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保健室と葵
保健室と葵 6-8
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放課後、下校する生徒が少なくなり校舎が閑散としてきた頃、亨は保健室へと向かった。
ドアを開ける前に深くため息を吐く。
行かないと言う選択がなかったのは、西田の怒りの限度が、誤魔化すことで宥める易くなる度合いを超えてきたと諭したからだった。
興味を持てなくても付き合った以上、適度に構って機嫌を取らなきゃいけない。
いつもならなんて事ないのに、今日ばかしは憂鬱で仕方ない。保健室に入ると、西田は3つ並んだベッドの真ん中に此方を背にして座っていた。
「何」
念の為に扉の内鍵を締めて西田の座っているベッドにゆっくりと近く。明らかにご立腹で腕を組んで強ばらせた横顔を眺める。
いつもの頬を膨らませて、ぶりっこしているような可愛いもんじゃない。
本気で怒っているやつだ……。
「何って亨。最近、全然来てくれないし、返事も返してくれないじゃないっ。来たと思ったら葵くん連れてくるし」
「あーごめん。星野の恋愛相談乗ったりで忙しくてさ。俺にも友達付き合いあるから。それに今日のは先輩と約束してたんだよ」
星野の恋路は自分が何もしなくても良好そうだし、特に忙しかった訳でもない。葵と保健室へ来たのも、約束していたのも嘘だ。
自分が会いたいから会いに行っただけ。
「何よ、それ。彼女のことは二の次なわけ?」
「そういう訳じゃない。頻繁に出入りして俺たちの関係がバレても困るだろ。クラスで噂にもなってる」
これは本当の話。幸いにも他の教員には耳には入っていないとはいえ、学年で誰もが知っている話だ。西田が幾ら取り繕っていても、第三者が疑ってかかれば、この狭い構内じゃあっという間に噂が立つ。
「じゃあせめて、連絡くらい返しなさいよ」
「それはごめん……」
気が乗らなかったから返信を返さなかった。
そんなことを馬鹿正直に返したら火に油を注ぐのは分かりきっていたことなので、ここは素直に謝ることをした。それと同時に恋人同士ってこんなにも窮屈なものだっただろうかと疑念を抱く。
「亨の連絡無精はいつものことだし、まぁいいわ。それよりも、昼休み葵くんに触ろうとしてたでしょ?」
此方が謝ったことで、収まったと思った怒りの次は、何かを探るように鋭く睨んでくる西田にドキリとする。単純に葵に触れたらどうなるのだろうかと好奇心で伸ばした手。
そに疚しい想いなんてない。
だから何だというのだろうか。
「別に葵先輩に触ろうとしたからって何ともないだろ、向こうも男なんだし。ただゴミがついてたから払ってあげようとしただけだよ」
「でも、亨、見た事ない顔してた」
「見たことって……」
「まるで愛しいものにでも触れようとしてみたいだった」
愛しい……?
そんなことを意識して葵を見ていたつもりはなかった。
ドアを開ける前に深くため息を吐く。
行かないと言う選択がなかったのは、西田の怒りの限度が、誤魔化すことで宥める易くなる度合いを超えてきたと諭したからだった。
興味を持てなくても付き合った以上、適度に構って機嫌を取らなきゃいけない。
いつもならなんて事ないのに、今日ばかしは憂鬱で仕方ない。保健室に入ると、西田は3つ並んだベッドの真ん中に此方を背にして座っていた。
「何」
念の為に扉の内鍵を締めて西田の座っているベッドにゆっくりと近く。明らかにご立腹で腕を組んで強ばらせた横顔を眺める。
いつもの頬を膨らませて、ぶりっこしているような可愛いもんじゃない。
本気で怒っているやつだ……。
「何って亨。最近、全然来てくれないし、返事も返してくれないじゃないっ。来たと思ったら葵くん連れてくるし」
「あーごめん。星野の恋愛相談乗ったりで忙しくてさ。俺にも友達付き合いあるから。それに今日のは先輩と約束してたんだよ」
星野の恋路は自分が何もしなくても良好そうだし、特に忙しかった訳でもない。葵と保健室へ来たのも、約束していたのも嘘だ。
自分が会いたいから会いに行っただけ。
「何よ、それ。彼女のことは二の次なわけ?」
「そういう訳じゃない。頻繁に出入りして俺たちの関係がバレても困るだろ。クラスで噂にもなってる」
これは本当の話。幸いにも他の教員には耳には入っていないとはいえ、学年で誰もが知っている話だ。西田が幾ら取り繕っていても、第三者が疑ってかかれば、この狭い構内じゃあっという間に噂が立つ。
「じゃあせめて、連絡くらい返しなさいよ」
「それはごめん……」
気が乗らなかったから返信を返さなかった。
そんなことを馬鹿正直に返したら火に油を注ぐのは分かりきっていたことなので、ここは素直に謝ることをした。それと同時に恋人同士ってこんなにも窮屈なものだっただろうかと疑念を抱く。
「亨の連絡無精はいつものことだし、まぁいいわ。それよりも、昼休み葵くんに触ろうとしてたでしょ?」
此方が謝ったことで、収まったと思った怒りの次は、何かを探るように鋭く睨んでくる西田にドキリとする。単純に葵に触れたらどうなるのだろうかと好奇心で伸ばした手。
そに疚しい想いなんてない。
だから何だというのだろうか。
「別に葵先輩に触ろうとしたからって何ともないだろ、向こうも男なんだし。ただゴミがついてたから払ってあげようとしただけだよ」
「でも、亨、見た事ない顔してた」
「見たことって……」
「まるで愛しいものにでも触れようとしてみたいだった」
愛しい……?
そんなことを意識して葵を見ていたつもりはなかった。
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