4 / 6
モノクローム
しおりを挟む
帰りの電車の窓から見える景色は、曇り空で、車内の光景も俺には灰色に映った。
南那がいるだけで、この世界には色がつく。
南那がいないだけで、この世界はモノクロになるんだ。
横を見ても、行きの電車では南那が笑っていたのに、もう南那はいない。
どれだけ残像を探しても、見つからない。
もう南那の乗った飛行機は飛び立った時間だ。
──今頃どこの上空を飛んでいるのだろう。南那の目には何が映っているのだろう。
*
明日からこのモノクロの街を、もがきながら仕事に行くんだな……と思いながら家に帰り、いつもの癖でテレビをつけた。
一人暮らしをしているとやはり淋しいもので、つい見る番組もないのにテレビをつけてしまう。
テレビから聞こえてきたのは、耳を疑うアナウンサーの言葉だった。
「えー、速報です。ただいま入った情報によりますと、東京発大阪行きの369便がレーダーから消えた模様です。現在無線の連絡は途絶えたままになっているということで、陸上自衛隊および海上自衛隊が捜索にあたっています。繰り返します、東京発大阪行きの……」
──え……? 事……故……?
思わず音量を上げて画面にしがみつく。
「嘘……だろ……? 南那……」
俺は震える手でリモコンを操作し、詳しく報道しているチャンネルを探した。
けれど、どこの放送局も墜落したような機体は見つからないと報道している。
自衛隊が上から撮影している映像を見ても、煙も上がっていなければ機体が落ちている様子も見受けられなかった。
「そんな顔しないでよ! また会えるんだし」──
別れる間際に南那が笑って言った言葉が反芻される。
また会える? そんな保証は生きている中でどこにもない。今日会った人と明日もまた会える保証など、どこにも、誰にもないのだ。
あの時、俺が南那に『まだ帰るな』なんて言ってもチケットは取ってあったわけだから、南那はあの飛行機に乗っただろう。運命は変えられないのだ。
南那、今どこにいる? 何が見えてる?
南那がいるだけで、この世界には色がつく。
南那がいないだけで、この世界はモノクロになるんだ。
横を見ても、行きの電車では南那が笑っていたのに、もう南那はいない。
どれだけ残像を探しても、見つからない。
もう南那の乗った飛行機は飛び立った時間だ。
──今頃どこの上空を飛んでいるのだろう。南那の目には何が映っているのだろう。
*
明日からこのモノクロの街を、もがきながら仕事に行くんだな……と思いながら家に帰り、いつもの癖でテレビをつけた。
一人暮らしをしているとやはり淋しいもので、つい見る番組もないのにテレビをつけてしまう。
テレビから聞こえてきたのは、耳を疑うアナウンサーの言葉だった。
「えー、速報です。ただいま入った情報によりますと、東京発大阪行きの369便がレーダーから消えた模様です。現在無線の連絡は途絶えたままになっているということで、陸上自衛隊および海上自衛隊が捜索にあたっています。繰り返します、東京発大阪行きの……」
──え……? 事……故……?
思わず音量を上げて画面にしがみつく。
「嘘……だろ……? 南那……」
俺は震える手でリモコンを操作し、詳しく報道しているチャンネルを探した。
けれど、どこの放送局も墜落したような機体は見つからないと報道している。
自衛隊が上から撮影している映像を見ても、煙も上がっていなければ機体が落ちている様子も見受けられなかった。
「そんな顔しないでよ! また会えるんだし」──
別れる間際に南那が笑って言った言葉が反芻される。
また会える? そんな保証は生きている中でどこにもない。今日会った人と明日もまた会える保証など、どこにも、誰にもないのだ。
あの時、俺が南那に『まだ帰るな』なんて言ってもチケットは取ってあったわけだから、南那はあの飛行機に乗っただろう。運命は変えられないのだ。
南那、今どこにいる? 何が見えてる?
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
星の声を聴く少女
最高の晩餐
SF
星の声を聴く少女、星野ひかり。彼女は、高次元生命体アスターと共に、地球の未来を守るために立ち上がる。
これは、ひとりの少女が宇宙規模の戦いに巻き込まれ、自らの能力と向き合いながら成長していく物語。そして、友情と愛、そして希望の物語である。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
ご近所STORYⅡ エレクトリックダンス【改訂版】
主道 学
SF
2047年
C区の全面的技術提供案。スリー・C・バックアップには、裏の顔があった。
日本の将来は非人間的な政策が施されようとしていた。
その時。なんと、C区の陰謀に一人の男が立ち上がった。
ちょっぴりシリアス。たまに笑えるラブストーリー。
前作のご近所物語 ハイブラウシティ・Bをお読みでなくともお楽しみ頂けるように書きましたが、前作をお読み頂いた方がよりお楽しみ頂けるようになっています。
すいません(汗)不定期更新です(汗)時々加筆修正します(汗)
お暇つぶし程度にお読み下さいませ
時の迷い子
naomikoryo
ファンタジー
『時の迷い子』は、失った愛と再生をテーマにした感動の物語です。主人公のケンは、愛する幼馴染のユウコを突然失い、悲しみに暮れていた。ある日、彼は不思議な力で過去に戻ることができる時計を手に入れ、再びユウコと出会う。しかし、彼女は過去の存在であり、彼が選ぶべき未来との狭間で葛藤することになる。
物語は、ケンがユウコとの楽しい思い出を振り返りながら、過去の痛みと向き合う姿を描いています。彼はユウコの笑顔に心を奪われ、彼女と共に過ごす幸せな瞬間を楽しむ一方で、現実と過去にしがみつく自分との闘いに悩む。果たして、彼はユウコと共に生きる未来を選ぶことができるのか?
『時の迷い子』は、愛の力と時間の流れの中で成長する主人公の姿を通じて、希望や再生、そして運命の選択の重要性を問いかけます。心温まるエモーショナルなストーリーが、あなたの心に響くことでしょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる