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皇主の憂鬱
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「じゃ、じゃあ、レティシアは……俺のどこが好き?好きなところは、あるよね?」
考え込んだ末にレギアスが必死な感じで聞いてきた。後ろを振り返って見てみると可愛くてつい顔が緩む。
「……うーん…………全部?レギアスは?」
「!!」
私の言葉にレギアスがわかりやすく顔を綻ばせた。子犬の耳と尻尾の幻覚が見える。可愛い。
「お、俺も!レティシアの全てを愛してる!」
興奮したレギアスがカウチソファで膝に乗せていた私を押し倒し、深く口付けてきた。
子犬じゃなかった。獰猛な大型犬だった……
さっきイったばかりなのにまたそんなことされたら……
「ん、んんっ、や、こら!ダメ!レギアス!離して!離しなさいっ!!い、痛いっ、もう、痛いってば!!」
レギアスは暴れる私を抑えながら耳や首筋に食いつき、今はドレス越しに肩にかぶり付いている。
さっきはちゃんと甘噛みだったのに……また歯形が増えちゃう。
「カラザイム国王夫妻がもうすぐお着きになりますので……レギアス殿下、陛下を離してください」
ハンナを筆頭に侍女たちが私の支度をしようと集まってレギアスに冷たい視線を送っていた。
ふてくされながらしぶしぶ私を解放するレギアス。
「主様、この男のこんなところもお好きなんですの?」
「え?ええと……まあ、そうね……」
レギアスがそれを聞いてご機嫌で私の手を取り指にキスしている。
「恋は盲目ってことなのかしら?私にはさっぱりわかりませんわ」
「レティシアは俺にいじめられるのが好きなんだ」
目を閉じながら得意気に私の手に頬を擦り寄せているレギアスが侍女達に睨まれている。
私は否定も肯定もできず、侍女たちに髪とメイクとドレスを直されながら固まっていた。
なんか……いたたまれない……
このあと数組の国賓対応をし、ディナーの席でもまとめて相手をした。
国の北側には山脈があり、山間の中に小国が点在している。我が国の豊かさに頼る国も多いから当然のように近隣からの弔問は多い。たいてい仲が良いし本当に気遣ってくれているから嬉しいし負担は少ない。
けれど東側には砂漠や荒野が広がっていて、我が国の豊かな国土を妬んでともすれば侵略を虎視眈々と狙っていたりする。帝国が更に東側にあるので傘下の国も多いし何をしてくるかわかったものではない。
弔問に来られても何か工作しに来てるのではと疑ってしまう。今のところ祝福の際に敵意や悪意は感じ取れないけれど、対策済みの人選なのだろう。
はぁ、この生活があと1週間続くのかと思うとクラクラしてくる。しかも後になるほど恐らく数は増えるのだ。
ドラゴンみたいに高速の移動手段をもってる国なんてほとんどないんだもの。
国葬に間に合わない遠方の国からも手紙がちらほら届いていて返事も書かなければならない。
返事を書くのは官僚にほとんど丸投げしてもいいのだけど、それなりに目は通さないといけないから空き時間も休んでいられない。
普段の皇主の仕事はそれほどないけれど、外交が関わると途端に忙しい。覚悟していた事だけど時々逃げ出したくなる。
そんなだからレギアスに迫られると流されてしまうのも仕方がないと思うの。
嫌なことも大変なことも全部忘れてレギアスに溺れていられる時間は抗いがたい魅力があって……
でもここで私がレギアスに溺れて仕事がおざなりになったりしたら、ダメ皇主だとヒソヒソされてレギアスが傾国の悪魔とか呼ばれるのよね……
グルグル考えながらため息をついているとレギアスに顔を覗きこまれた。
「考え事?このままだと部屋のドアにぶつかるよ?」
顔をあげると目の前にレギアスの美しい顔と、近衛に護られた自室のドアがあった。
レギアスが私の額にキスをするとドアを開けて部屋の中に促してくれる。
「レギアスって傾国の美形王子様よね」
「ん?いきなりどうしたの??」
「国が滅んでレギアスが伝説にならないように頑張るわ」
「レティシア?大丈夫??」
部屋に入るとドッと疲れが出て、寝支度の途中でもう眠ってしまった。時々ぼんやりと意識が浮上すると必ずどこかにレギアスの優しい腕が触れていて心地良い。
そんなふうに安心感に包まれてまた眠りに落ちていく感覚が、抱かれてる時より気持ちがいいかもしれないなんてレギアスが拗ねそうなことを薄らぐ意識で考えていた。
『主様!主様!!結界を貼って下さいませ!!』
