いたずらはため息と共に

常森 楽

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6.さんにん

390.ふたり

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すいのプレゼントと同じブランドなのは気になるけど…でも、まあ…穂がいてくれたから、永那は選んでくれたんだろうな…。
それが簡単に想像できて、ちょっと笑える。
朝一番にプレゼントを渡してくれたのも、嬉しかった。
いつもは誕生日当日じゃなくて、デートの日に渡されていたから。
無事、遊園地にも誘えたし…今年の誕生日は大満足だなあ。
お昼の、穂のお弁当も美味しかった。
唐揚げがたくさん入ってて、あたしが好きって言ったのを覚えていてくれたことに、愛を感じる。

遊園地のチケットが2枚だったから、最初は穂と一緒に行こうかと思った。
でも絶対永那が妬くから、優里ゆりたかと行く候補も、一応あがった。
もちろん、永那と2人も考えたけど、すぐに却下した。
穂が悲しむのは、嫌だから。
考えている間に、永那のお母さんのことを知って、修学旅行があって、永那と穂が2人暮らしを始めて…。
2人の邪魔はしたくないし、もう面倒になって、チケットを2枚とも誉にあげようかと思った。
けど、せっかく文化祭頑張って、貰えたんだし…とも思えて、躊躇った。
で、結局…あたしの分のチケットをあたしが買って、2枚を2人に渡せば、3人で行けることを閃いた。

『永那と3人で遊園地行こ?』
ベッドに寝転んで、穂にメッセージを送る。
『楽しそうだね。いつ?』
『まだ決まってないけど、チケットの期限が3月までだから、それまでに』
『わかった。じゃあ、また明日みんなで決めよう』
『学校で?』
『うん』
『優里もさくらもいる前で?』
『そっか!じゃあ、永那ちゃんと千陽が2人で決めていいよ。私は、基本的にいつでも大丈夫だから』
『了解。穂、好き』
『私も、千陽好きだよ』
…落ち着く。

1週間後、優里の誕生日があった。
誉が「誕生日パーティーしようよ!」と言うから、穂の家でパーティーをする。
当日、優里は部活があったから、誕生日の翌日。
授業が終わって、桜も含めて5人で穂の家に向かった。
「誕生日パーティーなんて小学生ぶりー!めっちゃ嬉しい!わーいわーい!」
優里がくるくる回りながら歩く。
「優里、危ないぞー」
永那が優里の腕を引っ張る。
車が横切って、えへへと優里が笑う。
あたしは穂の腕に抱きついて、胸を押し付ける。
穂が唇を尖らせながらも、嬉しそうに口元を緩めるのを確認。
「ぶへっ」と桜が電柱にぶつかるから、せっかくの穂との触れ合いは即終了。
あたしは小さく舌打ちした。
森山もりやまさん、大丈夫!?」
「だ、だいじょうぶれす…」
穂が桜を介抱するから、あたしは永那の横に並んで歩いた。

「永那、時間…大丈夫なの?」
「ん?…あー」
永那が深く息を吸って、フゥッと短く吐いた。
「大丈夫!たぶん!」
「ふーん」
「む、無理しないでよ!?私は永那がいなくても楽しいから!!!」
「おい、それはさすがに傷つくよ?」
「あ!いや!あ!!そういう意味じゃなくて!」
優里の変な気遣い。
面白くて、つい、ぷっと笑う。
「お前も笑うな」
コツンと頭を叩かれた。
永那を睨むと、彼女は呆れたように笑う。
…好き。
「永那ちゃん、本当に大丈夫?」
穂が後ろから言う。
チラチラ桜を見て気遣っているのがわかる。
「うん!…ちゃんと、今日は帰るの遅くなるって、言ってあるから」
永那がまっすぐ穂を見ると、穂も永那を見る。
2人が頷く。
あたしは小さく息を吐いて、ただ“あたしも誰かの特別になりたい”と願った。

家につくと、部屋が飾り付けられていた。
穂の誕生日のときほどではないけど、誉が頑張ったのがよくわかる。
「わ~!誉~!ありがと~!!」
優里が誉に抱きついて、誉が嬉しそうに笑う。
あたし達はラグに座って、2人を眺めた。
「そういえば、一昨日、誉の中学の制服が出来たんだよ」
穂が2人を見ながら微笑む。
「えー!見たい見たい!」
「えー…しょうがないなあ…」
誉は頭をポリポリ掻きながら部屋に入っていく。
「中1か」
永那がローテーブルに頬杖をついた。
「私達はもうすぐ高3だー!」
優里が項垂れる。
「受験嫌だ…ああ…嫌だ…。もう既に勉強地獄だっていうのに…!」
「あたしもそろそろ予備校決めないと」
「千陽~同じとこ来てよ~」
「…考えとく」
「やったー!!」
考えとくだけなのに…。

「でも千陽?お前、夜遅いの、大丈夫なの?」
変わらず、ずっと心配し続けてくれるのが、嬉しい。
「桜も一緒なら平気でしょ」
「え!?私で!?すか…」
“すか”が聞こえないくらい小さい。
全然敬語じゃなくなる気配がないことに、ちょっとイラつく。
「一緒は嫌?」
見つめると、桜の目が大きく開かれて、頬がピンク色に染まる。
「嫌じゃ、ないで…す…」
「森山さん、こいつのわがままに無理に付き合う必要はないんだよ?」
永那が優しい口調で言う。
…ひどい。
あたしがすごくわがままみたいに言って。
永那を睨むけど、目が合わない。
「全然!全然、無理してないです!…私、佐藤さとうさんがいろいろなことに誘ってくれて、本当に、嬉しいんです」
さっきのイラつきは撤回。
心の中で永那にベーッと舌を出す。
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