執筆徒然日記

常森 楽

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愛憎

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“愛”の対になる言葉は“憎”なのだろうか?
よくサスペンスドラマなんかで“愛憎劇”なんて言ったりするし、世の中の殺人事件の多くは家庭内で起こると聞く。

私は…虐待されていた過去を受け入れられるようになるまでは、親のことを憎んでいたと思う。
何度も何度も頭の中で彼らを殺したし、もし彼らが大人になった私までもを暴力や暴言で縛り付けようとしたならば、実行に移していただろうとも思う。
幸い、私の親は、そこまでではなかった。
単純に、子供を育てられるような親ではなかったというだけの話だと、自分の中で結論づいている。
つまり、親自身がまだまだ子供で、子供が子供を育てている状態だったのだ。
だから、私が大人になればなるほど彼らは落ち着き、むしろ私を尊敬し、頼るようになった。
哀れだな、とは思う。

そう気づけたのも、母親がしきりに「子供なんか嫌い」と言っていたのがきっかけだった。
彼女曰く、何を考えているのか、何を言っているのかわからない子供がわからないから嫌い…らしい。
だから彼女は動物も嫌った。
毛嫌いというほどではないけれど、私がどれだけペットを飼いたいと言っても、許可されることはなかった。
機嫌が良い時には「自分の子供だけは別」と付け加えたが、ヒステリーになった時の彼女を見ていれば“別”ではないことが簡単にわかる。
自分がお腹を痛めて産んだ子供だから“別”と思い込みたいだけだったのだろう。

父は、ただひたすらに、自分も親から虐待を受けていた過去を受け止められず、受け止められないどころか「良い親」と今でも思い込もうと必死だ。
けれど、彼が祖母と一緒にいる時、彼はほとんど笑わないし、笑ってもあからさまに作り笑いだとわかる。
祖母が話している最中は、ほとんどずっと貧乏ゆすりをしている。
早く帰れるならば、なるだけ早く帰ろうとするような、そんな態度を取っている。
でも「良い親で、感謝してるから親孝行しなきゃ」みたいな強迫観念がある彼は、体は明らかに拒絶を示しているのに、やたらと祖母に親切にする。
そういう、自分自身の感情と向き合えず、回避する行動が、他人にも表れている。
とにかく彼は回避しようとする。何もかもを。
自身の加害行動、衝動的な言動を忘れ、都合のいいように現実を捻じ曲げる。
「自分の家族は幸せだった」と、妄想している。
現実を突きつけられると耐えきれず、手の甲や指を噛む癖がある。
いつまでも心の内に内に引きこもって、現実を見ようとしない。
いつまでも子供のままな人間。

もちろん、尊敬している部分、感謝している部分はある。
虐待されていたとは言え、いろんな経験をさせてもらったし、一応誕生日やクリスマスなどのイベント事もちゃんとやってくれていた。
まだ私が、自分が虐待されているのだと気づけてすらいなかった頃…あるいは、虐待されていたのだと気づいてしまった最初の頃は、子が親を想う純粋な愛と、ぞんざいに扱われていることへの憎しみが入り混じっていたのかもしれないと思う。
でも彼らの本性がわかった時、私が大人になった時、そこには愛も憎しみもなかった。
「違う親だったら、私はきっともっと自由に羽ばたけたんだろうな」とは思った。
「ちゃんと、ひとりの人間として尊重され、愛されたかったな」とは思った。
でも、そこに、憎しみは一切なかった。
今でも、会話をするとイライラすることは多くある。
回避傾向の強い父は、特に。
でも、人間関係でイライラすることなんてごまんとあるだろう。
そんなことで、いちいち憎しみという強い感情は抱いていられない。面倒だ。

私が愛し、愛されていたと思っていた彼女と別れた時、憎しみなんてものは一切生じなかった。
彼女が私と全く向き合ってくれなくなり、スマホにかじりつくようになり、浮気もどきをするようになっても、ずっと悲しみはあれど、憎しみなんてものは存在しなかった。
けれど、あのまま別れずにいたら、もしかしたら芽生えた感情だったのかな…?

小学生の頃、友人の家に遊びに行った。
友人の母親が私に「ちょっと出かけてくるから、少しの間だけ赤ん坊を見ててほしい」と言ってきた。
普通なら自身の子供に頼むべきだろうが、友人といっても、彼女は私よりも年下だったから、おそらく年齢が上の私に母親は頼んできたのだろう。
年下の我が子と頻繁に遊ぶ私を、面倒見の良い子と認識していたのかもしれない。
その信頼感から、赤ん坊を見ててほしいと頼んだのかもしれない。

今でも変わらないが、私は赤ん坊が怖い。
可愛いけれど、遠くで見守っているくらいがちょうどいいと思っている。
蛙の子は蛙なのか、私も、母親と同様に、何を考えているのかわからない赤ん坊が苦手だ。
そして、簡単に消えてしまいそうな、消してしまえそうな小さな存在が、怖くてたまらない。
故意じゃなくとも、何かの拍子に何かをしてしまって、赤ん坊が死んでしまったら…?と考えると、なるだけ接したくないと思ってしまう。
喋れるようになってきた幼児は好きだけれど。
まだギリギリ何を言っているのかわからない、みたいな状態の幼児は厳しいかもしれない。
「ごめん…何を言っているのかわからない…本当にごめん…」と、罪悪感に苛まれてしまう。
それでも、彼らが必死に私に何かを訴えようとするならば、目を見て真剣に聞こうという意志はある。
そんなんだから、泣きじゃくる、まだ喋れもしない赤ん坊なんて、もう罪悪感で死にたくなる。
「ごめんね、お母さんがいいよね。私じゃ嫌だよね、ごめんね」って。
絶対私に子育てなんて出来ない(笑)

で、そのマインドは小学生の頃からあって。
今は大人だし、罪悪感で死にたくなっても、「早く母親帰ってきてくれ」とただひたすら願って、必死に赤ん坊の面倒を見ることが出来るようにはなったが、小学生の頃の私にはどうすればいいのかわからなかった。
泣きじゃくる赤ん坊を椅子に座らせてみても泣き止まず、耳をつんざくような叫び声にパニックになった。
そして私は、黙らせようと…ただ、静かになってほしいと思い、赤ん坊を椅子から落とそうとした。
あの時の感覚は今でも蘇って、自分が怖くなる。
落とそうと手を伸ばした瞬間に友人の母親が帰ってきて「ごめんね、ありがとう」と赤ん坊をあやし始め、心底ホッとしたのを覚えている。
その後の記憶がないほどに、私の心臓はバクバクと鳴っていた。

同じく小学生の頃、食事中に叱られることが多々あった。
多々あった…というか、ほとんど毎日だったんじゃないかと思う。
それが結局、私の味覚がないことに繋がっていると思うのだけれど。
熱々の味噌汁をぶっかけられたりもしたし、「ご飯を食べさせない」という脅しも数え切れないくらい受けた。
こちらとしては「もう、いいよ。べつにご飯いらないよ」となってしまう。
そんな食事が美味しいはずもなく、叱られた後は、無言の食卓に家族の咀嚼音だけが響いた。
そのうち、私は咀嚼音が苦手になった。
自分の咀嚼音すら聞きたくなくて、飲むように食事した。
だから私は、彼女と出会うまで、ずっと早食いだった。
学校での食事も苦痛になった。
誰の咀嚼音も聞きたくないのだから。
大体、ご飯は5分から10分で食べ終えて、いつも大声で喋った。
そうすれば咀嚼音を聞かずに済むから。
前に、牛丼チェーン店で牛丼並盛を、私がどのくらいで食べ終えるのか計ってみたことがあった。
3分も経たずに食べ終えていた。
「カップラーメン出来上がんないじゃん」と常套句をかました。
そのくらい、私は早食いだった。
ろくに噛まずに飲んでいたのだから当たり前だ。
食べ物が、体内を移動する感覚がわかるほどに、丸飲み状態だった。

彼女との関係が悪化してから、この2つの症状が表れ始めた。
彼女と出会って、ご飯を美味しく感じられるようになって、彼女が美味しそうにご飯を食べている姿を一生見ていたいと願うほどに、彼女との食事の時間が幸せだった。
外食した時には、彼女が食べたい物を2つ頼んで、半分ずつにするのが最高に幸せだった。
ゆっくりと丁寧に、綺麗に食べる彼女を見習って、私もゆっくり食べられるようになった。
まあ、それでも早かったけれど(笑)
なのに……。
いつの日からか、彼女の咀嚼音がうるさいと感じる日が増えた。
それを彼女に告げたことはなかったけれど。
毎日ではない。
でも、今まで、彼女との食事の時間が毎日とてつもなく幸せだったのに、苦痛になってしまったことが、ショックだった。
そして、最後の方は、既に“美味しい”がわからなくなっていた。

彼女よりも早く食べ終える私は、いつも、座っている彼女の後ろにあるソファでくつろいでいた。
急に、何の前触れもなく、突然、彼女の背中を蹴り飛ばすイメージが脳内を駆け巡ったことが、何度かあった。
「なんだこれ…」って、ひとりでパニックを起こした。
私に背中を向け、テレビを見ながら私の作ったご飯を食べていた彼女は、パニックを起こした私の変化になんて気づいてもいなかっただろう。
無防備な背中を、見ていられなくなった。
彼女がわからなくなったから…?
赤ん坊が何を訴えたいのかわからなくてパニックを起こしたのと同じように、彼女の真意がわからなくなって、そんなイメージが浮かぶようになった?
最初は、彼女に「もし私が突然暴力振るったらどうする?」と聞いたりして、気持ちをなんとか落ち着かせていた。
何度も聞くから、彼女に「えー?したいの?」と笑顔で聞き返されたこともあった。
「叩いていいよ」って言われて、可笑しくて笑って、心がなんとなく落ち着いて、デコピンした。
「もっと強くしていいのに」と言う彼女を、抱きしめた。
“大丈夫、大丈夫”と、自分に言い聞かせた。

でもそのうち感情のコントロールが効かなくなって、苦しさのあまり、私は自分を殴った。
何度も何度も。
彼女は哀れみを向けるような悲しい目で、私を見た。
こぶの出来た頭を優しく撫でて、痛々しい笑みを浮かべた。

…思い出して、涙が出る。
わかったのは、やっぱり憎しみなんてなかった。
たぶん、別れずにいても、憎しみを彼女に抱くことはなかった。
だって、両親に抱いた感情とは、ハッキリ違ったから。
ただ、わからなかっただけなんだ。彼女の気持ちが。
わからなくて、ずっとパニックを起こしていた。
必死に言葉を紡ぐのに、必死に彼女の真意を探ろうとするのに、何もかもがわからなくて、崩れ落ちたのだ。
泣きじゃくる、何を訴えたいのかわからない赤ん坊を理解してあやしてくれる母親の存在は、私達の間には、当然なかった。

最後に残ったのは、眠っている彼女を、ただただ愛おしいと思う感情だけ。
このまま彼女が安心して眠っていてくれればいい。
そう思った。
彼女が目を覚ましたら、また、真意のわからない彼女が動き始めてしまう。
だから、そのまま、眠っていておくれ…と。

…なんか、文字にすると、とても危険な匂いがするね?(笑)
まあ、そんな暴力的な話じゃない。
本当に単純に、自分の横で、安心して過ごしてくれれば嬉しいなって、思っていた。
それは育児に疲れた母親みたいな気持ちだったのかもしれない。
子供が寝ている間に、ホッと一息…みたいな。
交代してくれる代わりの母親が存在しない、孤独な母親のような気持ち。

でも結局、私はその最後の感情もなくなってしまうほどに、自分の負の感情に支配されてしまった。
彼女が、私の父親と同じように回避行動に出れば出るほど、“愛されてない”と強く思うようになった。

始まりは、どこだったんだろう?

