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クリスマスの夜に。22
しおりを挟む「……分かってんだよ。どう頑張ってもアイツに勝てないことぐらい。でも、だからと言って簡単に諦められる訳がねぇーだろ。好きなんだから」
「坂下君……」
「とにかく。あんたは、あんたの幸せだけを考えればいいんだよ! アイツにも言っておけ。もし椎名先生を幸せにしなかったらマジで許さねぇーからって」
坂下君は、そう言うと走って行ってしまった。
あんたは、あんたの幸せだけ考えればいいって、それって認めようとしてくれてるの?
簡単に諦められないから素直に認めることは出来ないけど……私の幸せを願ってくれようとしていた。
坂下君の気持ちを知り複雑だったが、彼の気持ちに嬉しくなった……。
そうだね……幸せにならないと坂下君に悪いわよね。ありがとう……。
そのためにも私も決意をしないといけない。自分の気持ちに。気持ちを改めてクリスマスの日を待った。
そしてクリスマス当日。
私は、鬼龍院さんのお母様の指示された高級ホテルに
向かった。
確かに言っていた通り……イルミネーションも完璧で凄く綺麗な夜景が一望出来た。曲もクリスマスに相応しい。
そしてご馳走……一流のコックが作った豪華なフルコースだった。
「食べようか?」
「はい……」
お互いに緊張しながら食事を始めた。VIPルームには、音楽の音だけが聴こえる。
心臓がバクバクと高鳴り過ぎて味が分からない。何を話したらいいのだろうか? せっかくのチャンスに。
恥ずかしそうに食べていると鬼龍院さんは、手を止めた。
「あの……今日は、上紗さんと一緒にクリスマスに過ごせることは、凄く嬉しく思っています。ですが、母の命令だからと言って無理だけはさせたくない」
えっ? 無理って……そんなつもりはないわよ?
私は……気持ちを決めてここに来たのに。
もしかして仕方がなく来たと思ったのかしら。違うのに……。勘違いされていると思いズキッと胸が痛んだ。
だが鬼龍院さんは、ジッと真剣な目で私を見てきた。
「だが僕は、母の言う通りにしたくない。僕は、僕の意思で上紗さんを誘いたい。だから、この後も一緒に過ごしてくれませんか?」
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