君のために僕は歌う

シークレットライブ

シークレットライブ⑤

事前に警察署に行って路上ライブの許可証を申請し受け取ると、動画に投稿用のカメラもセッティングが完了した。

ガードレール前に二人で並んで演奏をする。
既存のカバー曲で客を惹き付けていると、流石と言うべきなのか、鈴奈の声に吸い寄せられるように人々が立ち止まって静聴していた。

二曲目は吉澤に売れる曲では無いと突き返された自分たちの持ち歌を披露すると、歌い終えた最後には数名が拍手をしていた。自分たちの作った曲は決して誰にも見向きされない訳じゃない。刺さる人には刺さってくれるのだと律仁に自信を大きくつけた。

何よりも今まで観客側だった律仁が、人前で歌ったことで自分の声で歌を聴いてもらうことへの高揚感を思い出した気がした。
この路上ライブを皮切りに鈴奈との水面下での活動が始まる。
もちろん自分たちの力で大々的な活動をする力はないので、地道の路上ライブで地名をあげていくしかない。

それに加え律仁は四月に入ると高校入学と同時に吉澤の宣言通りにダンスレッスンが始まった。

本心では受けたくなかったが、下手に反発して鈴奈との活動を勘繰られて全てを台無しにしたくなかった律仁は、素直に放課後はレッスンを受け、帰宅後は鈴奈との曲の二曲目を作るべく夜な夜な作業をしていたことにより、学校に居る間はほぼほぼ眠り呆けていた。


鈴奈と会う日数は減ってはいたものの、こまめに連絡はとり合っていたし
毎週日曜日の律仁のダンスレッスン後の夜は唯一の鈴奈と会える時間だった。