思えば同級生で同好会仲間の雛森小春が映画雑誌を手にして亨の好きな監督の名前を指さして見せてきた。
少し遠く離れたところには彼女の友達であろう女子二人組が此方の様子を伺ってきている。背後でガッツポーズをしては何やら応援している姿をみせているので目の前の彼女は勇気を振り絞って俺に話しかけてきたのだろう。
一、二回だけ言葉を交わした程度で深く仲いいわけではないが、雰囲気は嫌いじゃない。
「へーそうなんだ。いいよね、この監督の作品。俺も持ってるよ、その雑誌」
亨が笑顔でそう雛森に返してやると、彼女の頬がたちまち桃色に染まり、「そっか」と小さく呟いては、その先の会話が続かない。きっと異性との会話に慣れていないのだと思わせる、緊張感にどこか懐かしさを覚える。
「雛森さんは何が好き?」
「わ、私は原作小説が映像化されたやつが好きで·····」
亨は持ち前のコミュニケーション能力でと相手の緊張を解こうと問い掛けると彼女は赤面した顔のまま、たどたどしくも会話に乗ってくれた。
狭い高校生活の中では知ることのなかった世界を大学へ進学して、半年。沢山知れるようになった。集団意識だとか人の妬み嫉みを直に受けることもなくなり、自分と馬が合わない奴は避けることで回避できる。
そして、男女隔てなくこうして好きなものを通して様々な人と触れ合い、様々な価値観を見出せるのは、純粋に楽しい。同じものを見ているはずなのに人によって見方が違うのも面白かった。
「あの、塩谷君。今度この監督の映画·····」
「おい、しーおや。何話してんだよっ」
雛森と映画の話に花を咲かせていると、聞き慣れたしゃがれ声と背後から体重を掛けられ、前のめりになる。振り向くと高校からの同級生である星野が雛森と俺を交互に見てはニタニタと笑みを浮かべていた。
凄く温かみのある表現をしてて、人だけじゃなくてその街の風景にもこだわってるから·····って。わ、私もっ好きなんだよね」
ふわりと揺れる灰色のウエディングドレスのような生地をあしらっている淡いベージュのスカートに白いパーカー。特別目立つわけでもない、服装通りの少し大人しめの柔らかい雰囲気を纏った彼女。映画同好会の帰り際、部室出て声を掛けられたかと思えば同級生で同好会仲間の雛森小春が映画雑誌を手にして亨の好きな監督の名前を指さして見せてきた。
少し遠く離れたところには彼女の友達であろう女子二人組が此方の様子を伺ってきている。背後でガッツポーズをしては何やら応援している姿をみせているので目の前の彼女は勇気を振り絞って俺に話しかけてきたのだろう。
一、二回だけ言葉を交わした程度で深く仲いいわけではないが、雰囲気は嫌いじゃない。
「へーそうなんだ。いいよね、この監督の作品。俺も持ってるよ、その雑誌」
亨が笑顔でそう雛森に返してやると、彼女の頬がたちまち桃色に染まり、「そっか」と小さく呟いては、その先の会話が続かない。きっと異性との会話に慣れていないのだと思わせる、緊張感にどこか懐かしさを覚える。
「雛森さんは何が好き?」
「わ、私は原作小説が映像化されたやつが好きで·····」
亨は持ち前のコミュニケーション能力でと相手の緊張を解こうと問い掛けると彼女は赤面した顔のまま、たどたどしくも会話に乗ってくれた。
狭い高校生活の中では知ることのなかった世界を大学へ進学して、半年。沢山知れるようになった。集団意識だとか人の妬み嫉みを直に受けることもなくなり、自分と馬が合わない奴は避けることで回避できる。
そして、男女隔てなくこうして好きなものを通して様々な人と触れ合い、様々な価値観を見出せるのは、純粋に楽しい。同じものを見ているはずなのに人によって見方が違うのも面白かった。
「あの、塩谷君。今度この監督の映画·····」
「おい、しーおや。何話してんだよっ」
雛森と映画の話に花を咲かせていると、聞き慣れたしゃがれ声と背後から体重を掛けられ、前のめりになる。振り向くと高校からの同級生である星野が雛森と俺を交互に見てはニタニタと笑みを浮かべていた。
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