シャリーアの声が頭に響く。目を開くと昨日来た火山島の光景が広がっていた。
「なあに?またレギアスと竜王様が戦っているの??」
『そうですわ!だから結界を貼って欲しいんですの!!』
寝ぼけまなこで周囲を確認するとどうも私はシャリーアの上に横たえられているようだ。
「ヴァルグ、こっちへ来て!」
私はそばに人型で立っていたヴァルグの手を引くと私の膝の上に乗せて次元結界を貼った。
あ、竜王様と戦ってるレギアスが凄い顔でこっち見た……
「レティシア!何やってるんだ!!」
「何って、座って観戦しようと」
「お、俺以外の男に触っちゃダメだろ!」
「違うわ。コレは可愛い爬虫類のオスよ」
人間扱いしなくていいって昨日言われたもの。
ヴァルグって主従だからかレギアスとちょっと雰囲気が似てて、小さいレギアスみたいで可愛いのよね。
レギアスは瞬時にこちらに来ると結界の中……私達が居ないぽっかり開けた空間……に入って……出てきた。
「レティシア、結界を解け」
「嫌よ」
「そ、その爬虫類はなぁ!人間とも交尾ができるんだ!!今もレティシアの膝の上でニヤけてるんだぞ!見てみろ!!」
「ニコニコしてて可愛いじゃない。ヴァルグ、あなたにはシャリーアがいるんだから、私にいやらしい事したりなんてしないわよね?」
「お、おう……もちろん……」
『主様……ヴァルグ様が興奮してるので、危険ですわよ?』
「ほら、シャリーアも言ってるだろ?」
ムキになって怒ってるレギアス可愛いなぁ。
レギアスにもさすがにこの結界は破れないと思うけど、無駄に多い魔力で強引に何とかしそうで怖い。
「私、弟か妹が欲しかったの……ダメ?」
「こ、子供なら今に俺が作ってやるからそれまで我慢しろ!!今すぐ結界を解くかそいつをどけろ!!」
レギアスが爆発しそうなのでヴァルグを膝から下ろして少し離れた隣に座らせる。
見てみると確かに……ちょっと赤くなってモジモジしている。
あ、こっち向いた。
「こ、皇主の跡継ぎにドラゴンハーフとか、かっこよくない?オレ、協力するけど!」
鼻息荒くヴァルグが迫ってきた!
可愛い少年の見た目じゃなかったらきっと気持ち悪くて吐きそうになってるわね……
「えーと、レギアス……ごめんなさい」
言うと同時に結界のキューブを後ろから激突させて次元結界からヴァルグを叩き出した。
レギアスがゆっくりとヴァルグに近づいて襟首を掴む。
怯えて震えるヴァルグがちょっと可哀想。完全に私のせいだけど。
「レティシア、レティシアにも帰ったらお仕置だからな!!」
ヴァルグを引きずりながら捨て台詞を残すレギアス。
お仕置きってフレーズで喜んでいる自分には気づかなかったことにしよう。うん、そんなことありえない。
シャリーアの視線が痛いわ……それもきっと気のせいね。うんうん気のせい。
そんなことを考えながらふと違和感に気づく。
「そういえば、竜王様はどこ??」
「我はここだ」
ふと見ると目の前にレギアスと同じくらい長身の男性が立っていた。
長い黒髪を後ろで束ねていて、瞳は朱が混じった不思議な色合いの黄緑色。人化した竜王様だと一目でわかる威厳がある。
「わぁ…」
か、かっこいい!!
なんていうか、レギアスにはない大人の渋みというか……
今までレギアス以外の男性をかっこいいとか思ったことなかったのに……竜王の魔力に取り込まれているのかしら私……結界越しなのに。
レギアスはかっこいいけど、でもかっこいいより美しいが強いのよね……でも竜王様はなんていうか本当にかっこいい!
「どうかしたか?女神皇主」
「いえあの、素敵な方だなって……」
「お、おい!レティシア!?」
向こうの広い空間に向けて歩き出していたレギアスが凄い形相で戻ってきた。
『確かに!ヴァルグ様が将来こんな風になるのなら楽しみですわ!』
「用事ができた。城に帰るぞ」
殺気と魔力をダダ漏れにしたレギアスが笑っている。
この凶悪な顔が最高にかっこよくて好きだと思ってしまう私はちょっとおかしいのかもしれない。
「えっと、用事って……なぁに?」
「全身血塗れになるまでレティシアを犯して壊す」
「えーと、それはちょっと死にそうなので……お断りします」
「俺以外の男が目に入らないように調教しないとダメだろ?」
「えーと……」
調教ってどんなことするんだろう……ちょっと気になる……でも皇主が命の危険を冒す訳にはいかないわ。
「女神皇主が困っているだろう。女を脅すなど情けない弟子だ。鍛え直してやる」
「ちょっ、なにする!離せ!!」
竜王様に聖印を刻んでおいて良かったー!
