Broken Flower

なめめ

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突然の…

突然の····· 12-9

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「葵、待って·····」

照りつける陽射しに汗を滲ませながらも、と遠ざかる背中を必死に追いかける。葵も長袖のワイシャツでかなり汗だくな筈なのに必死に走りつづけている。そこまでして俺を避けたいのかと心が折れてしまいそうになるが、ここで諦めてしまえば一生葵にちゃんと理解してもらえぬままだ。

西田のことは事実だとしても葵に対する想いは本物であること。金輪際、葵以外の人を愛するつもりはないこと、伝えたい。葵なら分かって貰えるとそう、信じたい·····。

何度も名前を叫びながらも呼び止めるがその声は本人の耳に届いてくれない。

背中を追いかけ、花壇から陸上部がハードル練習をしているグランドを横切り、校舎裏まで辿り着いた時、流石に耐力が消耗してしまったのか、葵が両膝をついてゼェゼェと息を荒立て、整えていた。もう逃げる体力は残されていないと諭した亨ははやる気持ちを抑えながらもゆっくりと葵に近づく。

「葵、話があるんだ。俺の話を聞いてほしい·····」

「ぼ、ぼくに·····近寄らないでくださいっ」

ほんのあと2、3歩進めば葵のその細い腕を掴める距離なのに、掠れそうな大きな声で近寄ることを拒まれてピタリと足を止めた。
汗なのか涙なのか、葵が地面と平行に顔を伏せて居て分からないがポツポツと雨のように水滴が落ちては粗粒砂の地面に滲んでいく。

「西田先生のこと·····正直僕は驚かなかったんです。貴方と西田先生にその様な噂があることは知ってました·····。でも、貴方と過ごして行くうちに·····それは嘘であって欲しいと思っていた自分がいたんです。だから貴方から気持ちが浮かれるような嬉しい言葉を貰った時は本当に嬉しくて、恋人のように振舞って貰えた数日は生まれて初めて生きてて良かったって思えたんです」

昨日の事のように葵と出会った時こと、ファミレスで奢って貰った日のこと、あの花壇で葵と心穏やかな時間を過ごしたことを想起しては胸が酷く締め付けられる。

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