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8.閑話
30.永那 中2 春《相澤芽衣編》
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「でも、楽しいって思うようになったのは、芽衣とするようになってからだよ」
微笑んで、私の髪を撫でる。
「ありがとう、芽衣」
じゃあ、恋人になってよ…。
私達の学年は1つ上がって、永那は中2、私は中3になった。
多目的室でギターを弾いていると、ドアが開く。
パッと顔を上げると、永那の隣に佐藤千陽が立っていた。
気持ちがスーッと引いていく。
「芽衣…先輩。前に話した、千陽」
佐藤千陽はペコリと頭を下げた。
佐藤千陽の手前“先輩”って呼んだのに、話し方がタメ口なのは、永那の詰めの甘いところ。
そういうところが、可愛いんだけど。
「同じクラスになったんだ」
奥歯を強く噛む。
それでも、笑顔を作って「そうなんだ」と必死に言った。
「まだみんなに避けられてるから…連れてきちゃった」
へへへと永那が笑う。
「よろしく。えっと…千陽ちゃんで、いいかな?」
「…はい」
“よろしくお願いします”くらい言えないの?
「芽衣、歌ってよ」
「も~、“永那にだけ”って言ったの、忘れたの?」
唇を少し尖らせて、永那をジッと見る。
「あ、そっか…。ごめん、千陽、ダメだって」
「べつに、いい」
佐藤千陽は部屋の隅に座って、スマホを見始める。
愛想のない子…。
顔が良いだけでモテてきたって感じかな。
私と距離のあるところに座ったから、永那はどっちの近くに座ろうかと悩むようにキョロキョロした。
「永那、おいで」
永那は佐藤千陽を見てから、私のそばに座る。
永那の髪をそっと撫でた。
「芽衣、じゃあさ、なんか弾いてよ」
「永那が歌ってくれるならいいよ?」
「おっけー」
永那に教えた1曲を弾く。
佐藤千陽がスマホからこちらに視線を動かす。
私じゃなく、永那に。
…やっぱりこの子、永那のこと好きだよね。
知ってはいたけど、一応、確認。
弾き終えて、つい、いつもみたいにキスしようとしてしまった。
永那の膝に置いた手を、すぐにどけるのも変かと思って、そのまま彼女の足を擦る。
「これから、千陽ちゃんも毎日来るの?」
「んー…どうかな?千陽がクラスに慣れたら、来ないんじゃない?」
…慣れたら、ね。
佐藤千陽は膝を抱えて、私達の会話に参加してこようとはしない。
こんな調子で、いつ慣れるって言うの?
下手したら、一生クラスに馴染めないんじゃない?
フゥッと息を吐く。
「私…受験勉強で忙しくなると思うし、昼休みも、毎日ここには来られないかも」
「え!?そうなの!?」
「うん」
「まあ…そう、だよね…。受験か…」
私は永那の耳元に口を近づける。
「だから、毎回連れてきてたら、一生エッチできないね?」
永那の顔が真っ赤に染まる。
「じゃ、じゃあ…芽衣が来るとき、メッセージ送ってよ。そのときは、1人で来るからさ」
「わかった」
それから私はしばらく多目的室には行かなかった。
部活の日、私は先輩とバンドを組んでいたから、先輩が卒業しちゃって暇で、1人でギターを弾いていた。
「め、芽衣…」
風美が私のそばに座る。
彼女の胸が肩に押し付けられて、唇が私の耳に近づく。
…佐藤千陽もけっこう胸大きかったなぁ。
「どうしたの?」
「あの、ね…この前、永那とキスしちゃったの…」
「へぇ…付き合ってるの?」
無難な質問ができてるはず。
キスしたのはもちろん知ってるけど、知らないフリ。
「ち、違うの。私、永那のこと好きで…告白して振られたんだけど、“キスしていい?”って聞かれて、それで…」
「振られたのにキスって…」
「そ、そうだよね…わかってるんだけど…。あの、それでね」
話に続きがあるの…?
「き、昨日…胸、さわられて…」
「は!?」
鼓動が一気に速くなる。
「シーッ!」
「あ、ごめん…。え、どういうこと?セックス、したの…?」
「し、してないよ!!…ただ、“さわってみたい”って言われて」
「それで…さわらせたの?」
風美が頷く。
「まあ…ほら、私、こんなだから…友達にもよく“さわらせて”って言われるし…いいかなって…」
“いいかな”って、なに…。
「えっと…それで、風美は何が言いたいの?」
「あ、うん…。振られたのにさ、私…なんか、本当に振られたのかな?って、だんだんわからなくなってきちゃって。…もう一回、告白してもいいのかな?…芽衣、永那とよく話してたじゃん?どう、思う?」
「あー…」
永那は、基本的にバカだからなぁ…。
「どう、だろう?振られたのは、いつなの?」
「春休み前…」
「それで、なんで昨日さわられる事になったわけ?」
「校庭の隅にね、永那が寝転んでて…」
なぜ…。
「私、体育終わりだったから、話しかけたの」
「じゃあ、永那は授業サボってたってこと?」
「みたい」
風美は眉を下げて笑う。
「なんか、永那、すごく…落ち込んでるみたいだった…」
「そう、なの…?」
何も知らない。
佐藤千陽が嫌で、1ヶ月以上避けていたから…。
メッセージがくるわけでもないし、私から送ることもなかった。
「ちょっと、泣いてたのかな…?すごく、辛そうで…“悩みがあるなら、話聞くよ”って言ったら、胸を、さわってみたいって…」
微笑んで、私の髪を撫でる。
「ありがとう、芽衣」
じゃあ、恋人になってよ…。
私達の学年は1つ上がって、永那は中2、私は中3になった。
多目的室でギターを弾いていると、ドアが開く。
パッと顔を上げると、永那の隣に佐藤千陽が立っていた。
気持ちがスーッと引いていく。
「芽衣…先輩。前に話した、千陽」
佐藤千陽はペコリと頭を下げた。
佐藤千陽の手前“先輩”って呼んだのに、話し方がタメ口なのは、永那の詰めの甘いところ。
そういうところが、可愛いんだけど。
「同じクラスになったんだ」
奥歯を強く噛む。
それでも、笑顔を作って「そうなんだ」と必死に言った。
「まだみんなに避けられてるから…連れてきちゃった」
へへへと永那が笑う。
「よろしく。えっと…千陽ちゃんで、いいかな?」
「…はい」
“よろしくお願いします”くらい言えないの?
