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夜空の下で……
夜空の下で……⑥
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歩み寄れたと思ったら怒らせて突き放されてと彼の言動に翻弄されていると藤咲が「あんたって彼女とかできても振られるタイプだろ」と確信を突いてきた。
前例があるだけに否定は出来ない。
過大評価をしている訳ではなくて、我ながら言うのも可笑しな話だが、過去にメディアで活動していただけあって顔は悪くないと言われている。
おまけに、真面目そうで気配りの出来るからと周りには好感を持たれ、期待値を上げて近寄ってくる女性が多い。
しかし、付き合ってみれば、行くデートの先々は天体観測ばかりで、「大樹くんってつまらない」と振られることがしばしあった。
大樹自身、女心·····というより恋情が絡んでくると自分の気持ちと相手の気持ちが同じであると思い込む傾向があるのだろうか。相手の為にと思って行動しても彼女の望むものとは違う的外れな事をしていたりする。
好きすぎて大切にしているつもりでも、それが彼女たちには重く感じてしまうのだろうか。
藤咲の問いに「まぁ·····確かに振られる方が多いかもな·····自分でも相手が望むものと違うことをしている自覚はあるよ」と一昨年、律仁に近づくために利用されていたことなど知らずに本気で好意を寄せていた女性を思い出しては苦い気持ちになる。
そういえばあの一件以来誰かに恋焦がれるなんてことはなかったな·····。
「的外れだったとしても、あんたが人を思いやれる心は本物だろ··········じゃないと、僕のこと·····たすけないだろうし·····さっきの温泉の時だって·····わざわざ僕の様子を見に来てくれた·····」
吃らせながらもそう訴えてきた藤咲が、彼なりの俺に対する助言のような気がして自然と口元が綻んでいた。洗い物を代わってくれた時といい、一件解りにくいけど·····幼いながらに俺の気持ちを汲んでくれていた彼が確かにいる。「な、何笑ってんのっ」と大樹の綻ぶ笑顔を見て、怒る藤咲がいじらしくて更に声を上げて笑う。
「なんか、藤咲と話してると落ち着くな」
少しだけ彼のことが分ったような気がして嬉しくなった。大樹が笑っていると、普段はにべも無い態度の彼の頬が少しだけ紅潮し「僕は·····あんたと喋ると落ち着かなくなるから嫌だ·····」と流し台から洗い物籠を奪うように持っては、足早にその場から離れていった。
俺と話すのは嫌だと言われたのに、差程凹まなかった。思い過ごしかもしれないが、藤咲から本当に嫌がっているような気がしない。
もう少し、彼の心に踏み込めたら·····。
大樹は彼の後ろ姿を眺めながら、少しずつ膨らんでいく彼に対する欲深い何かに胸が騒ぎ出す。沖から押し寄せる波がかさを増して迫ってきているような感覚に違和感を覚えていた。まるで藤咲ごと呑み込むかのような·····。
前例があるだけに否定は出来ない。
過大評価をしている訳ではなくて、我ながら言うのも可笑しな話だが、過去にメディアで活動していただけあって顔は悪くないと言われている。
おまけに、真面目そうで気配りの出来るからと周りには好感を持たれ、期待値を上げて近寄ってくる女性が多い。
しかし、付き合ってみれば、行くデートの先々は天体観測ばかりで、「大樹くんってつまらない」と振られることがしばしあった。
大樹自身、女心·····というより恋情が絡んでくると自分の気持ちと相手の気持ちが同じであると思い込む傾向があるのだろうか。相手の為にと思って行動しても彼女の望むものとは違う的外れな事をしていたりする。
好きすぎて大切にしているつもりでも、それが彼女たちには重く感じてしまうのだろうか。
藤咲の問いに「まぁ·····確かに振られる方が多いかもな·····自分でも相手が望むものと違うことをしている自覚はあるよ」と一昨年、律仁に近づくために利用されていたことなど知らずに本気で好意を寄せていた女性を思い出しては苦い気持ちになる。
そういえばあの一件以来誰かに恋焦がれるなんてことはなかったな·····。
「的外れだったとしても、あんたが人を思いやれる心は本物だろ··········じゃないと、僕のこと·····たすけないだろうし·····さっきの温泉の時だって·····わざわざ僕の様子を見に来てくれた·····」
吃らせながらもそう訴えてきた藤咲が、彼なりの俺に対する助言のような気がして自然と口元が綻んでいた。洗い物を代わってくれた時といい、一件解りにくいけど·····幼いながらに俺の気持ちを汲んでくれていた彼が確かにいる。「な、何笑ってんのっ」と大樹の綻ぶ笑顔を見て、怒る藤咲がいじらしくて更に声を上げて笑う。
「なんか、藤咲と話してると落ち着くな」
少しだけ彼のことが分ったような気がして嬉しくなった。大樹が笑っていると、普段はにべも無い態度の彼の頬が少しだけ紅潮し「僕は·····あんたと喋ると落ち着かなくなるから嫌だ·····」と流し台から洗い物籠を奪うように持っては、足早にその場から離れていった。
俺と話すのは嫌だと言われたのに、差程凹まなかった。思い過ごしかもしれないが、藤咲から本当に嫌がっているような気がしない。
もう少し、彼の心に踏み込めたら·····。
大樹は彼の後ろ姿を眺めながら、少しずつ膨らんでいく彼に対する欲深い何かに胸が騒ぎ出す。沖から押し寄せる波がかさを増して迫ってきているような感覚に違和感を覚えていた。まるで藤咲ごと呑み込むかのような·····。
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