積み重ね…だよね。

彼女は、出会った時から、自分の足では立てていなかった。
傷だらけで、ボロボロで。
そんな彼女に肩を貸した。
私も昔、同じ状態だったから。痛みを知っていたから。
私には肩を貸してくれる人なんて現れなかったけれど、自分の足で立てるだけの強さがあったから、昔の自分に肩を貸すようなイメージで、彼女に肩を貸したんだ。
私の肩を求めた人は他にもたくさんいたけれど、彼女は他の人とは違う気がした。
彼女は、傷が痛むから立てないだけで、自分の足で立とうとする意志がちゃんとあるように見えた。
そして一緒に歩き始めたんだ。
「どうせあなたも私から離れていくんでしょ」と泣きながら叫ぶ彼女に「そんなわけないでしょ」と何度も言い聞かせた。
ずっと一緒に歩いていると、彼女の自傷行為が少しずつ減っていった。
彼女が幸せそうに笑うことが増えた。
それでも、私が少しでも離れようとするとパニックを起こした。

私にだって私の人生がある。
会社の上司からパワハラを受け、大切な人が病気で亡くなり、自分自身の病気も発覚し、彼女に構う余裕なんてなかった。
そんなこと、全ての状況を彼女に話していたんだから、「今は無理だよね」って想像すればできるだろうに、彼女は想像できなかった。
ずっと「構って」って「寂しい」って言い続けた。
余裕のない私は、そんな彼女に怒りながらも、必死に説明した。
そうしたら、彼女は反省して、謝ってくれた。
私の全ての状況を知っている上に、彼女はまだ当時学生で時間的余裕があり、住環境も変わり、出会った頃より精神的にもかなり余裕ができたはずだった。
それなのに、彼女は私の気持ちや状況を想像してくれはしなかった。
きっと…きっと…その時の違和感を大事にすれば良かったのかもしれない。
でもあまりに余裕が無さすぎて、いろんなことが重なりすぎて、考えることなんてできなかった。
それに、その時の彼女はすぐに反省して謝ってくれた。
当時は私に対する愛情表現もたっぷりだった。
だから、そのまま肩を貸し続けた。
まだ彼女の傷が塞がったわけでもなかったしね。

彼女が、相手の気持ちを想像できないことは、それで大体理解した。
それならば、状況だけでなく、私の気持ちまで全部、懇切丁寧に説明する必要があるのだと理解した。
そして、「相手がこういう気持ちの時は、こういう行動を取った方がいいんだよ」といったレクチャーをするようになった。
彼女は失敗することを異常に恐れていたけれど、「大事なのは失敗した後に、どんな行動を取るか、だよ?人間、失敗しない人なんていないんだから」と言い聞かせた。
けれども、きっと彼女がその言葉を本当に理解することは、最後までなかったんだろうと思う。

私に、何の前触れもなく、他愛もない話をしている最中に「かっこよくはない」と言った時も。
私が仕事をしながらも必死に彼女の世話をしているのに、私が仕事で成功した時に喜ばないどころか、むしろ不機嫌になった時も。
自立心が強く、親よりも稼いでやるという気持ちでずっと生きてきて、努力してきたのを知っているはずなのに、「ずっと家にいられていいね。そうやって自由に仕事ができるのも、あなたの親のおかげだね」と冷たく言い放った時も。
私が触れ合いたくて、雰囲気にしても、私の手を振り払い、「そういうの、気持ち悪いんだよね。そういう行為をすることを想像するだけで気持ち悪い」と言った時も。
世話してもらえることが当たり前だと無意識に思っていたのかわからないけれど、「ありがとう」を全然言われなくなった時も。
友人の目の前で私を落とすような発言をして、帰り際に「あれは言わなくても良かったんじゃない?」と言ったら、不機嫌になった時も。
彼女が「気持ち悪い」と言うから、仕方なく、浮気せずに小説を書いて欲求不満を解消していたら、小説を書くことは「応援していない」とハッキリ言われた時も。
レスになって、少し2人の関係に溝ができている状態にも関わらず、マッチングアプリらしきものをインストールし、よりにもよってパートナーのいない人と仲良くなって、乗り換える気なのかと私が疑った時も。
ずっとスマホをいじってるから「もう少し控えてほしい。そんなにやることがあるの?」と聞くと、束縛しないでほしいと言われた時も。
彼女のことがわからなくなって、パニックを起こして、自分自身を殴りまくって涙が止まらない私を抱きしめず、放置した時も。
感情がぐちゃぐちゃになった私に向かって「あなたって、そんな人だったっけ?」と呆れたように言った時も。
最終的に、一番大事な約束を、「え?それって約束なの?」と平然と言い放った時も。
最後の悪あがきで、彼女からの愛情を確認したくて、「もし日本で今すぐ結婚できるってなったら、する?」って聞いたら「わからない」と答えられた時も。

結局、彼女は何も対処しなかった。
彼女なりには何かしてくれたのかもしれないけれど、それでは全然足りないと、そこまで言ってきた。
彼女が言ったこと、やったことを帳消しにできるほどには、全く到達していないと、私は主張した。
だって、ネガティブ1に対してポジティブ5ないと、そのネガティブは消えてはくれないんだよ?
心理学ではそう言われているし、実際、カクヨムで『いたずらはため息と共に』の悪口書かれた時も、他の人がめちゃくちゃ褒めてくれて、いつの間にか嫌な感情が消えて、むしろあたたかい気持ちになった。
そういう話も、たくさんしたんだ。

さらにタチの悪いことに、彼女はことごとく、全ての対処が遅かった。
何でもそうだけれど、何かに失敗した後に、それを補う行動を取るなら、早ければ早いほど良い。
失敗は誰にでもある。仕方がない。
でも、大事なのは、その後にどんな行動を取るか!なんだよ。
例えば、無意識に相手を否定してしまって、相手が傷ついたと知ったなら、知った瞬間に「そんなつもりはなかった!言い方を間違えた!ごめんなさい!」と言わなければ、どんどん状況を悪くするのは、簡単にわかることだ。
だって、そうやって「間違えた」ってちゃんと言ってくれなきゃ、「あ、本心でそう思ってるから、謝らないんだ」って、思っていっちゃうじゃん。
確信に変わっていっちゃうじゃん。
相手がその言葉で傷ついたってわかっても尚、「そんなつもりで言ったんじゃない、ごめんなさい」って訂正しないのであれば、本当に、本当にそう思ってるってことになっちゃうじゃん。

彼女のことは、わかっているつもりだ。
たぶん、傷つけてしまったというショックを受けて、頭が真っ白になって、何も言えなくなってしまうんだろう。
体が、動かなくなってしまうんだろう。
だから、最初の頃はじっと待っていた。辛抱強く。
そうしたら、ポソポソと、彼女は小さく理由を言ったり謝ったりしてくれた。
でも、それで終わりなんだよね。
「え!?それだけ!?」ってなった。
「これだけ待って、それだけ…?」って。
そんなことは、さすがに言わなかったけれど。
これだけ待たされたんだから、ポジティブ5でも足りないくらいだよ?って思った。
「かっこよくはない」って言ってしまったなら、もう、多少オーバーなくらいに「かっこいい」とか「素敵」とか「大好き」とかなんとか言って、とにかくポジティブに変えないと…!
しかも、どんどん彼女からの愛情表現も減っていき、本当にになっていった。
だから自ら求めるようになった。
「私のこと好き?」って、メンヘラみたいに聞きまくるようになった。
でも、そんな状態で返ってくる「好き」を、心の底から信じられるほど、私は安定した人間ではなかった。

きっと、もっと、心が安定していて、どんなに傷つく言葉を言われても…いや、そもそも、あの程度の言葉では傷つかないような心の大きな人が、きっと彼女には合うんだって思った。
私ってホント、かっこよくないし気持ち悪いし応援する価値もない、ちっさい人間なんだなって……彼女の言う通りじゃんって、思うようになった。
そうだ、だから彼女は必死に訂正をしなかったんだって思うようになった。

彼女が心理を学びたいけどお金がないと言うから、お金を出してあげた。
一生一緒にいるなら、私の財産は彼女との共有財産だって思ってた。
例え日本で結婚できなくとも、社会から2人の関係が認められずとも、私達はちゃんとパートナーなんだって、思いたくて。
彼女がオンラインで心理の勉強をしているのを、そっと見守っていた。
私も家で仕事をしているから、なるべく音を立てないように、すごく配慮した。
食事も、休憩時間が始まるちょうどに取れるように準備した。
彼女が、彼女自身の傷にようやく向き合おうとしているのだと思うと、すごく嬉しかった。
きっと、落ち込んだり、心が不安定になったりするだろうから、その時はちゃんとそばにいようって思ってた。

被害者意識が強い状態で、きちんと自分の傷を受け止められていないと、人って無意識に人に攻撃的になりやすい。
自分の受けてきた傷を、同じように誰かにも負わせようとしてしまうんだ。
それも、一番心を許している相手にしやすい傾向がある。
それを知っていたから、彼女の暴言をなんとか許せていたというのもある。
彼女が心理を学び、自分自身の傷と向き合う。
これを2人で乗り越えたら、本当の…ちゃんと、対等なパートナーになれるんだって、想像した。
今までずっと肩を貸してきたけど、ついに対等な関係になれるかもしれないんだ…!って思ったら、それまでの全てが帳消しになるような気がしていた。

でも、彼女は、勉強するのをやめた。
「色々考えて、心理を勉強するとどうしても自分の心に向き合わなきゃいけなくて、それがしんどくて、やめたい」と言われた。
私のなかの、何かが消えた。
「そっか…。まあ、自分の思う通りにやってみればいいんじゃない?今じゃないって思うなら、それは…そうなんだろうし…」みたいなことを返したと思う。
お金は返すと言われたけれど、別れた今も返されてはいない。
べつに、絶対返してほしいとは思わない。
貸すお金は、相手にあげるものだと思って、返ってこないものだと思って貸すのだと、心に決めていたから。

たぶん、私の頭が本格的におかしくなり始めたのは、この辺りからだ。
ちょっと、日記とか見返せば時系列を正確に書けるんだと思うけど、見返す気がないから、わからない。
これは…気持ち悪いって言われる前の出来事だったかな…。
ちょっと、覚えてないけど。

