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9.移ろい
525.大人
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「穂、永那のことばっか!うるさい!…今日はあたしを愛してくれる日なの!今日は、穂があたしを、愛してくれる日なの!」
「うん、わかってる。わかってるけど、私は…永那ちゃんのことも、ちゃんと大事にしてほしい」
「そんなの…永那があたしを大事にしてくれたら…あたしだってするし」
「永那ちゃんは千陽のこと、大事にしてるよ?千陽も、それはわかってるんでしょ?」
まるで聞き分けのない子供だ。
今日は…3人とも、想像以上に疲れているのかもしれない。
何度も険悪な雰囲気になるのは、きっとそのせい。
…私も、すごく疲れた。
「千陽…」
千陽は逃げるように立ち上がって、2階に上がってしまった。
ため息が出る。
少し、頭が重たい。
体を起こし、なんとかキッチンに立つ。
軽くプラスチックの食器を洗い、袋に入れる。
前に掃除機の場所は聞いたことがあったので、クローゼットを開けて、取り出した。
永那ちゃんの部屋よりも広そうなクローゼットの奥に、掃除機は立て掛けられていた。
充電式のコードレス掃除機は有名なブランドの物で、私の家にある物よりずっと良い品だと、すぐにわかる。
疲労がなければ、きっとおっかなびっくりに使ったんだろうけれど、今はそんな余裕すらない。
床を簡単に掃除し、掃除機の先端を変えて、ソファの上も掃除機をかける。
カーテンを閉めようとすると、窓に人影が反射して見えた。
振り向くと、壁に半分隠れるように、千陽が立っていた。
「千陽」
「…ごめんなさい」
本当に、叱られた子供みたい。
その姿に、笑みが溢れる。
「千陽、テーブル拭いてくれる?」
コクリと頷いて、彼女は既にテーブルに置いてあった使い捨ての布巾を手に取った。
少し眺めてから、テーブルを拭く。
初めてお手伝いをする子…?
掃除機の中に溜まったゴミを捨てる。
使う前は新品同様に綺麗だったので、ホコリがついたダストカップの内側をティッシュで拭く。
広い部屋を掃除するのは楽じゃない。
これは…たしかに家事代行が必要なくらいの労力だ。
じんわりと汗が肌に滲む。
早くお風呂に入りたい。
掃除機を片付けると、千陽もテーブルを拭き終えたところだった。
「綺麗になった…!」
両手を伸ばすと、あくびが出た。
「千陽、お風呂入っちゃおう?」
「うん…!」
彼女はスキップでもしそうな勢いでゴミ箱に布巾を捨てた。
腕を組まれ、2人で2階に上がる。
「チャイナ服だし、定番のお団子にしようか迷ったの」
「千陽のお団子、可愛いだろうね」
服を脱ぐ。
フフッと彼女が笑った。
「クマの耳みたいに」
千陽は両手をグーにして、頭に乗せる。
こういう女の子らしい可愛い仕草、私も出来たらいいのに…。
恥ずかしくて、意識すればするほど出来そうにない。
「似合いそう」
「朝1回やったんだけど、1日そうしてたら頭痛くなりそうで」
「ああ…千陽のお母さんも、頭痛いって言ってたよね」
彼女が頷く。
千陽のお母さんは、そういった髪型ではなかったけれど。
長い髪を1つに纏めること自体、頭皮の一点に重みが集中するのだから、長時間そうしていると痛くなるのは想像が出来る。
「だから結局、下ろした」
「そっか。ちょっと、見てみたかったな」
「見る…?」
「してくれるの?」
千陽は1度自分の部屋に戻り、必要な数だけ、ピンとゴムを持ってきた。
私は既にワンピースを脱ぎ終えてしまって、肌着姿なのだけれど、寒くはないので、大人しく彼女のお団子作りを眺める。
「ホントは三つ編みして、それをお団子に巻いてたんだけど…今は時間ないから、これだけ」
「可愛い!」
「でしょ?…髪伸びたし、こういうのも出来るようになったのは良いかも」
「どうしてずっとショートにしてたの?」
「変な男が寄ってくるから」
「…でも、ショートでも寄ってきてたんだよね?」
「うん、大して変わらなかった」
「ショートも可愛いもんね、千陽」
「どっちが好き?」
よく聞かれる質問。
「どっちも好きだよ」
いつも同じ回答。
千陽は満足そうに頷いて、私に背を向けた。
「穂、ボタン外して?」
項のボタンを外す。
ボタンで留まっていた布が開けて、背中が大きく晒される。
「千陽のお母さんの服、すごく大胆だったね」
「パパが好きだから、ああいうの」
「千陽は、今日は控えめなんだね。似たようなやつじゃなくて良かったの?」
「ママより目立ちたくないから。ただでさえ話しかけられるのに、もっと話しかけられるハメになる」
「久米さん、とか…?」
「そ。あの人はあたし目的だし。…でも、これも可愛いでしょ?」
「うん、すごく似合ってる」
彼女が華やいで、チラチラとお花が咲いたような笑みを浮かべる。
「お母さんのは袖付きだったけど、千陽のはノースリーブなんだよね。千陽の白い肌がやわらかそうで、つい見ちゃう」
「…変態」
「ち、ちがうよ…!」
「穂が喜びそうなの選んだから、良かった」
彼女は洗面台に寄りかかり、胸元に手を当てる。
ちょうど2つの房の間に手を置くから、豊かな胸が強調される。
無意識に、ゴクリと唾を飲む。
「うん、わかってる。わかってるけど、私は…永那ちゃんのことも、ちゃんと大事にしてほしい」
「そんなの…永那があたしを大事にしてくれたら…あたしだってするし」
「永那ちゃんは千陽のこと、大事にしてるよ?千陽も、それはわかってるんでしょ?」
まるで聞き分けのない子供だ。
今日は…3人とも、想像以上に疲れているのかもしれない。
何度も険悪な雰囲気になるのは、きっとそのせい。
…私も、すごく疲れた。
「千陽…」
千陽は逃げるように立ち上がって、2階に上がってしまった。
ため息が出る。
少し、頭が重たい。
体を起こし、なんとかキッチンに立つ。
軽くプラスチックの食器を洗い、袋に入れる。
前に掃除機の場所は聞いたことがあったので、クローゼットを開けて、取り出した。
永那ちゃんの部屋よりも広そうなクローゼットの奥に、掃除機は立て掛けられていた。
充電式のコードレス掃除機は有名なブランドの物で、私の家にある物よりずっと良い品だと、すぐにわかる。
疲労がなければ、きっとおっかなびっくりに使ったんだろうけれど、今はそんな余裕すらない。
床を簡単に掃除し、掃除機の先端を変えて、ソファの上も掃除機をかける。
カーテンを閉めようとすると、窓に人影が反射して見えた。
振り向くと、壁に半分隠れるように、千陽が立っていた。
「千陽」
「…ごめんなさい」
本当に、叱られた子供みたい。
その姿に、笑みが溢れる。
「千陽、テーブル拭いてくれる?」
コクリと頷いて、彼女は既にテーブルに置いてあった使い捨ての布巾を手に取った。
少し眺めてから、テーブルを拭く。
初めてお手伝いをする子…?
掃除機の中に溜まったゴミを捨てる。
使う前は新品同様に綺麗だったので、ホコリがついたダストカップの内側をティッシュで拭く。
広い部屋を掃除するのは楽じゃない。
これは…たしかに家事代行が必要なくらいの労力だ。
じんわりと汗が肌に滲む。
早くお風呂に入りたい。
掃除機を片付けると、千陽もテーブルを拭き終えたところだった。
「綺麗になった…!」
両手を伸ばすと、あくびが出た。
「千陽、お風呂入っちゃおう?」
「うん…!」
彼女はスキップでもしそうな勢いでゴミ箱に布巾を捨てた。
腕を組まれ、2人で2階に上がる。
「チャイナ服だし、定番のお団子にしようか迷ったの」
「千陽のお団子、可愛いだろうね」
服を脱ぐ。
フフッと彼女が笑った。
「クマの耳みたいに」
千陽は両手をグーにして、頭に乗せる。
こういう女の子らしい可愛い仕草、私も出来たらいいのに…。
恥ずかしくて、意識すればするほど出来そうにない。
「似合いそう」
「朝1回やったんだけど、1日そうしてたら頭痛くなりそうで」
「ああ…千陽のお母さんも、頭痛いって言ってたよね」
彼女が頷く。
千陽のお母さんは、そういった髪型ではなかったけれど。
長い髪を1つに纏めること自体、頭皮の一点に重みが集中するのだから、長時間そうしていると痛くなるのは想像が出来る。
「だから結局、下ろした」
「そっか。ちょっと、見てみたかったな」
「見る…?」
「してくれるの?」
千陽は1度自分の部屋に戻り、必要な数だけ、ピンとゴムを持ってきた。
私は既にワンピースを脱ぎ終えてしまって、肌着姿なのだけれど、寒くはないので、大人しく彼女のお団子作りを眺める。
「ホントは三つ編みして、それをお団子に巻いてたんだけど…今は時間ないから、これだけ」
「可愛い!」
「でしょ?…髪伸びたし、こういうのも出来るようになったのは良いかも」
「どうしてずっとショートにしてたの?」
「変な男が寄ってくるから」
「…でも、ショートでも寄ってきてたんだよね?」
「うん、大して変わらなかった」
「ショートも可愛いもんね、千陽」
「どっちが好き?」
よく聞かれる質問。
「どっちも好きだよ」
いつも同じ回答。
千陽は満足そうに頷いて、私に背を向けた。
「穂、ボタン外して?」
項のボタンを外す。
ボタンで留まっていた布が開けて、背中が大きく晒される。
「千陽のお母さんの服、すごく大胆だったね」
「パパが好きだから、ああいうの」
「千陽は、今日は控えめなんだね。似たようなやつじゃなくて良かったの?」
「ママより目立ちたくないから。ただでさえ話しかけられるのに、もっと話しかけられるハメになる」
「久米さん、とか…?」
「そ。あの人はあたし目的だし。…でも、これも可愛いでしょ?」
「うん、すごく似合ってる」
彼女が華やいで、チラチラとお花が咲いたような笑みを浮かべる。
「お母さんのは袖付きだったけど、千陽のはノースリーブなんだよね。千陽の白い肌がやわらかそうで、つい見ちゃう」
「…変態」
「ち、ちがうよ…!」
「穂が喜びそうなの選んだから、良かった」
彼女は洗面台に寄りかかり、胸元に手を当てる。
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