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5.時間
292.好きのその先
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彼女がいつ寝たのか、私は知らない。
布団はかけられていたから寒くはなかったけれど、パンツは穿かされていなかった。
なんとか、ショーツは穿かせてくれたらしい。
見慣れない天井をジッと眺めてから、横でスゥスゥ眠る彼女を見た。
アラームを消して、彼女にキスする。
「永那ちゃん、起きて」
「ん…」
「永那ちゃん」
彼女が起きないから、私は立ち上がって、制服のスカートを穿く。
腰とお尻の辺りが少し…痛い…。
冷凍ご飯を2つ電子レンジに入れた。
昨日作ったお味噌汁を火にかけてあたためる。
卵焼きと納豆と箸を座卓に置く。
洗面台に行って、顔を洗って、櫛で髪を梳かす。
昨日のうちにお弁当は作っておいたから、冷蔵庫から出す。
ちなみに卵焼きはお弁当に入り切らなかった残り。
あたたまったご飯とお弁当を入れ替えて、電子レンジで少しあたためる。
お味噌汁の火を止めて、ご飯を箸で解した後、永那ちゃんのところに戻る。
「永那ちゃん、起きて。朝ご飯できたよ」
永那ちゃんの朝食はいつも、食パンを生でかじっておしまいだと言っていた。
私の朝ご飯は、パンにジャムを塗ってフルーツと食べるか、ご飯と味噌汁を食べるかのどちらか。
永那ちゃんがご飯を食べたがったので、今朝はご飯。
「永那ちゃん」
「んー…穂…」
手を伸ばされて、抱きしめられる。
「ご飯できたよ」
「へへへ、なんか、新婚みたい」
「…そうだね」
私は彼女から離れて、今日の授業の準備をする。
昨日できなかったから少し不安だ。
いつも、家に帰ってすぐに次の日の授業の準備をして、朝にも確認しているから。
彼女がのそのそ起き上がる。
「わー、すごい!」
テーブルを見てから、彼女は洗面台に行く。
私は鞄を玄関に置いて、味噌汁をよそった。
永那ちゃんが顔を洗い終えて、コンタクトをつけて、座る。
私も彼女の横に座って、2人で「いただきます」とご飯を食べた。
「幸せだー」
「永那ちゃん、のんびりしてたら遅れるよ?」
永那ちゃんがテーブルに頬をつける。
私達が遅れたら、千陽も遅れてしまう。
永那ちゃんと千陽は、いつも朝一番に学校についていたけれど、それは永那ちゃんが一晩中起きていて、眠ってしまわないようにするための対策だった。
でも今日からは夜に眠れるから、待ち合わせの時間を少し遅くしている。
待ち合わせ、というか…迎えに行く時間を、というのが正しいか。
「ずっとこんな毎日がいい!」
「そうだね」
歯磨きをして、制服を着て、お弁当を鞄に入れる。
「穂のお弁当…楽しみ…」
「そんなに大したものじゃないよ」
「大したものだよー!私は楽しみなの!」
「そっか」
チュッとキスをして、家を出る。
…さっきは、忙しくてよく考えられなかったけど、本当“新婚みたい”。
永那ちゃんがドアの鍵を閉めて、手を繋ぐ。
千陽の家に行くと、お母さんが出た。
「誰?」と、顔立ちの整ったお母さんに首を傾げられる。
「空井穂です。千陽さんの、クラスメイトで」
「永那と同じくらい大事な人なの」
千陽がサラリと言う。
「へえ?」
お母さんは興味なさげに頷いて「行ってらっしゃ~い」とスマホを見ながら言った。
…なんだか、ちぐはぐだ。
お見送りはきちんとしてくれるのに、それはまるで作業みたいで。
千陽に腕を組まれる。
「おはよ、穂」
「おはよう」
「ねえ、千陽。私のこと、穂と“同じくらい大事”なんだ?」
永那ちゃんがからかう。
「永那、ホントうるさい」
「千陽のツンデレ。前まであんなデレデレだったのに。最近、全然さわってこないし」
「金曜、腕組んであげたけど。…そんなにあたしにさわってほしいの?」
フッと千陽が笑う。
「べつに?穂に乗り換えてんのが気に食わないの!穂にベタベタさわんな!」
2人が喧嘩をしていたのが懐かしい。
…あのときの喧嘩は、本当に2人とも険悪な雰囲気で、どうすればいいかわからなかったけど。
今日は、じゃれ合ってるように見えて、微笑ましい。
「は?穂もあたしのこと好きなんだし、あんたに指図される覚えないんだけど?」
「あー?穂は私の彼女だっつーの」
「だから何?穂…あたしのおっぱい大好きなんだから、さわらせてあげないと可哀想でしょ?」
そう言って、彼女は私の腕に胸を押し付けた。
永那ちゃんが顔を引きつらせながら千陽を見る。
「ねえ、永那。穂が呼び捨てで名前呼んでるの、あたしだけなの。やばくない?めっちゃ特別扱いされてんだけど」
「お前…!」
…やっぱり…朝から、なんだか、騒がしいな。
「穂!なんとか言ってよ」
永那ちゃんが不貞腐れながら私を見る。
「え?私?」
千陽は楽しそうにプッと吹き出して笑った。
「穂~、しっかりしてよ~」
永那ちゃんが項垂れる。
「てか、千陽のおっぱいそんな好きなの?」
「え…そ、そんな、私は…べつに…」
「たーっ…もー…マジかよー」
永那ちゃんが手で目を覆う。
…“好き”なんて言ってないのに…なんでバレちゃうのかな。
私、もう少し隠すの上手になりたい。