彼女が泣きながら「愛してるよ」と言った。
その光景だけが、私の心の支えになった。
あの時の言葉だけは、なぜか信じられたし、今も…信じていたいと思っている。
でも、同時に、矛盾した“愛されていない”、“大事にされていない”という感覚が、私を歪めた。
死にたくて死にたくてたまらなくなった。
そこからはもう…死神とのワルツの始まりだよ。

踏み台にされた。
結局また、踏み台にされた。
肩を貸していたつもりが、いつの間にか踏み台になっていた。
もう、一生誰かの踏み台なんだって、絶望した。

そして、私は彼女と別れる決断をした。
私は彼女を愛していた。
精一杯大事にしていたし、それを行動にもちゃんと反映させていた。
常に言葉と行動で示してきた。
ずっとずっと、宝物に触れるように、彼女との日々を大切にしてきた。
彼女を愛していたからこそ、彼女を解放してあげなきゃって思った。

最後の1年間は、本当に、全く彼女は私と話さなくなって。
…“私と”ではないか。
私が話しかければ、普通に話す。
でも、彼女から、彼女自身のことを何も私には話さなくなったし、私が1日何をしていたのかとか、そういうことも彼女からは一切聞かなくなった。
私がどれだけ、2人の関係について話そうとしても、彼女は「わからない」しか言わないロボットみたいになった。
彼女の真意をどうしても知りたくて、彼女の日記を見たんだ。
「苦しい」って書いてあった。
ずっとずっと大切にしてきたけど、そんなに苦しい思いをさせてしまっていたならば、私のただの自己満足だったのだろう。
そして「次に大きな喧嘩になったら、別れを考えよう」と書いてあるのも読んだ。
「誰に悪者と思われても、自分は進む」みたいなことも書いてあった。
もう、彼女には無理なんだと悟った。
今までの、私への暴言の数々…そして、一番大事な約束を平然と破ったこと…それに対して私がどれだけ傷ついてきたか……。
その傷を、彼女には治せない。
自分で傷つけておきながら、彼女は、私の傷を治す気すらない。
そもそも、彼女は“傷つけた”なんてすら思っていないのかもしれない。
心の奥底では、被害者意識がまだまだ強く、私を傷つけた自覚すら持てていないのかもしれない。

…こう書いていると、本当に…彼女は、都合の良い私が好きだっただけなんだよな。
私が愛されることって、ホント、ないんだな。

まあ…それでも…別れを告げた後に『花束みたいな恋をした』を見てさ、初めて俯瞰的に自分達のことを知ることができてさ、自分も頑張りすぎてたんだなって理解したんだよ。
彼女とのこと以外でも、色々つらいことが重なりすぎて、冷静であろうと努力はしていたけれど、そうあろうとしてあれるものではないからね。
自分なりには精一杯やっていたつもりだったけど、その精一杯がダメだったんだって気付かされたんだよ。
もう、全然冷静になんかなれていなくて、いつの間にか、ただ自分を犠牲にすることでしか保たせることができなくなっていて。
…でもそこで、一旦全部やめて、自己犠牲をまず最初にやめて、彼女のことも放っておいて良かったんだよ。
だって彼女だって子供じゃないんだから。大人なんだから!
私がやらなければ、たぶん彼女は自分でできたんだよ。
私がやらなければ、自分でやんなきゃって思えたんだよ、いろんなことをさ。
なのに、私が頑張っちゃったから…。
自己犠牲してまで頑張っちゃったから…。
だから、きっと喧嘩した時も、過剰に彼女を責めしまったのかもしれない。
結局それが、彼女を追い詰めて、彼女はどんどん縮こまっていって、愛情表現もしてくれなくなってしまったのかもしれないって…思ったりしたんだ。

だから今度は…自己犠牲なんてしないからって。
いつの間にか…最初はならないように意識していたはずなのに、共依存になってしまっていたんだってわかったから。
だから、これが本当の最後のチャンスと思って、やり直そうって……話したけど……彼女は「講義聞いてるみたい」って言った。
「よく、映画見ただけでそんなに思えたね」って、冷たい目をして言った。
映画を見ただけでそう思ったんじゃない。
ずっとずっとずっとずっと、私は、どうしたら彼女と、また仲良くあれるんだろうって、ずっと、ずっと、考え続けていたんだ。
それが…そうやって考えてきたことが、パズルのピースを埋めるみたいにして、はまっていって、映画を見て、考えがまとまったってだけな話で…。
今は、お互いに環境も変わって、色々経験して、ずっと長く一緒に過ごしてきて…こんな大きな喧嘩をしたのも、移行期だからなんじゃないかって話した。
今まで、共依存的な関係だったのが、自立した大人な関係に移行する時期に入ったからなんじゃないかって。
でも彼女は「自立した関係で、パートナーである必要があるの?」なんて言ってきた。
彼女は、共依存的な関係を望んでいたのだと、初めて知った。
今まで散々、共依存について語り合ってきたのに、あの日々がまるで嘘だったかのようだ。
もう、そんなこと言われたら、受け入れるしかないよね。

私の、死を覚悟した説得は、彼女に微塵も響かなかった。

その悲しみを受け入れられず、感情的に、彼女との思い出の物を色々捨てた。
物を捨てていったら、次第に心が落ち着いていき、「よし、死ぬか!」って、ピクニックにでも行くような気分になった。
結局死ねなかったけど。
その後、彼女が手を繋いできたり、キスをしてきたり、私がずっとしたいとかしてほしいとか言っていたことを実行に移してくれるようになったりした。
意味がわからない。
「やり直す気は本当にないの?」って聞いたけど、キッパリ「ない」と言われた。
「じゃあキスなんてしないでよ」って言った。

