17 / 101
僅かな心の変化
僅かな心の変化 4-4
しおりを挟む
葵はゆっくりと立ち上がる。
「華やかな色の入ったアレンジメントを渡すとだいたいは喜ばれるかと·····。あと、お母様が何色好きかどんな花が好きかで変わりますが·····」
葵が右手で左指を触りながら身振りを交えて一生懸命に話すものだから、亨は葵の手に目がいっていた。
土作業を嫌うような西田のネイルで色鮮やかなうえに立てられたら傷が残りそうな鋭い爪とは違う。
崩れた花の修復作業をしていた途中だからなのか、土まみれに茶色くなった手は決して綺麗ではないのに、なんだか細くて手を伸ばしたくなる。
伸ばしたくなる·····?
「あの·····」
葵に顔を覗き込まれてるように問いかけられて、我に返った。
「あぁ·····そっか、ありがとう」
「あの·····もし良かったら·····塩谷くんの花束僕が作ります」
「うん、まだ具体的なことは決めてないから考えておくよ」
「はい」
母親に花を贈るなんて嘘だ。
考えておくなんて言っておいて亨には全く考える気などなかった。
自分との会話で少しでも沈んだ葵の気持ちが軽くなればと思ったが、張り切ったように嬉しそうに返事をしてきたので悪い事をしてしまったかもという気持ちになる。
「あ、先程はありがとうございました。やっぱり塩谷くんは僕の救世主です」
照れたようにはにかんできた葵に胸がトクンと、鳴った。
表面上の言葉しか言っていないことを真面に本当だと捉えてしまうし、所詮偽善の優しさしか出来なかった自分に対して、優しいと言ってくれる葵の姿を見ていると胸が痛む。
親鳥を人間の自分だと信じて疑わない、産まれたての雛鳥に好かれたみたいな、そんな気持ちだろうか。
真面目で純粋な男と適当に嘘なんか平気でついて誤魔化すようや自分とじゃ立っている場所が違う。
だけど、自然と距離置こうなんて気にはならなかった。
「華やかな色の入ったアレンジメントを渡すとだいたいは喜ばれるかと·····。あと、お母様が何色好きかどんな花が好きかで変わりますが·····」
葵が右手で左指を触りながら身振りを交えて一生懸命に話すものだから、亨は葵の手に目がいっていた。
土作業を嫌うような西田のネイルで色鮮やかなうえに立てられたら傷が残りそうな鋭い爪とは違う。
崩れた花の修復作業をしていた途中だからなのか、土まみれに茶色くなった手は決して綺麗ではないのに、なんだか細くて手を伸ばしたくなる。
伸ばしたくなる·····?
「あの·····」
葵に顔を覗き込まれてるように問いかけられて、我に返った。
「あぁ·····そっか、ありがとう」
「あの·····もし良かったら·····塩谷くんの花束僕が作ります」
「うん、まだ具体的なことは決めてないから考えておくよ」
「はい」
母親に花を贈るなんて嘘だ。
考えておくなんて言っておいて亨には全く考える気などなかった。
自分との会話で少しでも沈んだ葵の気持ちが軽くなればと思ったが、張り切ったように嬉しそうに返事をしてきたので悪い事をしてしまったかもという気持ちになる。
「あ、先程はありがとうございました。やっぱり塩谷くんは僕の救世主です」
照れたようにはにかんできた葵に胸がトクンと、鳴った。
表面上の言葉しか言っていないことを真面に本当だと捉えてしまうし、所詮偽善の優しさしか出来なかった自分に対して、優しいと言ってくれる葵の姿を見ていると胸が痛む。
親鳥を人間の自分だと信じて疑わない、産まれたての雛鳥に好かれたみたいな、そんな気持ちだろうか。
真面目で純粋な男と適当に嘘なんか平気でついて誤魔化すようや自分とじゃ立っている場所が違う。
だけど、自然と距離置こうなんて気にはならなかった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる