上 下
121 / 142

クリスマスの夜に。22

しおりを挟む

「……分かってんだよ。どう頑張ってもアイツに勝てないことぐらい。でも、だからと言って簡単に諦められる訳がねぇーだろ。好きなんだから」

「坂下君……」

「とにかく。あんたは、あんたの幸せだけを考えればいいんだよ! アイツにも言っておけ。もし椎名先生を幸せにしなかったらマジで許さねぇーからって」

 坂下君は、そう言うと走って行ってしまった。
 あんたは、あんたの幸せだけ考えればいいって、それって認めようとしてくれてるの?
 簡単に諦められないから素直に認めることは出来ないけど……私の幸せを願ってくれようとしていた。
 坂下君の気持ちを知り複雑だったが、彼の気持ちに嬉しくなった……。

 そうだね……幸せにならないと坂下君に悪いわよね。ありがとう……。
 そのためにも私も決意をしないといけない。自分の気持ちに。気持ちを改めてクリスマスの日を待った。

 そしてクリスマス当日。
 私は、鬼龍院さんのお母様の指示された高級ホテルに
向かった。
 確かに言っていた通り……イルミネーションも完璧で凄く綺麗な夜景が一望出来た。曲もクリスマスに相応しい。
 そしてご馳走……一流のコックが作った豪華なフルコースだった。

「食べようか?」

「はい……」

 お互いに緊張しながら食事を始めた。VIPルームには、音楽の音だけが聴こえる。
 心臓がバクバクと高鳴り過ぎて味が分からない。何を話したらいいのだろうか? せっかくのチャンスに。
 恥ずかしそうに食べていると鬼龍院さんは、手を止めた。

「あの……今日は、上紗さんと一緒にクリスマスに過ごせることは、凄く嬉しく思っています。ですが、母の命令だからと言って無理だけはさせたくない」

 えっ? 無理って……そんなつもりはないわよ?
 私は……気持ちを決めてここに来たのに。

 もしかして仕方がなく来たと思ったのかしら。違うのに……。勘違いされていると思いズキッと胸が痛んだ。
だが鬼龍院さんは、ジッと真剣な目で私を見てきた。

「だが僕は、母の言う通りにしたくない。僕は、僕の意思で上紗さんを誘いたい。だから、この後も一緒に過ごしてくれませんか?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

シングルマザーになったら執着されています。

金柑乃実
恋愛
佐山咲良はアメリカで勉強する日本人。 同じ大学で学ぶ2歳上の先輩、神川拓海に出会い、恋に落ちる。 初めての大好きな人に、芽生えた大切な命。 幸せに浸る彼女の元に現れたのは、神川拓海の母親だった。 彼女の言葉により、咲良は大好きな人のもとを去ることを決意する。 新たに出会う人々と愛娘に支えられ、彼女は成長していく。 しかし彼は、諦めてはいなかった。

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

通りすがりの王子

清水春乃(水たまり)
恋愛
2013年7月アルファポリス様にて、書籍化されました。応援いただきましてありがとうございました。 書籍化に伴い本編と外伝・番外編一部を削除させていただきましたm( )m。 18歳の時、とある場所、とある状況で出会った自称「白馬の王子」とは、「次に会ったときにお互い覚えていたら名乗る」と約束した。 入社式で再会したものの、王子は気付かない。まあ、私、変装しているしね。5年も経てば、時効でしょ?お互い、「はじめまして」でノープロブレム・・・のハズ。 やたら自立志向のオトコ前お嬢を 王子になり損ねた御曹司が 最後には白馬に乗ってお迎えにいくまで・・・。 書籍化に伴い削除したものの、割愛されてしまった部分を「その一年のエピソード」として章立てして再掲載します。若干手を入れてあります。 2014年5月、「通りすがりの王子2」刊行しました。

ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編

タニマリ
恋愛
野獣のような男と付き合い始めてから早5年。そんな彼からプロポーズをされ同棲生活を始めた。 私の仕事が忙しくて結婚式と入籍は保留になっていたのだが…… 予定にはなかった大問題が起こってしまった。 本作品はシリーズの第二弾の作品ですが、この作品だけでもお読み頂けます。 15分あれば読めると思います。 この作品の続編あります♪ 『ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編』

十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす

和泉杏咲
恋愛
私は、もうすぐ結婚をする。 職場で知り合った上司とのスピード婚。 ワケアリなので結婚式はナシ。 けれど、指輪だけは買おうと2人で決めた。 物が手に入りさえすれば、どこでもよかったのに。 どうして私達は、あの店に入ってしまったのだろう。 その店の名前は「Bella stella(ベラ ステラ)」 春の空色の壁の小さなお店にいたのは、私がずっと忘れられない人だった。 「君が、そんな結婚をするなんて、俺がこのまま許せると思う?」 お願い。 今、そんなことを言わないで。 決心が鈍ってしまうから。 私の人生は、あの人に捧げると決めてしまったのだから。 ⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚ 東雲美空(28) 会社員 × 如月理玖(28) 有名ジュエリー作家 ⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚

極道に大切に飼われた、お姫様

真木
恋愛
珈涼は父の組のため、生粋の極道、月岡に大切に飼われるようにして暮らすことになる。憧れていた月岡に甲斐甲斐しく世話を焼かれるのも、教え込まれるように夜ごと結ばれるのも、珈涼はただ恐ろしくて殻にこもっていく。繊細で怖がりな少女と、愛情の伝え方が下手な極道の、すれ違いラブストーリー。

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...