「芽衣、歌ってよ」
「も~、“永那にだけ”って言ったの、忘れたの?」
唇を少し尖らせて、永那をジッと見る。
「あ、そっか…。ごめん、千陽、ダメだって」
「べつに、いい」
佐藤千陽は部屋の隅に座って、スマホを見始める。
愛想のない子…。
顔が良いだけでモテてきたって感じかな。
私と距離のあるところに座ったから、永那はどっちの近くに座ろうかと悩むようにキョロキョロした。
「永那、おいで」
永那は佐藤千陽を見てから、私のそばに座る。
永那の髪をそっと撫でた。
「芽衣、じゃあさ、なんか弾いてよ」
「永那が歌ってくれるならいいよ?」
「おっけー」
永那に教えた1曲を弾く。
佐藤千陽がスマホからこちらに視線を動かす。
私じゃなく、永那に。
…やっぱりこの子、永那のこと好きだよね。
知ってはいたけど、一応、確認。
弾き終えて、つい、いつもみたいにキスしようとしてしまった。
永那の膝に置いた手を、すぐにどけるのも変かと思って、そのまま彼女の足を擦る。
「これから、千陽ちゃんも毎日来るの?」
「んー…どうかな?千陽がクラスに慣れたら、来ないんじゃない?」
…慣れたら、ね。
佐藤千陽は膝を抱えて、私達の会話に参加してこようとはしない。
こんな調子で、いつ慣れるって言うの?
下手したら、一生クラスに馴染めないんじゃない?
フゥッと息を吐く。
「私…受験勉強で忙しくなると思うし、昼休みも、毎日ここには来られないかも」
「え!?そうなの!?」
「うん」
「まあ…そう、だよね…。受験か…」
私は永那の耳元に口を近づける。
「だから、毎回連れてきてたら、一生エッチできないね?」
永那の顔が真っ赤に染まる。
「じゃ、じゃあ…芽衣が来るとき、メッセージ送ってよ。そのときは、1人で来るからさ」
「わかった」
それから私はしばらく多目的室には行かなかった。
部活の日、私は先輩とバンドを組んでいたから、先輩が卒業しちゃって暇で、1人でギターを弾いていた。
「め、芽衣…」
風美が私のそばに座る。
彼女の胸が肩に押し付けられて、唇が私の耳に近づく。
…佐藤千陽もけっこう胸大きかったなぁ。
「どうしたの?」
「あの、ね…この前、永那とキスしちゃったの…」
「へぇ…付き合ってるの?」
無難な質問ができてるはず。
キスしたのはもちろん知ってるけど、知らないフリ。
「ち、違うの。私、永那のこと好きで…告白して振られたんだけど、“キスしていい?”って聞かれて、それで…」
「振られたのにキスって…」
「そ、そうだよね…わかってるんだけど…。あの、それでね」
話に続きがあるの…?
「き、昨日…胸、さわられて…」
「は!?」
鼓動が一気に速くなる。
「シーッ!」
「あ、ごめん…。え、どういうこと?セックス、したの…?」
「し、してないよ!!…ただ、“さわってみたい”って言われて」
「それで…さわらせたの?」
風美が頷く。
「まあ…ほら、私、こんなだから…友達にもよく“さわらせて”って言われるし…いいかなって…」
“いいかな”って、なに…。
「えっと…それで、風美は何が言いたいの?」
「あ、うん…。振られたのにさ、私…なんか、本当に振られたのかな?って、だんだんわからなくなってきちゃって。…もう一回、告白してもいいのかな?…芽衣、永那とよく話してたじゃん?どう、思う?」
「あー…」
永那は、基本的にバカだからなぁ…。
「どう、だろう?振られたのは、いつなの?」
「春休み前…」
「それで、なんで昨日さわられる事になったわけ?」
「校庭の隅にね、永那が寝転んでて…」
なぜ…。
「私、体育終わりだったから、話しかけたの」
「じゃあ、永那は授業サボってたってこと?」
「みたい」
風美は眉を下げて笑う。
「なんか、永那、すごく…落ち込んでるみたいだった…」
「そう、なの…?」
何も知らない。
佐藤千陽が嫌で、1ヶ月以上避けていたから…。
メッセージがくるわけでもないし、私から送ることもなかった。
「ちょっと、泣いてたのかな…?すごく、辛そうで…“悩みがあるなら、話聞くよ”って言ったら、胸を、さわってみたいって…」
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