Broken Flower

なめめ

文字の大きさ
上 下
36 / 101
保健室と葵

保健室と葵 6-8

しおりを挟む
放課後、下校する生徒が少なくなり校舎が閑散としてきた頃、亨は保健室へと向かった。
ドアを開ける前に深くため息を吐く。
行かないと言う選択がなかったのは、西田の怒りの限度が、誤魔化すことで宥める易くなる度合いを超えてきたと諭したからだった。
 
興味を持てなくても付き合った以上、適度に構って機嫌を取らなきゃいけない。
いつもならなんて事ないのに、今日ばかしは憂鬱で仕方ない。保健室に入ると、西田は3つ並んだベッドの真ん中に此方を背にして座っていた。

「何」

念の為に扉の内鍵を締めて西田の座っているベッドにゆっくりと近く。明らかにご立腹で腕を組んで強ばらせた横顔を眺める。
いつもの頬を膨らませて、ぶりっこしているような可愛いもんじゃない。

本気で怒っているやつだ……。

「何って亨。最近、全然来てくれないし、返事も返してくれないじゃないっ。来たと思ったら葵くん連れてくるし」

「あーごめん。星野の恋愛相談乗ったりで忙しくてさ。俺にも友達付き合いあるから。それに今日のは先輩と約束してたんだよ」

星野の恋路は自分が何もしなくても良好そうだし、特に忙しかった訳でもない。葵と保健室へ来たのも、約束していたのも嘘だ。

自分が会いたいから会いに行っただけ。

「何よ、それ。彼女のことは二の次なわけ?」
「そういう訳じゃない。頻繁に出入りして俺たちの関係がバレても困るだろ。クラスで噂にもなってる」

これは本当の話。幸いにも他の教員には耳には入っていないとはいえ、学年で誰もが知っている話だ。西田が幾ら取り繕っていても、第三者が疑ってかかれば、この狭い構内じゃあっという間に噂が立つ。

「じゃあせめて、連絡くらい返しなさいよ」
「それはごめん……」

気が乗らなかったから返信を返さなかった。
そんなことを馬鹿正直に返したら火に油を注ぐのは分かりきっていたことなので、ここは素直に謝ることをした。それと同時に恋人同士ってこんなにも窮屈なものだっただろうかと疑念を抱く。

「亨の連絡無精はいつものことだし、まぁいいわ。それよりも、昼休み葵くんに触ろうとしてたでしょ?」

此方が謝ったことで、収まったと思った怒りの次は、何かを探るように鋭く睨んでくる西田にドキリとする。単純に葵に触れたらどうなるのだろうかと好奇心で伸ばした手。

そに疚しい想いなんてない。
だから何だというのだろうか。

「別に葵先輩に触ろうとしたからって何ともないだろ、向こうも男なんだし。ただゴミがついてたから払ってあげようとしただけだよ」

「でも、亨、見た事ない顔してた」

「見たことって……」
「まるで愛しいものにでも触れようとしてみたいだった」

愛しい……?
そんなことを意識して葵を見ていたつもりはなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...