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第十四話 リベンジ
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サトーの声質でオレはいかにヤツが不敵な笑みを浮かべているかを容易に想像できた。
「さて、どうするね、トーリ君? 火あぶりと銃、あとはナイフという三択があるのだが……う~ん、迷うな」
「サトー! 貴様のせいでどれだけの血が流れたと思っているんだ!?」
「それが遺言かね、トーリ君。嘆かわしいな~、最期まで軍人であろうとする姿勢は立派だが面白くなさすぎる。もっと楽しむべきだった、君は」
「どの口がほざいている!?」
「ああー、もういい。うるさいよ、君は。そして決めた。銃はあっけなさすぎる。ナイフは君の野生の勘で回避されるかもしれない。消去法で私の術で焼き殺そう。死体の処理もしなくていいように。ではさらばだ」
オレはこの瞬間、覚悟を決めたが――
確かに強風とガスバーナー点火の音が入り混じったようなノイズはあった。だが――
「ど、どういうことだ!?」
サトーは慌てている。
「むん!! ……なに!?」
ヤツは再噴射したのだと思うが動揺はさらに大きくなっているのが声でわかる。
「トーリさん、銃を構えて! 私が防御していますから炎に巻かれる心配はありません」
「わかった」
アメリはゆだねて欲しいと言った。オレはその言葉を信じよう。それしかできない。
ゆっくりと立ち上がって銃を構える。そしてオレの両腕にそっと手を添えて微調整を加えるアメリ。
「撃って」
オレは言われた通り引き金を引いた。
「うあ!!」
サトーの声だ。直後重量物が落下した音がした。多分、サトーが倒れたのだ。
「アメリ! やったか?」
「……ええ。アミーは死にました」
「そ、そうか、やったか」
オレは安堵し、膝をついた。
「トーリさん、最後に貴方の目を直します、じっとして」
「え?」
目の周辺がなんともいえない温もりと爽やかな風に当たっているかのような感覚になった。それこそずーっと味わいたい気分だ。
五分ほどして。
「トーリさん、終わりましたよ。もう大丈夫です。目を開けて下さい」
恐る恐る瞼を開ける……
「う、眩しい……」
そうだ、今はまだ日中だった。そして全ての景色がクリアに見えた。
眼下には額を撃ち抜かれたサトーの骸が転がっていた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、有難う、アメリ。でも本当に良かった。妹のシリさんにもこれでいい報告が――」
「トーリさん、ごめんなさない。今の私は残留思念で作られた分身で長くは存在できません。本当の私はご存じの通り死んでいます。目が見えない時にも私が見えていたのは直接思念に投影していたからです」
「そ、そんな……」
「時間がありません。アイカとルクシーですが……」
「……シリから聞いた。二人は妖精なんだってな?」
シリからイチョウの葉を手渡される時にオレは既にこの事実を伝えられていた。
「ええ。二人の父は病死でしたが、母は軍人姿のアミーが戦争の火種とするためにいけにえのように銃殺されました。そのショックで二人は出自についての記憶を失っています。さらに人間の住む山の中に放り出されてしまったので、私たちは思うように探すことが出来ませんでした。そこを貴方が保護して下さったのです。それとトーリさん……」
「言われなくたって、今までもこれからもあの二人はオレの娘と思っているよ。もし妖精たちが許してくれるならだけど」
「二人は自分を妖精と思っていません。ですが数年すると体の変化で気付きます。いつ真実を伝えるか、トーリさんに任せなくてはいけませんが宜しいですか?」
「どんな境遇だろうと年頃の娘の扱いは難しいもんだろ? 大丈夫」
「ありがとう……」
「いいや、アメリ……オレが君の命を奪ったというのに……ありがとう」
「いいえ……すみませんが時間です。どうかお元気で。私もトーリさんのことは決して忘れません」
アメリは霧のように消えた。
オレの目からはあとからあとから涙があふれて止まらない。
「さて、どうするね、トーリ君? 火あぶりと銃、あとはナイフという三択があるのだが……う~ん、迷うな」
「サトー! 貴様のせいでどれだけの血が流れたと思っているんだ!?」
「それが遺言かね、トーリ君。嘆かわしいな~、最期まで軍人であろうとする姿勢は立派だが面白くなさすぎる。もっと楽しむべきだった、君は」
「どの口がほざいている!?」
「ああー、もういい。うるさいよ、君は。そして決めた。銃はあっけなさすぎる。ナイフは君の野生の勘で回避されるかもしれない。消去法で私の術で焼き殺そう。死体の処理もしなくていいように。ではさらばだ」
オレはこの瞬間、覚悟を決めたが――
確かに強風とガスバーナー点火の音が入り混じったようなノイズはあった。だが――
「ど、どういうことだ!?」
サトーは慌てている。
「むん!! ……なに!?」
ヤツは再噴射したのだと思うが動揺はさらに大きくなっているのが声でわかる。
「トーリさん、銃を構えて! 私が防御していますから炎に巻かれる心配はありません」
「わかった」
アメリはゆだねて欲しいと言った。オレはその言葉を信じよう。それしかできない。
ゆっくりと立ち上がって銃を構える。そしてオレの両腕にそっと手を添えて微調整を加えるアメリ。
「撃って」
オレは言われた通り引き金を引いた。
「うあ!!」
サトーの声だ。直後重量物が落下した音がした。多分、サトーが倒れたのだ。
「アメリ! やったか?」
「……ええ。アミーは死にました」
「そ、そうか、やったか」
オレは安堵し、膝をついた。
「トーリさん、最後に貴方の目を直します、じっとして」
「え?」
目の周辺がなんともいえない温もりと爽やかな風に当たっているかのような感覚になった。それこそずーっと味わいたい気分だ。
五分ほどして。
「トーリさん、終わりましたよ。もう大丈夫です。目を開けて下さい」
恐る恐る瞼を開ける……
「う、眩しい……」
そうだ、今はまだ日中だった。そして全ての景色がクリアに見えた。
眼下には額を撃ち抜かれたサトーの骸が転がっていた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、有難う、アメリ。でも本当に良かった。妹のシリさんにもこれでいい報告が――」
「トーリさん、ごめんなさない。今の私は残留思念で作られた分身で長くは存在できません。本当の私はご存じの通り死んでいます。目が見えない時にも私が見えていたのは直接思念に投影していたからです」
「そ、そんな……」
「時間がありません。アイカとルクシーですが……」
「……シリから聞いた。二人は妖精なんだってな?」
シリからイチョウの葉を手渡される時にオレは既にこの事実を伝えられていた。
「ええ。二人の父は病死でしたが、母は軍人姿のアミーが戦争の火種とするためにいけにえのように銃殺されました。そのショックで二人は出自についての記憶を失っています。さらに人間の住む山の中に放り出されてしまったので、私たちは思うように探すことが出来ませんでした。そこを貴方が保護して下さったのです。それとトーリさん……」
「言われなくたって、今までもこれからもあの二人はオレの娘と思っているよ。もし妖精たちが許してくれるならだけど」
「二人は自分を妖精と思っていません。ですが数年すると体の変化で気付きます。いつ真実を伝えるか、トーリさんに任せなくてはいけませんが宜しいですか?」
「どんな境遇だろうと年頃の娘の扱いは難しいもんだろ? 大丈夫」
「ありがとう……」
「いいや、アメリ……オレが君の命を奪ったというのに……ありがとう」
「いいえ……すみませんが時間です。どうかお元気で。私もトーリさんのことは決して忘れません」
アメリは霧のように消えた。
オレの目からはあとからあとから涙があふれて止まらない。
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