レギアスが忘れるまで鍛え直して下さい。
ズルズルと引きずられていくレギアスとヴァルグを見ながら拝んでおく。
『主様、少しおふざけが過ぎるんじゃありません?後が大変になりますわよ?』
「だって、レギアスが怖いからって言いたいこと言えないなんてこの先嫌になっちゃうわよ。一生側に張り付かれる予定なんだから。それに……怒ったレギアスも好きなの、私」
『はあ、私にはさっぱりわかりませんわ……あんな恐ろしいものを怒らせて喜ぶなんて……主様は流石大物ですわ』
レギアスたちの方に目を向けるとどうやら人型のまま剣で戦うようだった。
レギアスの剣術や槍術も竜王様の直伝なのかしら……まあ何千年も生きていたら人型での戦い方も一流以上になれるわよね……
うん、速すぎて動きがさっぱり見えない。
ただレギアスが劣勢なのは表情とか姿勢でだいたいわかる。
聖印で同じだけ強化されたら竜王様の方が強いのね。まあそれが普通だし、レギアスはまだ年齢的に伸び代があるから強い師匠がいる方がいいわよね。
レギアスの剣が弾き飛ばされ、ヴァルグに剣が投げられる。
次はヴァルグがしごかれる番らしい。
人化できるようになったばかりのヴァルグは当然剣技なんて見よう見まねでしかできなくて、一方的に打ち付けられて泣きそうになっていた。
いいなぁ、私も今度修行付けてもらいたい……
でもそんなことしたら私の師匠のレイノルズ将軍が拗ねるかしら……
ヴァルグを見てるのは楽しいけれど、レギアスと竜王の戦いは剣筋が見えないからつまらなくて、私はいつの間にかシャリーアの上で眠ってしまった。
『主様!!結界が解けましてよ!ちゃんと起きてて下さいませ!!』
「剣で戦うならこちらまで飛んできたりしないでしょう?普通の結界で壁作っておくからいざとなったら逃げて。おやすみシャリーア」
逃げた時に振り落とされないように自分も結界でシャリーアに固定しておくと、また私は意識を手放した。
考え込んだ末にレギアスが必死な感じで聞いてきた。後ろを振り返って見てみると可愛くてつい顔が緩む。
「……うーん…………全部?レギアスは?」
「!!」
私の言葉にレギアスがわかりやすく顔を綻ばせた。子犬の耳と尻尾の幻覚が見える。可愛い。
「お、俺も!レティシアの全てを愛してる!」
興奮したレギアスがカウチソファで膝に乗せていた私を押し倒し、深く口付けてきた。
子犬じゃなかった。獰猛な大型犬だった……
さっきイったばかりなのにまたそんなことされたら……
「ん、んんっ、や、こら!ダメ!レギアス!離して!離しなさいっ!!い、痛いっ、もう、痛いってば!!」
レギアスは暴れる私を抑えながら耳や首筋に食いつき、今はドレス越しに肩にかぶり付いている。
さっきはちゃんと甘噛みだったのに……また歯形が増えちゃう。
「カラザイム国王夫妻がもうすぐお着きになりますので……レギアス殿下、陛下を離してください」
ハンナを筆頭に侍女たちが私の支度をしようと集まってレギアスに冷たい視線を送っていた。
ふてくされながらしぶしぶ私を解放するレギアス。
「主様、この男のこんなところもお好きなんですの?」
「え?ええと……まあ、そうね……」
レギアスがそれを聞いてご機嫌で私の手を取り指にキスしている。
「恋は盲目ってことなのかしら?私にはさっぱりわかりませんわ」
「レティシアは俺にいじめられるのが好きなんだ」
目を閉じながら得意気に私の手に頬を擦り寄せているレギアスが侍女達に睨まれている。
私は否定も肯定もできず、侍女たちに髪とメイクとドレスを直されながら固まっていた。
なんか……いたたまれない……
このあと数組の国賓対応をし、ディナーの席でもまとめて相手をした。
国の北側には山脈があり、山間の中に小国が点在している。我が国の豊かさに頼る国も多いから当然のように近隣からの弔問は多い。たいてい仲が良いし本当に気遣ってくれているから嬉しいし負担は少ない。
けれど東側には砂漠や荒野が広がっていて、我が国の豊かな国土を妬んでともすれば侵略を虎視眈々と狙っていたりする。帝国が更に東側にあるので傘下の国も多いし何をしてくるかわかったものではない。
