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第七章・記憶喪失。8

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 確か……この子達も同じ一組のカースト上級者の堀内瑞穂と青木梨奈と林舞夏だったはずだ。特に堀内は、その中のリーダー的存在だった。
 見た目も茶髪で軽いパーマをかけていた。つり目で容姿からも、きつそうな感じの女子生徒だった。しかも父親が議員で権力も持っているとか。
 なるほど。この子達のせいで不登校になったのか。態度ですぐに分かる。

 その原因はイジメだろう。
 学生のイジメは、昔から深刻化になっている。今はネットイジメや、やり方が変わりつつあるけど。大体何処も似たようなものだ。
 すると神崎って人がため息を吐く。

「さて、君らも早く戻りなさい。お弁当食べたのか? まだなら、早くしないと昼休みが終わってしまうぞ」

「あ、本当だ。ヤバい……早く食べないと」

「ちょっと保健室に寄るはずが。じゃあね、神崎先生。立花先生も」

 彼女達は、そう言いながら慌てて保健室から出て行く。
 何だか賑わしかったけど俺のことは、ついでぽかったぞ。
 それよりも俺も早く戻ろう。この人のそばに居るのは危険だ。
 また変な誤解をされたくないし、この人が何を考えているのか全く分からない。それに胸がざわつくから嫌だ。

「立花」

「はい。えっ?」

 条件反射で返事をしてしまった。それに何故だろうか。嬉しく思えた……。
 すると神崎って人は、クスッと笑う。笑うと言っても切なそうな表情だったが。
 俺は、その笑顔を見た時、胸がズキッと痛む。何故痛んだのか分からないけど。
 とにかく行こうとするが……。

「一言だけ言っておく。伊波には気をつけろ!」

 えっ……?
 意味が分からなかったが、そのまま保健室から出て行く。何だったんだ?
それに伊波に気をつけろって、伊波って伊波君? 何で?
 ズキッとまた頭が痛みだす。何か大切なことを忘れている気がする。
 思い出したいのに思い出したくない。そんな複雑な感情。

「うっ……」

 あまりの頭痛に気持ち悪くなる。
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