Broken Flower

なめめ

文字の大きさ
上 下
69 / 101
突然の…

突然の····· 12-2

しおりを挟む
『なら早く来いよ。もう授業始まるぞ?あ、やべ。先生きたから切るな』

ざわざわと騒がしい人や物の音を拾いながら慌てたように通話が切れる。亨は未だ追いつかない状況のままベッドから体を起こして部屋の掛け時計に目線を移した。

時刻は午前9時。丁度一時限目が始まる頃だった。
目覚ましは毎朝7時にセットしているし、なんなら一度目を覚ましアラームを止めた記憶だってある。葵からの電話がくると信じて再び眠りへと落ちたのだ。亨は思い立ったように手元のスマホの着信履歴を確認したが、葵からの着信はなかった。

亨にとっては一つの楽しみなイベントの一つだっただけに落胆しながらも
、何か理由があるかもしれないと己を慰める。
気を落としながらも身支度を済ませると葵に真っ先に「今日学校いる?」とメールをした。こんなときチャットアプリだと既読表示で相手がメッセージを見てくれたか確認できるのにな·····とメール故の不憫さやもどかしさを感じながらも、葵が学校に来ていたら拗ねて困らせてやろうと心に決めて部屋を出た。

静まり返った校内を焦る様子もなくゆっくり歩いて教室へ向かうと丁度
、授業の終わりを告げる予鈴が鳴り、古文の教科担任が教室から出てきた。
何事もなく教室へ入ろうとしたところで呼び止められ、小言のように説教をされる。「初犯だから見逃してやるが、次からは生徒指導だぞ」ときつく注意喚起を受けたが、聞く耳など一切なく、早く終わらないかと教師の薄く地肌が見え隠れしている頭を眺めていた。

ふと思い立って今から次の授業の間までなら葵の教室へ顔を出すことくらいできるのではないかと思った亨は、鞄を置かずにそのまま踵を返して階段を駆け降りる。目指すは三年C組の教室。

すると次の授業が移動教室なのかC組から生徒が教科書を持って出ていく姿とすれ違った。葵はいるだろうか…。やはり江藤たちを気にして教室に来ていないのではないだろうか……。それとも別の理由で…。

ゆっくりとすれ違う生徒の合間を縫ってC組の教室の手前までたどり着いたとき、葵が教室の前方の入り口から出てくる姿があった。

「あおい!」

亨は迷わず名前を呼ぶと、葵はピタリと足を止めて此方を向いた。
視線がかち合ったのを認めて、亨は大きく手を振ってみると自分の元へと向かってくる葵の姿に今か今かと待ち構える。
葵に声をかける言葉を頭に浮かばせながらその時を待っていたが、彼は俺に近づいたところであからさまに深く俯くと、避けるようにして俺の真横を横切ってしまった。

「え…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

処理中です...