私が、感情的に彼女との思い出の物を捨てたのがどうしても許せなかったんだって。
(あくまで自分の物を捨てたのであって、彼女の物は一切捨てていない)
だからやり直す気はないって。
でも順番が逆なんだよ。
死を覚悟した、必死の説得に対して、彼女は全く応じなかった。
考えることすらしなかった。
なんか、都合良いよね。
私が物を捨てたのに傷付いたからやり直す気がないってさ、私のせいみたいな言い方するじゃん。
でも、私が物を捨てる前に、彼女はバッサリ私を切っているんだよ。

てか、思い出の物を目の前で捨てられた傷は、もちろん理解できるけど、私はそれ以前に、もっともっともっともっと深い傷を負い続けてきたんだよね。
それに関しては、何も無いんだよね。
ただ、最後に、必死の説得を、適当にあしらわれたから、それが悲しくて……まず、そのことに私が傷ついて、物を捨てたんだよ。
それは、彼女が言った「やり直す気はない」という言葉を、悲しくも、受け入れた証拠だよね。
いつまでも思い出の物を取っておくならば、結局彼女への想いを断ち切れなくて、彼女の「やり直す気はない」という言葉を尊重しないことになる。
ストーカーにならない、まともな良い恋人じゃないか。
お互いさま…じゃないか。
彼女も私を散々傷つけた。
私も最後に彼女を酷く傷つけた。
自分のしてきたことを棚に上げるなよ。

約束破りも、棚上げ野郎も、私は、大嫌いだ。昔から。
その話は、出会った時から言い続けてきた。
なのに、彼女はそれをやった。

最後の最後、彼女の浮気もどきラブレターを見てしまって、もうなんか…なんか……ね……。
言葉が出てこないよね。
それで、彼女は勝手に私がそういうのを見たことにブチギレてた。
私はラブレターを見てから一度も、もう…彼女には干渉しないって思って、彼女のプライベートな物に触れていなかった。
けど、彼女は被害妄想にとらわれて、私が勝手に見てるんじゃないかってブチギレた。
でもさ、付き合った当初、彼女、好き放題私のスマホ見てたんだぜ?おかしいよね!?おかしいよね!?!?
私の思い出グッズとかも「見たい見たい」って、すごい見られたしさ。
私は一貫して、彼女のプライバシーに踏み込むようなことはしてこなかったのに。
本当に、最後の最後だけ。
彼女が、私がどれだけ質問してもまともな返答をくれないから、真実を知りたくて見ただけ。
しかも彼女のスマホは、結局最後まで見なかったからね?
友達とかに、今までほとんどスマホをさわらなかった彼女が四六時中スマホいじってるって話をした時、「自分だったら、浮気されてるかもって思ったら、絶対見ちゃう」って言われたけど、私だって知りたかったけど、信じていたかったんだよ。

そんで、彼女は私と同棲するために地元を出てきたから、こっちには友達とかもいなくて。
それを知っていたから、「もし近くに頼れる人がいるなら教えなくていいけど、頼れる人がいないなら、一応引っ越し先の住所教えて?」って言ったの。
「最近地震多いし、普通に体調崩して誰かに来てもらわないとヤバいってこともあるだろうし、そういう、もし何かあった時のために」って。
本当に、純粋な親切心よ?
んで、彼女は「わかった」って…「引っ越して落ち着いたら手紙書くね」って言ったんだよ。
でもなんか、直前になって、一応前例があったから不安になって「自分の住所書かずに手紙出したりしないよね?」って聞いてみたの。
そしたら彼女、動揺してさ。
「やっぱり…」ってなって。
いや…もう…そんな…そんなに私に対して、もう全く信頼なくて、そんなに教えたくないなら、べつに教えなくていいですよ!?!?ってなったよね。
なーんか、めちゃくちゃシンプルに傷ついたわ。
私は当分引っ越す予定ないからさ?彼女は私の家を当然知っているわけじゃん?
でも、私は彼女の家を知らない。
それって普通にアンフェアだし。

てか、彼女、ふんわりした見た目してるから、結構人からナメられるみたいなことも多くて…。
ぶつかりおじさん的なのに狙われやすいタイプというか…。
だから本当に本当にめちゃくちゃ心配してるだけなのにさ。
私はまだ彼女をちゃんと愛してたから、本当に、純粋に心配してたんだよ。
なんか、引っ越しの準備も、めちゃくちゃマイペースにやってて、このままじゃ間に合わないんじゃない!?ってなって、結局引っ越し当日の朝方まで準備を手伝ってあげたし。
他にも、電気、ガス、水道とかの手続きの方法とかさ、なんか、色々、結局めちゃくちゃ手伝ってあげてさ。
なのに!!なのに、だよ!!
なのに、住所は教えたくないみたいな態度取られて。
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっっ!!
ってなったよね。心の中で。
ちゃんとさ、「頼れる人が他にいるなら教えなくていい」とまで言ってるんだよ!?!?
でも彼女は「そんな人いない」って即答するの。
もううううさああああああ!!!
こんな親切な人、なかなかいないよ!?!?!?マジで!!!自分で言うのもなんだけどさ!?!?
言っとくけど、もう別れた相手だからね!?
散々傷つけられた挙げ句、浮気もどきされて、逆ギレされても、引っ越しの手伝いをしてあげたんだよ!?!?ねえ!!!!
最後にゃ、彼女が行きたいって言ったお店連れてってあげたりして、最後だからって奢ってあげたんだぜ!?!?
…そもそも、生活費は元から私がかなり多めに払ってたけど。
彼女は2割負担でしたね。
「貯金しな~」って言ったげて。
なんて優しい恋人なの!!!!!私って!!!本当に!!!

まあ、欠点をあげるなら、こうやってすぐ気持ちを吐き出しちゃうことかな。
実際、彼女にも、SNSに不満を書かれるのが嫌だって言われてたしね。
まず、SNSに書く前に、全て彼女に、やさ~~~しく、ていね~~~いに、話してるんだけどね。
話し合って、2人の中間地点見つけて、「じゃあこれでいこう!」ってなったはずなのに、彼女が全然違う動きをするから、今度は少し強めに言って……で、それでもダメだから、SNSに不満をぶちまけるんじゃんね。
でも、私も過去にSNSに愚痴書かれて傷ついたことあったからさ(自分がしてしまったことは普通に反省したけど、私の記憶にない、してないことまで…誇張して書かれてたから、さらに傷ついたよね)、嫌だって気持ちはわかるんよ。
それで、さらなる関係悪化を防ぐために、SNSをやめたんだよね。
でも、結局それもダメだった。


前にグダグダ書いた記事達と、内容が被ってるところが多々あったかな…。
まあ、いいよね。日記だし。

友達から、「相手に復縁を求められたらどうするの?」って聞かれたのが、ずっと頭に残ってる。
…そもそも、住所を教えたくないほどに信頼できない私に、彼女は復縁を求めることがあるのかな?
あれだけ、私が決死の覚悟で「やり直そう」って言っても、即「やり直さない」って決断を下したんだよ?
あれだけキッパリ、ハッキリ、言ったんだよ?
そして、あれだけ散々傷つけておきながら、そのせいで死にたくなるまで追い詰められた相手を放置して、浮気をしちゃうような人だよ…?
悪者扱いされたとしても、進むんだって。
そう、書いてあった。

悪者扱いするつもりはないけれど。
私は…本当に、最後の最後まで、ちゃんと彼女を愛していたけれど。
んー…なんか、わかんない。
本当に、ずっと、彼女の真意が知りたかった。
どんな質問をしても、彼女はずっと「わからない」と答えてきた。
本当にわからなかったんだろうね。
ぐっちゃぐちゃで…自分がしてきたことも、あるいはされてきたことも、あらゆる傷を直視できず、受け止められず、ただ、逃げているだけなのかもしれない。

…復縁ね。
復縁か。

別れてから、彼女が引っ越すまでの間、本当に『花束みたいな恋をした』と同じように、割と楽しく彼女と過ごしていた。
だから、その度に「なんでやり直さないんだろう?」って、すごく疑問で。
何度か彼女にそのことを言ってみたりした。
けど、彼女の意志は揺らがなかった。
だからそもそも、彼女は私に復縁なんか迫ってこないと思うんだよね。
悲しいけれど。
私の今までなんだったんだろう?って、すごく思うけど。

でも、もし、万が一、復縁したいって言われたなら
まず、浮気もどきについて、全て話してもらわなきゃ、全然信用できない。
そして、四六時中スマホをいじるのもやめてほしいし、職場から家まで1時間以内で帰れる距離にあるのになぜ、用事がない日は必ず2時間以上かけて帰ってくるのか、理由を知りたい。
愛情表現は初期の頃のようにちゃんとしてほしいし(私に興味を持ってくれている、というのが、彼女からの最大の愛情表現だった)、感謝の言葉もちゃんと言えるようになってほしい。
そして、もう逃げないでほしい。絶対に。
何か2人の間で問題が起きたら、ちゃんと向き合ってほしい。
「疲れた」とか言い訳してないで。
「疲れた」なんて言って、じゃあ疲れなくなる時を待ってたら、もうその時にはおばあちゃんだよ。
実際、レスだって、彼女が「気持ち悪い」って言うから、ずっとずっと、1年以上、彼女が気持ち悪くなくなるまで待っていたのに、彼女からそういう気持ちをなくそうって努力をしたことはなかったからね。
私が必死に訴えて、ようやく、よーーーーやく、重い腰を上げて、なんとか、努力を始めてくれて、触れ合ってくれるようにはなったけれど。

で、一番大事なのは、最初に、「復縁したい」じゃなくて「結婚したい」と言うことだ。
それがなければ、復縁は…ないな…たぶん。
私から「私と結婚はしたくなったの?」なんて聞くようじゃダメダメだよ。絶対ダメ。
だってもう、私は彼女にプロポーズしたんだから。
婚約破棄したのは彼女の方なんだから。
結婚させてくれないのは国だけど。
きっと心は揺らぐんだろうけど、彼女から「結婚したい」ってちゃんと言ってくれなきゃ、復縁したってたぶん同じことの繰り返しになるだけ。
ちゃんと自ら意思表明をしてくれなきゃ、私は彼女を、信用しきれない。

私、ずっと「結婚指輪みたいな、シンプルなお揃いの指輪を買おう」って言ってたんだけど、最初はノリノリだった…むしろ彼女が最初は欲しがっていたのに、買う機をなんだかんだ逃していたら、彼女は渋るようになった。
結婚したいかどうかわからないって言い始めた頃だ。
結構それも傷ついた。
だから、もし、万が一、彼女が復縁をしたいと言ったなら、結婚指輪とか用意して、プロポーズしてくんないと、無理だな。
それでも、そこまでしてくれても、彼女を完全に信用するのは…もう、かなり、厳しいと思う。
まあ、私の想像の斜め上をいけるのが彼女だから…そういう、私の想像できないプラスな何かがあれば、また信用できるんだろうけど。

