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9.移ろい
511.パーティ
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「はい」
お茶の入ったコップを渡され、ゴクゴクと飲み干す。
部屋の襖は開いたまま。
つまり、もうこれ以上はシないということ。
思っていたよりもあっさりだった。
「おかわりいる?」
「大丈夫、ありがとう」
彼女は頷いて、床に空のコップを置いた。
永那ちゃんがゴロンと寝転ぶ。
左腕を伸ばして、「おいで」と誘われる。
掛け布団を肩に掛けながら、私は彼女の腕枕に収まる。
ギュッと抱きしめられた。
「お母さん、ちゃんと寝てた」
「良かった」
「穂が思ったより声出すから、内心ちょっとビビってた」
彼女の脇腹を突く。
「くすぐったいよ」
言われても、止めない。
「やめっ、アハハッ、ちょっ…穂っ」
永那ちゃんは、本当に、ムードがない…!
「…だめ?」
「ん?」
「声出すのって、変…?」
ギュゥッと強く抱きしめられる。
「変じゃない。好きだよ」
「でも…」
「本当に。穂の声、大好き。…でも、ほら、今日はタオルしてたでしょ?」
彼女の胸の中で頷く。
「だから、もっと声、出ないと思ったんだよ。ネカフェの時は、もう少し声が抑えられてたと思うんだけど…あれは、タオルが濡れてたからかな?それとも、今日は拘束具で拘束されてたから、穂があの時より興奮してたのかな?」
彼女の優しい声音が好き。落ち着く。
生まれた不安も、一瞬で掻き消してくれる。
「どっちも…かも…」
ハハッと彼女が笑う。
見上げると、彼女も私を見てくれる。
緩やかにカーブを描いた瞳が、私を見つめる。
「可愛い。大好きだよ、穂」
「私も、永那ちゃん大好き」
「ありがとう」
「ん?」
「今日。本当に、楽しかった」
「どういたしまして」
「また、泊まりに来てね」
「うん」
「嬉しい…」
彼女に抱きしめられたまま、眠った。
途中、永那ちゃんがゴソゴソと動いていたけれど、何をしているのかはよくわからなかった。
もう1枚、布団を…掛けていたのかな…?
眠くて、すぐに意識は手放された。
アラームで目を覚ます。
一体私は何時に寝たのか、全くわからないけれど、なんだかスッキリ目覚められた。
永那ちゃんにキスをしても、彼女はむにゃむにゃと口を動かすだけで、目覚める気配はない。
起き上がり、朝のルーティーンを終えて、朝ご飯を作る。
永那ちゃんのキーチェーンから鍵を取って、包丁を取り出す。
簡単なものだけれど、永那ちゃんとお母さんに、朝食と昼食を。
作り終える頃に、お母さんと永那ちゃんがほぼ同時に起きてきた。
2人揃って「良い匂い」と言うから、笑ってしまう。
3人で朝ご飯を食べて、私は家を出た。
永那ちゃんとお母さんに、アパートの渡り廊下から盛大に見送られて。
急いで家に帰り、サッとシャワーを浴びて、服を着替える。
洗濯物を洗濯機に入れて、今日のスケジュールを確認しながら支度をした。
生徒会の新入生歓迎会、場所はいつもの公園で、バーベキュー。
食材は2年生が準備してくれるので、私がやることは進行役だけ。
なんだか去年が懐かしい。
“あなたはお肉担当でお願いします。あなたは野菜で。あなたは飲み物を。あなたは麺類とお菓子を。ご飯は私がおにぎりを持っていきます。予算は事前に言った通り。超えないように気をつけてください。レシートは必ず取っておいてください。くれぐれも、なくさないように。バーベキュー会場の予約は既にしたので、問題ありません。他に懸念事項はありますか?”
…そんなようなことを、同級生に指示していたと思う。
みんなビクビクしながらも従ってくれた。
当時は特に何も思っていなかったけれど、今思えば、一方的で威圧的だ。
今年のリーダーは日住君だから、私の時みたいにはならないんだろうな。
和気あいあいと、きっとみんな楽しく準備をするんだろう。
…でも!それはそれとして…バーベキューというのは、食あたりが起きる可能性があるので、しっかりそこは見張っておかなければ。
もし誰かが嘔吐したり腹痛を訴えたりしたら、すぐに対応出来るように、準備をしておく。
楽しむためには、きちんとそれなりの準備もして行かないと。
11時、1年生も含めて全員が集合した。
「まず、2年生の皆さん。準備、朝からお疲れ様でした。ありがとうございます。あまり焼くことに集中し過ぎて、自分の食べる分がなくならないように気をつけてくださいね。ちなみに、去年、私は色々と食べ損ねました…。バーベキューが終わった後に、お腹がすいてコッソリご飯を食べたのは、ここだけの秘密です」
笑いかけると、後輩達が顔を見合わせ、楽しそうに笑ってくれる。
その後、拍手に包まれた。
「新入生の皆さん、生徒会に入っていただき、ありがとうございます。今日は皆さんと交流を深めるための歓迎会を開かせていただきました。思う存分、楽しんでください」
パチパチと拍手される。
乾杯の挨拶を終えると、2年生が張り切って肉や野菜を焼き始める。
事前に火は焚いておいてくれていた。
日住君が積極的に、緊張した面持ちの1年生に声をかけている。
「空井先輩」
声をかけられ、横を見た。
お茶の入ったコップを渡され、ゴクゴクと飲み干す。
部屋の襖は開いたまま。
つまり、もうこれ以上はシないということ。
思っていたよりもあっさりだった。
「おかわりいる?」
「大丈夫、ありがとう」
彼女は頷いて、床に空のコップを置いた。
永那ちゃんがゴロンと寝転ぶ。
左腕を伸ばして、「おいで」と誘われる。
掛け布団を肩に掛けながら、私は彼女の腕枕に収まる。
ギュッと抱きしめられた。
「お母さん、ちゃんと寝てた」
「良かった」
「穂が思ったより声出すから、内心ちょっとビビってた」
彼女の脇腹を突く。
「くすぐったいよ」
言われても、止めない。
「やめっ、アハハッ、ちょっ…穂っ」
永那ちゃんは、本当に、ムードがない…!
「…だめ?」
「ん?」
「声出すのって、変…?」
ギュゥッと強く抱きしめられる。
「変じゃない。好きだよ」
「でも…」
「本当に。穂の声、大好き。…でも、ほら、今日はタオルしてたでしょ?」
彼女の胸の中で頷く。
「だから、もっと声、出ないと思ったんだよ。ネカフェの時は、もう少し声が抑えられてたと思うんだけど…あれは、タオルが濡れてたからかな?それとも、今日は拘束具で拘束されてたから、穂があの時より興奮してたのかな?」
彼女の優しい声音が好き。落ち着く。
生まれた不安も、一瞬で掻き消してくれる。
「どっちも…かも…」
ハハッと彼女が笑う。
見上げると、彼女も私を見てくれる。
緩やかにカーブを描いた瞳が、私を見つめる。
「可愛い。大好きだよ、穂」
「私も、永那ちゃん大好き」
「ありがとう」
「ん?」
「今日。本当に、楽しかった」
「どういたしまして」
「また、泊まりに来てね」
「うん」
「嬉しい…」
彼女に抱きしめられたまま、眠った。
途中、永那ちゃんがゴソゴソと動いていたけれど、何をしているのかはよくわからなかった。
もう1枚、布団を…掛けていたのかな…?
眠くて、すぐに意識は手放された。
アラームで目を覚ます。
一体私は何時に寝たのか、全くわからないけれど、なんだかスッキリ目覚められた。
永那ちゃんにキスをしても、彼女はむにゃむにゃと口を動かすだけで、目覚める気配はない。
起き上がり、朝のルーティーンを終えて、朝ご飯を作る。
永那ちゃんのキーチェーンから鍵を取って、包丁を取り出す。
簡単なものだけれど、永那ちゃんとお母さんに、朝食と昼食を。
作り終える頃に、お母さんと永那ちゃんがほぼ同時に起きてきた。
2人揃って「良い匂い」と言うから、笑ってしまう。
3人で朝ご飯を食べて、私は家を出た。
永那ちゃんとお母さんに、アパートの渡り廊下から盛大に見送られて。
急いで家に帰り、サッとシャワーを浴びて、服を着替える。
洗濯物を洗濯機に入れて、今日のスケジュールを確認しながら支度をした。
生徒会の新入生歓迎会、場所はいつもの公園で、バーベキュー。
食材は2年生が準備してくれるので、私がやることは進行役だけ。
なんだか去年が懐かしい。
“あなたはお肉担当でお願いします。あなたは野菜で。あなたは飲み物を。あなたは麺類とお菓子を。ご飯は私がおにぎりを持っていきます。予算は事前に言った通り。超えないように気をつけてください。レシートは必ず取っておいてください。くれぐれも、なくさないように。バーベキュー会場の予約は既にしたので、問題ありません。他に懸念事項はありますか?”
…そんなようなことを、同級生に指示していたと思う。
みんなビクビクしながらも従ってくれた。
当時は特に何も思っていなかったけれど、今思えば、一方的で威圧的だ。
今年のリーダーは日住君だから、私の時みたいにはならないんだろうな。
和気あいあいと、きっとみんな楽しく準備をするんだろう。
…でも!それはそれとして…バーベキューというのは、食あたりが起きる可能性があるので、しっかりそこは見張っておかなければ。
もし誰かが嘔吐したり腹痛を訴えたりしたら、すぐに対応出来るように、準備をしておく。
楽しむためには、きちんとそれなりの準備もして行かないと。
11時、1年生も含めて全員が集合した。
「まず、2年生の皆さん。準備、朝からお疲れ様でした。ありがとうございます。あまり焼くことに集中し過ぎて、自分の食べる分がなくならないように気をつけてくださいね。ちなみに、去年、私は色々と食べ損ねました…。バーベキューが終わった後に、お腹がすいてコッソリご飯を食べたのは、ここだけの秘密です」
笑いかけると、後輩達が顔を見合わせ、楽しそうに笑ってくれる。
その後、拍手に包まれた。
「新入生の皆さん、生徒会に入っていただき、ありがとうございます。今日は皆さんと交流を深めるための歓迎会を開かせていただきました。思う存分、楽しんでください」
パチパチと拍手される。
乾杯の挨拶を終えると、2年生が張り切って肉や野菜を焼き始める。
事前に火は焚いておいてくれていた。
日住君が積極的に、緊張した面持ちの1年生に声をかけている。
「空井先輩」
声をかけられ、横を見た。
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