「はい、永那残念でしたー」
千陽がすごく楽しそうに笑ってる。
それがなんだか嬉しくて、口元が綻ぶ。
布団はかけられていたから寒くはなかったけれど、パンツは穿かされていなかった。
なんとか、ショーツは穿かせてくれたらしい。
見慣れない天井をジッと眺めてから、横でスゥスゥ眠る彼女を見た。
アラームを消して、彼女にキスする。
「永那ちゃん、起きて」
「ん…」
「永那ちゃん」
彼女が起きないから、私は立ち上がって、制服のスカートを穿く。
腰とお尻の辺りが少し…痛い…。
冷凍ご飯を2つ電子レンジに入れた。
昨日作ったお味噌汁を火にかけてあたためる。
卵焼きと納豆と箸を座卓に置く。
洗面台に行って、顔を洗って、櫛で髪を梳かす。
昨日のうちにお弁当は作っておいたから、冷蔵庫から出す。
ちなみに卵焼きはお弁当に入り切らなかった残り。
あたたまったご飯とお弁当を入れ替えて、電子レンジで少しあたためる。
お味噌汁の火を止めて、ご飯を箸で解した後、永那ちゃんのところに戻る。
「永那ちゃん、起きて。朝ご飯できたよ」
永那ちゃんの朝食はいつも、食パンを生でかじっておしまいだと言っていた。
私の朝ご飯は、パンにジャムを塗ってフルーツと食べるか、ご飯と味噌汁を食べるかのどちらか。
永那ちゃんがご飯を食べたがったので、今朝はご飯。
「永那ちゃん」
「んー…穂…」
手を伸ばされて、抱きしめられる。
「ご飯できたよ」
「へへへ、なんか、新婚みたい」
「…そうだね」
私は彼女から離れて、今日の授業の準備をする。
昨日できなかったから少し不安だ。
いつも、家に帰ってすぐに次の日の授業の準備をして、朝にも確認しているから。
彼女がのそのそ起き上がる。
「わー、すごい!」
テーブルを見てから、彼女は洗面台に行く。
私は鞄を玄関に置いて、味噌汁をよそった。
永那ちゃんが顔を洗い終えて、コンタクトをつけて、座る。
私も彼女の横に座って、2人で「いただきます」とご飯を食べた。
「幸せだー」
「永那ちゃん、のんびりしてたら遅れるよ?」
永那ちゃんがテーブルに頬をつける。
私達が遅れたら、千陽も遅れてしまう。
永那ちゃんと千陽は、いつも朝一番に学校についていたけれど、それは永那ちゃんが一晩中起きていて、眠ってしまわないようにするための対策だった。
でも今日からは夜に眠れるから、待ち合わせの時間を少し遅くしている。
待ち合わせ、というか…迎えに行く時間を、というのが正しいか。
「ずっとこんな毎日がいい!」
「そうだね」
歯磨きをして、制服を着て、お弁当を鞄に入れる。
「穂のお弁当…楽しみ…」
「そんなに大したものじゃないよ」
「大したものだよー!私は楽しみなの!」
「そっか」
チュッとキスをして、家を出る。
…さっきは、忙しくてよく考えられなかったけど、本当“新婚みたい”。
永那ちゃんがドアの鍵を閉めて、手を繋ぐ。
千陽の家に行くと、お母さんが出た。
「誰?」と、顔立ちの整ったお母さんに首を傾げられる。
「空井穂です。千陽さんの、クラスメイトで」
「永那と同じくらい大事な人なの」
千陽がサラリと言う。
「へえ?」
お母さんは興味なさげに頷いて「行ってらっしゃ~い」とスマホを見ながら言った。
…なんだか、ちぐはぐだ。
お見送りはきちんとしてくれるのに、それはまるで作業みたいで。
千陽に腕を組まれる。
「おはよ、穂」
「おはよう」
「ねえ、千陽。私のこと、穂と“同じくらい大事”なんだ?」
永那ちゃんがからかう。
「永那、ホントうるさい」
「千陽のツンデレ。前まであんなデレデレだったのに。最近、全然さわってこないし」
「金曜、腕組んであげたけど。…そんなにあたしにさわってほしいの?」
フッと千陽が笑う。
「べつに?穂に乗り換えてんのが気に食わないの!穂にベタベタさわんな!」
2人が喧嘩をしていたのが懐かしい。
…あのときの喧嘩は、本当に2人とも険悪な雰囲気で、どうすればいいかわからなかったけど。
今日は、じゃれ合ってるように見えて、微笑ましい。
「は?穂もあたしのこと好きなんだし、あんたに指図される覚えないんだけど?」
「あー?穂は私の彼女だっつーの」
「だから何?穂…あたしのおっぱい大好きなんだから、さわらせてあげないと可哀想でしょ?」
そう言って、彼女は私の腕に胸を押し付けた。
永那ちゃんが顔を引きつらせながら千陽を見る。
「ねえ、永那。穂が呼び捨てで名前呼んでるの、あたしだけなの。やばくない?めっちゃ特別扱いされてんだけど」
「お前…!」
…やっぱり…朝から、なんだか、騒がしいな。
「穂!なんとか言ってよ」
永那ちゃんが不貞腐れながら私を見る。
「え?私?」
千陽は楽しそうにプッと吹き出して笑った。
「穂~、しっかりしてよ~」
永那ちゃんが項垂れる。
「てか、千陽のおっぱいそんな好きなの?」
「え…そ、そんな、私は…べつに…」
「たーっ…もー…マジかよー」
永那ちゃんが手で目を覆う。
…“好き”なんて言ってないのに…なんでバレちゃうのかな。
私、もう少し隠すの上手になりたい。
「はい、永那残念でしたー」
千陽がすごく楽しそうに笑ってる。
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