…ま、普通に考えて、無理だろうな。わかんないけど。
でも私が今書いた彼女に求めていることって、元々彼女がポテンシャルとして持っていたものなんだよ。プロポーズすること以外は。
んー…プロポーズだってできるか。だって、本当に最初の最初は、彼女が「結婚したい」って言っていたんだから。
私との結婚生活を楽しそうに妄想したりしてさ。

彼女は元々、スマホをほとんどさわらない人だったし、コンビニとかに寄ってデザートとかおやつは買うけれど、基本的には家に帰ってゆっくりしたい人だったし、私にいつも興味を抱いて「今日は何してたの?」とか「ご飯何食べたの?」とか毎日聞いてくれていたし……あぁ、「ありがとう」はあんまり言えない人だったか。
少なくとも、別れる1年前まではずっと、向き合い続けてくれていた。話した内容を忘れてしまっても、疲れていても、向き合ってくれていた。
触れ合いなんて、付き合った初日からしたじゃないか。それからずーっとレスなんて無縁に近かったのに、急になんなんだよ!って感じだよ。
まあ、理由は言ってくれたし、理解はできたけどね。だからこそ1年以上待ったわけだし。

ホント…なんでこうなっちゃったんだろ…。
元々の彼女がずっと好きで、幼いところもたくさんあったけれど、成長したらめちゃくちゃ素敵な女性になるじゃん!絶対!って思ってたのにな。
考えなしに強い言葉で相手を否定する癖……まあ、誰しも短所はあるんだから仕方ないこととは言え、本当に、その後「言い方を間違えた」って全力で訂正してくれればいいだけの話だったのにね。
問題はいたってシンプルだったのに、どうしてこうなっちゃったんだろう。
いつもそう思っていて、いつも「なんで!?」ってなってた。
…そうか、それも斜め上をいくんだね。

いつも彼女に言っていたよ、ちゃんと。
あなたはとても素敵な人なんだから、それは私がよく知っているんだから、短所は誰にでもあって、それは仕方のない、当たり前のことで、大事なのは、短所をどう補うか、失敗した後にどう行動するか…なんだよって。
なんでそんな単純なことが……わからないんだろう……。
「なんで!?」って、もはや言っちゃってたもん。
なんで長所を潰して短所を増やしてるの……って、頭の中がぐちゃぐちゃになった。
元々誠実で真面目な人だし、約束とかちゃんと守る人だったんだよ…。
それが約束を破るようになるって……なんで短所増やしてんのかさっぱり理解できなかった。
考えなしに話しちゃうのも、良く言えば嘘をつかないってことなわけで。
その、嘘がないと感じられる、素直な態度が好きだった。
でも人が傷つく言葉は、普通に言っちゃダメでしょ(笑)
だけど言ってしまう、その素直さは仕方ないから、言ってしまった後の行動を変えればいいだけだったんだよ、本当に。
それに、人間誰しも、多かれ少なかれ、言葉を間違えてしまうことはある。
そんなのどうしようもないことなんだから……本当に……その後の言動で、しっかり訂正すればいいだけじゃんね。
そう、言っていたのに……なぜか、彼女は実行に移さなかった。
だから…いざっていう時はちゃんと行動力のある彼女が、実行に移さないってことは、本心だったから…訂正することなんてなかったからなんだ…って…そう思ったら……もう、私はそこから、ダメだった。

こんなにも単純なはずなのに、難しい。
ああ、本当に……本当に、難しい。
悔しい。

私から彼女に復縁を迫ることはないな。
そりゃあ、会いたいとは思うだろうし、やり直せるならやり直したい。
けど、もう……決死の覚悟で言った言葉を突き放した彼女に、私から言えることは、何一つない。
私は……やり切った。
悔しいけど、後悔はない。

この先は、気ままに過ごしてから……死にたくなったら今度は失敗しないようにすると誓うよ。
しばらく誰にも発見されずに体が腐敗することを想像しながらね(笑)
なんか、一応レズビアンのイベントとか、参加してみるつもりではいるんだよ。
でも今の自分が、10代後半から20代前半に(彼女と出会うまで)モテたように、モテるとは到底思えない。
誰かから、すごい好意を向けられるってイメージが、全くできない。
そもそも、彼女のおかげで自信も自己肯定感も人を信じる力も木っ端微塵になったので、やっぱ…なんか、自分に魅力を感じない。
ぐーたら人間だしね。
今は趣味もないし。
つまらん人間よ。

あー、長々と書いた。
ここまで読んでくれる人なんている?(笑)

本題からだいぶ逸れたな。
まあ…結論、愛の対なんてわからなかった。
私は……彼女が、私以外の人と幸せになるのは、見たくない。
かと言って、もちろん不幸になってほしいわけではない。
彼女にはもちろん幸せであってほしい。
ただ、見たくないだけ。
だって私は、彼女と一緒に幸せであり続けたかったんだもん。
そのために、全身全霊を注いで生きてきた。
だから、悔しいんだ。
単純な話だ。
こんなに全力で人を愛せることは、もうないだろう。
そんな体力残ってないし、こんな終わり方しちゃ、人を純粋に真っ直ぐに信じることもできそうにない。
もし次にお付き合いをする人がいたとしたら、申し訳ない。
申し訳ない気持ちを抱えながら、付き合って別れてを繰り返すのかもしれない。
それで、満足したら、死ぬ。
…ってか、もう既に満足しちゃってるんだけどね。
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