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文字には悪魔が潜んでて
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いきなりネガティブ賢者モードに突入した。
あれから日が経ってるし、賢者モードというにはあまりに時間があき過ぎているが……。
ある程度満たされたからなのか、それとも元恋人がいいという気持ちが膨れ上がったからなのか、それとも人と会いすぎて疲れたからか、あるいはその全てか。
理由なんてわからない。
気圧の問題とか、そういう単純な話なのかもしれないし。
いきなり、嫌悪感とか罪悪感とかがぐちゃぐちゃになってやって来た。
自分のことを、ものすごく気持ち悪い存在に感じた。
会った人達は私を褒めてくれるが、きっと私は誰に褒められても、それを受け取れる状態にない。
あらゆる自信をなくし、自己肯定感もなくし、存在意義もなくし……それを取り戻そうとするならば、私は…きっと…自分で何かを成功させなければいけない。
何か、自分が達成感を得られるようなことをしなければいけない。
ああ、そうだ……。
私は、久しぶりにキラキラした人に会ったんだ。
幼い頃からの夢に向かって努力し続け、そしてその努力が実った人と話した。
それが眩しくて、きっと、たぶん、羨ましくて。
あまりに今の自分が惨めで。情けなくて。
人の優しさに、弱さに、つけ込んだ自分が、醜くて。
こんな人間が、人から愛される資格なんてないと感じて。
そもそも人から愛されることをもはや望んですらいなくて。
私は……もう、この世界に未練が全くなくて。
虚無な存在でしかなくて。
死にたいと思ってしまう。
無理やり上げていた気持ちが、重力に逆らえなくなって落ちていく。
I know you know we know
you weren't down for forever
and it's fine
I know you know we know
we weren't meant for each other
and it's fine
But if the world was ending
You'd come over right
You'd come over
and you'd stay the night
Would you love me for the hell of it
All our fears would be irrelevant
If the world was ending
You'd come over right
The sky'd be falling
and I'd hold you tight
And there wouldn't be a reason why
We would even have to say goodbye
If the world was ending
You'd come over right
Right?
If the world was ending
You'd come over right
Right?
彼女が家を去る前、この歌を口ずさんで泣いていた私に向かって、彼女は何か冷たい言葉を放った。
もう何を言われたのかさえ覚えていないけれど、スーッと涙が引っ込んだことだけは覚えている。
本当に運命の相手だと思っていたのは……ずっと一緒にいたいと願っていたのは自分だけだったんだと、思ったんだ。
いろんな人と話して、触れ合って、やっぱり彼女は私にとって最高の人だったって、何度も思う。
あの、人を否定する言葉を唐突に投げつけること以外は、全て最高だった。
写真をまた見返したけど、今が現実なのかどうかさえもわからなくなった。
相変わらず写真は夢のようで……まるで他人の写真を見ているような感覚に陥って。
幸せだった日々が戻らない現実を、受け止めきれない。
私は知ってる。
何度も何度も書いたように、万が一彼女が復縁したいと言ってきたとしても、もうあの頃のように彼女を信じることはできない。
だって嘘をつかれた。隠し事をされた。
逃げられた。
でも、もし世界が終わるなら、彼女に会いたいと、やっぱり思う。
さよならさえ言う必要のない、世界の終わりなら。
彼女が「愛してる」と言ってくれたら、その言葉を抱いて満足して世界の終わりを受け止める。
ああ、だけど私にはわかる。
世界が終わる時、きっと彼女は私の元へは来ない。
いつだってそうだった。
「お父さん、お父さん」って言って、きっと彼女は父親を求めるんだ。
私は親の代理みたいなもので、彼女にとっては遠い親戚のような存在。
遠い親戚なんて、私は名前も顔も知らない。
彼女にとって、私はその程度の存在。
都合よく、親の代理をしてくれただけの存在。
消えてしまいたいよ。
消えてしまおうか。
もう、冷静な自分は死神と化して、私の元へ戻ってくる気配なんてないし。
私の元へ戻ってきて、生きようとする気力もないし。
彼女がいない世界を、私はきっと愛せない。
何もかも失った状態で、この世界を生き抜けない。
生きていたくない。
同性婚が出来るようになるかもしれない、というほんの少しの期待感が、LGBTQの人達の中で話題になっている。
日本の首相が初めて言葉にしてくれ、違憲判決がまた出たり、複数の区が国に要請してくれたりと、いろんな人が動き始めている。
今すぐは無理だったとしても、もしかしたら数年後には…という、ほんのわずかな期待が、みんなを明るい気持ちにさせている。
今まで希望なんて皆無に等しかったからこそ、みんな、そのほんのわずかな光にわきたっている。
でも……私は……。
彼女が「結婚したい」と言ってくれていた日々を思い出す。
私と結婚したら、という妄想を話してくれていた彼女の横顔を思い出す。
彼女の横顔を見て、私は決意した。
プロポーズしたんだ。
彼女は婚約指輪を太陽の光にキラキラとかざして、嬉しそうに何度も眺めた。
だけど、最終的には、彼女は「結婚したいかわからない」と言った。
家を去る前、「婚約指輪持ってくの?もういらないんじゃない?」って聞いたら「お洒落用にするの」と答えられた。
たしかに、プロポーズした時、まだ彼女が若かったから、そんなに大きなダイヤモンドとかはちょっと違うだろうと思い、お洒落用にも見える指輪を買った。
本当に結婚する時、改めてちゃんとした婚約指輪を買おうと思っていた。
私の決意が込められた小さく光るダイヤモンドは、お洒落用の指輪と成り果てた。
みんなが小さな光に喜びを抱く間、私はジッと耐えるように家に籠もり、痛みを堪える。
人の幸せを、願えない。
…そう。
異性愛者の友人が…唯一、私が彼女にプロポーズしたと言ったら、お祝いの花束をプレゼントしてくれた友人が結婚した時も、胸をズキズキと痛めながら結婚式に参加した。
ひとりだけ友人の結婚を祝えていない罪悪感、唯一私達を祝福してくれた友人の結婚すらも心から幸せを願えない、醜い自分に対する嫌悪感。
あれだ。
あの痛み。
あの痛みを感じたくなくて、他の友人の結婚式は不参加にした。
なのに、ニュースが出るたび、LGBTQの人達が喜ぶたび、私の心の中にどす黒い渦が生まれる。
こんな痛み、もう味わいたくないのに。
私の決意を、無碍にされた悲しみが、消えない。
ずっと、ずっと、消えてくれない。
あれから日が経ってるし、賢者モードというにはあまりに時間があき過ぎているが……。
ある程度満たされたからなのか、それとも元恋人がいいという気持ちが膨れ上がったからなのか、それとも人と会いすぎて疲れたからか、あるいはその全てか。
理由なんてわからない。
気圧の問題とか、そういう単純な話なのかもしれないし。
いきなり、嫌悪感とか罪悪感とかがぐちゃぐちゃになってやって来た。
自分のことを、ものすごく気持ち悪い存在に感じた。
会った人達は私を褒めてくれるが、きっと私は誰に褒められても、それを受け取れる状態にない。
あらゆる自信をなくし、自己肯定感もなくし、存在意義もなくし……それを取り戻そうとするならば、私は…きっと…自分で何かを成功させなければいけない。
何か、自分が達成感を得られるようなことをしなければいけない。
ああ、そうだ……。
私は、久しぶりにキラキラした人に会ったんだ。
幼い頃からの夢に向かって努力し続け、そしてその努力が実った人と話した。
それが眩しくて、きっと、たぶん、羨ましくて。
あまりに今の自分が惨めで。情けなくて。
人の優しさに、弱さに、つけ込んだ自分が、醜くて。
こんな人間が、人から愛される資格なんてないと感じて。
そもそも人から愛されることをもはや望んですらいなくて。
私は……もう、この世界に未練が全くなくて。
虚無な存在でしかなくて。
死にたいと思ってしまう。
無理やり上げていた気持ちが、重力に逆らえなくなって落ちていく。
I know you know we know
you weren't down for forever
and it's fine
I know you know we know
we weren't meant for each other
and it's fine
But if the world was ending
You'd come over right
You'd come over
and you'd stay the night
Would you love me for the hell of it
All our fears would be irrelevant
If the world was ending
You'd come over right
The sky'd be falling
and I'd hold you tight
And there wouldn't be a reason why
We would even have to say goodbye
If the world was ending
You'd come over right
Right?
If the world was ending
You'd come over right
Right?