弔問に来られても何か工作しに来てるのではと疑ってしまう。今のところ祝福の際に敵意や悪意は感じ取れないけれど、対策済みの人選なのだろう。
はぁ、この生活があと1週間続くのかと思うとクラクラしてくる。しかも後になるほど恐らく数は増えるのだ。
ドラゴンみたいに高速の移動手段をもってる国なんてほとんどないんだもの。
国葬に間に合わない遠方の国からも手紙がちらほら届いていて返事も書かなければならない。
返事を書くのは官僚にほとんど丸投げしてもいいのだけど、それなりに目は通さないといけないから空き時間も休んでいられない。
普段の皇主の仕事はそれほどないけれど、外交が関わると途端に忙しい。覚悟していた事だけど時々逃げ出したくなる。
そんなだからレギアスに迫られると流されてしまうのも仕方がないと思うの。
嫌なことも大変なことも全部忘れてレギアスに溺れていられる時間は抗いがたい魅力があって……
でもここで私がレギアスに溺れて仕事がおざなりになったりしたら、ダメ皇主だとヒソヒソされてレギアスが傾国の悪魔とか呼ばれるのよね……
グルグル考えながらため息をついているとレギアスに顔を覗きこまれた。
「考え事?このままだと部屋のドアにぶつかるよ?」
顔をあげると目の前にレギアスの美しい顔と、近衛に護られた自室のドアがあった。
レギアスが私の額にキスをするとドアを開けて部屋の中に促してくれる。
「レギアスって傾国の美形王子様よね」
「ん?いきなりどうしたの??」
「国が滅んでレギアスが伝説にならないように頑張るわ」
「レティシア?大丈夫??」
部屋に入るとドッと疲れが出て、寝支度の途中でもう眠ってしまった。時々ぼんやりと意識が浮上すると必ずどこかにレギアスの優しい腕が触れていて心地良い。
そんなふうに安心感に包まれてまた眠りに落ちていく感覚が、抱かれてる時より気持ちがいいかもしれないなんてレギアスが拗ねそうなことを薄らぐ意識で考えていた。
『主様!主様!!結界を貼って下さいませ!!』
シャリーアの声が頭に響く。目を開くと昨日来た火山島の光景が広がっていた。
「なあに?またレギアスと竜王様が戦っているの??」
『そうですわ!だから結界を貼って欲しいんですの!!』
寝ぼけまなこで周囲を確認するとどうも私はシャリーアの上に横たえられているようだ。
「ヴァルグ、こっちへ来て!」
私はそばに人型で立っていたヴァルグの手を引くと私の膝の上に乗せて次元結界を貼った。
あ、竜王様と戦ってるレギアスが凄い顔でこっち見た……
「レティシア!何やってるんだ!!」
「何って、座って観戦しようと」
「お、俺以外の男に触っちゃダメだろ!」
「違うわ。コレは可愛い爬虫類のオスよ」
人間扱いしなくていいって昨日言われたもの。
ヴァルグって主従だからかレギアスとちょっと雰囲気が似てて、小さいレギアスみたいで可愛いのよね。
レギアスは瞬時にこちらに来ると結界の中……私達が居ないぽっかり開けた空間……に入って……出てきた。
「レティシア、結界を解け」
「嫌よ」
「そ、その爬虫類はなぁ!人間とも交尾ができるんだ!!今もレティシアの膝の上でニヤけてるんだぞ!見てみろ!!」
「ニコニコしてて可愛いじゃない。ヴァルグ、あなたにはシャリーアがいるんだから、私にいやらしい事したりなんてしないわよね?」
「お、おう……もちろん……」
『主様……ヴァルグ様が興奮してるので、危険ですわよ?』
「ほら、シャリーアも言ってるだろ?」
ムキになって怒ってるレギアス可愛いなぁ。
レギアスにもさすがにこの結界は破れないと思うけど、無駄に多い魔力で強引に何とかしそうで怖い。
「私、弟か妹が欲しかったの……ダメ?」
「こ、子供なら今に俺が作ってやるからそれまで我慢しろ!!今すぐ結界を解くかそいつをどけろ!!」
レギアスが爆発しそうなのでヴァルグを膝から下ろして少し離れた隣に座らせる。
見てみると確かに……ちょっと赤くなってモジモジしている。
あ、こっち向いた。
「こ、皇主の跡継ぎにドラゴンハーフとか、かっこよくない?オレ、協力するけど!」
鼻息荒くヴァルグが迫ってきた!
