君のために僕は歌う

なめめ

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すれ違う方向

すれ違う方向①

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深夜の生放送の歌番組の収録。
司会者に期待の超新星アイドル『Star-Eyesスターアイズ』と紹介されて映し出される背中合わせの身長差のあるシルエット。

イントロと同時に二人息を合わせて左右に別れるとステップを踏んで踊る。
イントロが終わり、律仁から始まる歌い出しでカメラがアップに寄ると
とびきりのアイドルスマイルを向けた。

子役時代からカメラを向けられることに慣れていたせいか、ブランクはあったが卒なくこなすことができた。一方で大樹はテレビカメラに慣れていないのか緊張で声が上擦り、音を外してしまっていたが直ぐに持ち直したところは流石、演奏の舞台に立っていただけあると感心した。

「律仁くんごめん。緊張で音外しちゃった」
「別に構わないよ。まだこれからだし、数こなせばものにできるようになるからさ。気にすんなよ」

収録が終わり、楽屋へ戻ると真っ先に大樹に謝られたが律仁は彼の肩を叩いて笑顔でフォローの言葉をかける。

「でも律仁くん……。お披露目前までは先生に怒られるくらいやる気なかったのにどうして急に……」
「さぁ、どうしてだろうな。単純にお前とトップアイドル目指したくなったんだよ。お前の夢を叶えるためにもさ。トップになれれば大樹のオヤジだって勉強、認めてくれんだろ?」

「う、うん……。たぶん」

ぎこちなく頷く大樹を余所に鼻唄を歌いながら調子づいたことを言う。
トップアイドルを目指すのは律仁の目標であっても、大樹の夢を叶えるためなのかは単なるオマケに過ぎなかった。

本当は音楽フェスの出演前に鈴奈と話してから、律仁の意欲は180度変わった。トップになれば彼女は見直して自分と一緒にいてくれる。
その為に自分は頑張らなきゃいけない。アイドルとして売れなければならない。

初ステージでは練習で惰性でやっていた振付を全力で踊った。
たった一曲だけだが、汗だくになるくらい。
大樹は律仁の変わりように驚いていたが、すぐに律仁のペースに合わせられていた彼のおかげもあってか初お披露目は大成功に終わった。

終演後からSNSの公式アカウントのフォロワーは急上昇し、好調な滑り出しだった。鈴奈のように急に人気が上昇するような現象は起きる事はなかったが、律仁の子役時代からのファンの効果もあってか、テレビに出る度に反響は増えていた。


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