彼女が家を去る前、この歌を口ずさんで泣いていた私に向かって、彼女は何か冷たい言葉を放った。
もう何を言われたのかさえ覚えていないけれど、スーッと涙が引っ込んだことだけは覚えている。
本当に運命の相手だと思っていたのは……ずっと一緒にいたいと願っていたのは自分だけだったんだと、思ったんだ。
いろんな人と話して、触れ合って、やっぱり彼女は私にとって最高の人だったって、何度も思う。
あの、人を否定する言葉を唐突に投げつけること以外は、全て最高だった。
写真をまた見返したけど、今が現実なのかどうかさえもわからなくなった。
相変わらず写真は夢のようで……まるで他人の写真を見ているような感覚に陥って。
幸せだった日々が戻らない現実を、受け止めきれない。
私は知ってる。
何度も何度も書いたように、万が一彼女が復縁したいと言ってきたとしても、もうあの頃のように彼女を信じることはできない。
だって嘘をつかれた。隠し事をされた。
逃げられた。
でも、もし世界が終わるなら、彼女に会いたいと、やっぱり思う。
さよならさえ言う必要のない、世界の終わりなら。
彼女が「愛してる」と言ってくれたら、その言葉を抱いて満足して世界の終わりを受け止める。
ああ、だけど私にはわかる。
世界が終わる時、きっと彼女は私の元へは来ない。
いつだってそうだった。
「お父さん、お父さん」って言って、きっと彼女は父親を求めるんだ。
私は親の代理みたいなもので、彼女にとっては遠い親戚のような存在。
遠い親戚なんて、私は名前も顔も知らない。
彼女にとって、私はその程度の存在。
都合よく、親の代理をしてくれただけの存在。
消えてしまいたいよ。
消えてしまおうか。
もう、冷静な自分は死神と化して、私の元へ戻ってくる気配なんてないし。
私の元へ戻ってきて、生きようとする気力もないし。
彼女がいない世界を、私はきっと愛せない。
何もかも失った状態で、この世界を生き抜けない。
生きていたくない。
同性婚が出来るようになるかもしれない、というほんの少しの期待感が、LGBTQの人達の中で話題になっている。
日本の首相が初めて言葉にしてくれ、違憲判決がまた出たり、複数の区が国に要請してくれたりと、いろんな人が動き始めている。
今すぐは無理だったとしても、もしかしたら数年後には…という、ほんのわずかな期待が、みんなを明るい気持ちにさせている。
今まで希望なんて皆無に等しかったからこそ、みんな、そのほんのわずかな光にわきたっている。
でも……私は……。
彼女が「結婚したい」と言ってくれていた日々を思い出す。
私と結婚したら、という妄想を話してくれていた彼女の横顔を思い出す。
彼女の横顔を見て、私は決意した。
プロポーズしたんだ。
彼女は婚約指輪を太陽の光にキラキラとかざして、嬉しそうに何度も眺めた。
だけど、最終的には、彼女は「結婚したいかわからない」と言った。
家を去る前、「婚約指輪持ってくの?もういらないんじゃない?」って聞いたら「お洒落用にするの」と答えられた。
たしかに、プロポーズした時、まだ彼女が若かったから、そんなに大きなダイヤモンドとかはちょっと違うだろうと思い、お洒落用にも見える指輪を買った。
本当に結婚する時、改めてちゃんとした婚約指輪を買おうと思っていた。
私の決意が込められた小さく光るダイヤモンドは、お洒落用の指輪と成り果てた。
みんなが小さな光に喜びを抱く間、私はジッと耐えるように家に籠もり、痛みを堪える。
人の幸せを、願えない。
…そう。
異性愛者の友人が…唯一、私が彼女にプロポーズしたと言ったら、お祝いの花束をプレゼントしてくれた友人が結婚した時も、胸をズキズキと痛めながら結婚式に参加した。
ひとりだけ友人の結婚を祝えていない罪悪感、唯一私達を祝福してくれた友人の結婚すらも心から幸せを願えない、醜い自分に対する嫌悪感。
あれだ。
あの痛み。
あの痛みを感じたくなくて、他の友人の結婚式は不参加にした。
なのに、ニュースが出るたび、LGBTQの人達が喜ぶたび、私の心の中にどす黒い渦が生まれる。
こんな痛み、もう味わいたくないのに。
私の決意を、無碍にされた悲しみが、消えない。
ずっと、ずっと、消えてくれない。
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