可愛い少年の見た目じゃなかったらきっと気持ち悪くて吐きそうになってるわね……
「えーと、レギアス……ごめんなさい」
言うと同時に結界のキューブを後ろから激突させて次元結界からヴァルグを叩き出した。
レギアスがゆっくりとヴァルグに近づいて襟首を掴む。
怯えて震えるヴァルグがちょっと可哀想。完全に私のせいだけど。
「レティシア、レティシアにも帰ったらお仕置だからな!!」
ヴァルグを引きずりながら捨て台詞を残すレギアス。
お仕置きってフレーズで喜んでいる自分には気づかなかったことにしよう。うん、そんなことありえない。
シャリーアの視線が痛いわ……それもきっと気のせいね。うんうん気のせい。
そんなことを考えながらふと違和感に気づく。
「そういえば、竜王様はどこ??」
「我はここだ」
ふと見ると目の前にレギアスと同じくらい長身の男性が立っていた。
長い黒髪を後ろで束ねていて、瞳は朱が混じった不思議な色合いの黄緑色。人化した竜王様だと一目でわかる威厳がある。
「わぁ…」
か、かっこいい!!
なんていうか、レギアスにはない大人の渋みというか……
今までレギアス以外の男性をかっこいいとか思ったことなかったのに……竜王の魔力に取り込まれているのかしら私……結界越しなのに。
レギアスはかっこいいけど、でもかっこいいより美しいが強いのよね……でも竜王様はなんていうか本当にかっこいい!
「どうかしたか?女神皇主」
「いえあの、素敵な方だなって……」
「お、おい!レティシア!?」
向こうの広い空間に向けて歩き出していたレギアスが凄い形相で戻ってきた。
『確かに!ヴァルグ様が将来こんな風になるのなら楽しみですわ!』
「用事ができた。城に帰るぞ」
殺気と魔力をダダ漏れにしたレギアスが笑っている。
この凶悪な顔が最高にかっこよくて好きだと思ってしまう私はちょっとおかしいのかもしれない。
「えっと、用事って……なぁに?」
「全身血塗れになるまでレティシアを犯して壊す」
「えーと、それはちょっと死にそうなので……お断りします」
「俺以外の男が目に入らないように調教しないとダメだろ?」
「えーと……」
調教ってどんなことするんだろう……ちょっと気になる……でも皇主が命の危険を冒す訳にはいかないわ。
「女神皇主が困っているだろう。女を脅すなど情けない弟子だ。鍛え直してやる」
「ちょっ、なにする!離せ!!」
竜王様に聖印を刻んでおいて良かったー!
レギアスが忘れるまで鍛え直して下さい。
ズルズルと引きずられていくレギアスとヴァルグを見ながら拝んでおく。
『主様、少しおふざけが過ぎるんじゃありません?後が大変になりますわよ?』
「だって、レギアスが怖いからって言いたいこと言えないなんてこの先嫌になっちゃうわよ。一生側に張り付かれる予定なんだから。それに……怒ったレギアスも好きなの、私」
『はあ、私にはさっぱりわかりませんわ……あんな恐ろしいものを怒らせて喜ぶなんて……主様は流石大物ですわ』
レギアスたちの方に目を向けるとどうやら人型のまま剣で戦うようだった。
レギアスの剣術や槍術も竜王様の直伝なのかしら……まあ何千年も生きていたら人型での戦い方も一流以上になれるわよね……
うん、速すぎて動きがさっぱり見えない。
ただレギアスが劣勢なのは表情とか姿勢でだいたいわかる。
聖印で同じだけ強化されたら竜王様の方が強いのね。まあそれが普通だし、レギアスはまだ年齢的に伸び代があるから強い師匠がいる方がいいわよね。
レギアスの剣が弾き飛ばされ、ヴァルグに剣が投げられる。
次はヴァルグがしごかれる番らしい。
人化できるようになったばかりのヴァルグは当然剣技なんて見よう見まねでしかできなくて、一方的に打ち付けられて泣きそうになっていた。
いいなぁ、私も今度修行付けてもらいたい……
でもそんなことしたら私の師匠のレイノルズ将軍が拗ねるかしら……
ヴァルグを見てるのは楽しいけれど、レギアスと竜王の戦いは剣筋が見えないからつまらなくて、私はいつの間にかシャリーアの上で眠ってしまった。
『主様!!結界が解けましてよ!ちゃんと起きてて下さいませ!!』
「剣で戦うならこちらまで飛んできたりしないでしょう?普通の結界で壁作っておくからいざとなったら逃げて。おやすみシャリーア」
逃げた時に振り落とされないように自分も結界でシャリーアに固定しておくと、また私は意識を手放した。
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